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『テイルズオブシンフォニア』のロイド受けで小説を書いていきたいと思います。 今、はまっているのは、ルクロイとゼロロイです。 コメントなど頂けると、励みになります!!
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飛翔
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女性
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こんにちは。
かなり遅れて『シンフォニア』を知り、ロイド君が大好きになった飛翔と申します。
同士の方は、是非よろしくお願いします!
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希望の光

「俺……お前みたいな友達がほしかった。」
それは、つい口に出してしまった本音。

言っちまった!
…って、焦ったおれの耳に届いたのは、予想もしなかった言葉。

「欲しかったって、もう友達だろ?」

その言葉が、俺にとってどれだけ嬉しかったかなんて…きっとお前は知らないんだろうな。

 


ロイドとクレスと(おまけのミュウも)一緒に歩きながら、色々な話をした。
2人ともそれぞれに仲間が居て、旅をしているらしい。
歩きながらも、気になるものを見つけると、すぐに駆け出すロイドは、見ていて何だか面白い。
ただ、何処か危なっかしい感じもするから、内心冷や冷やしながら、ロイドが単独で駆け出す度に、俺とクレスは後に続く。

リーダーっぽくて、上手くまとめてくれるのは、クレスだが、ロイドも何処かリーダーっぽい一面があるように思える。

無鉄砲ではあるけれど、恐れず、しっかりと前を見据えている瞳は、ひどく輝きに満ちていて…綺麗だ。
顔立ちは17歳にしては幼い方だと思う。
でも、ロイドが歳より幼く見えるのは、きっと顔立ちだけじゃないだろうな。
ふとした瞬間に浮かべる微笑みが、あまりにも無邪気で…裏表を感じさせないものだから、彼はとても純粋なのだと疑う気にもならない。

 

 

 


それぞれの世界へと別れる刻が近付いた時、俺の身体の中はざわついていた。
嘗て一度として感じた事も無い…焦り、のようなもの。

気が付くと俺は、必死にロイドに話しかけていた。
別れを惜しむ…なんて、簡単に表現できる気持ちじゃなくて…もっと、切羽詰まった…感情からの行動…。
ロイドは無邪気に笑いながら、俺の話に耳を傾けてくれた。
楽しい、幸せな時間…。

 

それでも、別れの刻は…必ずやってくるんだな…。


クレス達が一番に自分の世界へと還って行った。
そして…続いたのはロイドたち、だった。

何だかんだで、最後には全員が気が合う者同士で話し合っていたから、別れを惜しんでいた。

「へへ、楽しかったぜ。勉強になった。」
ロイドが残っている俺達に向かって笑いながら言う。
ロイドの仲間達が続けて、何か言っているが、俺の耳には入ってこなかった。
俺の目は、ロイドしか映していなくて…もう会えないのかと思うと、余計に目をそらせない。
ロイドの周りに光が立ち込める。
姿が光に覆われていくのを見て、心の何処かが悲鳴を上げる。

止めたい!
俺は…もっとロイドと一緒に居たいんだっ!
もっと色んな話をしたい!
もっと、もっともっとロイドと…っ!!!

「っ!」
消えかかっているロイドが口を動かしているのが見えた。
彼は真っ直ぐ俺を見て微笑んでいた。
彼の姿が消える前に、俺は何度も首を縦に振った。

…最後、光の中に消える瞬間、ロイドは悪戯っぽく笑っていた。

ロイドが最後に俺にくれた言葉を…俺は忘れずにいたい。
例え、もうロイドと会う事が不可能だとしても……それでも…。

 

『お前のいいところ、忘れるなよ?』


**********************
初のルクロイでした!
ファンダム2のルークとロイドの会話が好きです。

今後書く話は、恐らくパラレルのものが多いと思います。
**********************

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輝き続ける光

「ゼロスーー!」

振り向くと、力いっぱい手を振り続けるロイド。
仕方なく苦笑しながらも、こちらもロイドに手を振る。
すると、ロイドのでかい目がキラキラ光る。
ランドセルを背負った、まだまだ小さなロイドは真っ直ぐにこっちに向かって駆けて来る。

「よぉ、ロイド。初の小学校はどうだったよ?」
今日はロイドの入学式だった。
ロイドの養父は職人だから、忙しくて式には出られないと言っていた。
ロイドの事を考えると、可哀想ではあったが、ロイドはしっかりと養父が忙しい事を分かっていて、ふてくされはしても、決して文句は言わなかったらしい。
(ちなみに俺様、今日は学校サボり)
「ジーニアスとコレットと同じクラスになった!」
「へぇ~、良かったじゃんか。」
ジーニアスとコレットというのは、ロイドの幼稚園からの友達だ。
ポンポンとロイドの頭を軽く叩いてやると、ロイドがくすぐったそうに、けれど嬉しそうに笑う。
癖になりつつある、この行為は…毎回嬉しそうに微笑むロイドを見たいから繰り返している。

 

 


『・・・・・・・・・。』
初めてロイドに会ったのは、俺様が小学2年生くらいの時だったと思う。
実父ではない、養父に連れられて、この街にやって来たロイド。
俺様んちは領主やってるから、挨拶に来た時に会った。
親父とロイドの養父の話を聞いていれば、ロイドは少し前に引き取られたばかりだと言う。
どうりで養父に懐いていないと思った。
俯けている顔は、何処までも不安を表わしていた。

『お前、名前は?』
親父に目で命じられ、俺様はロイドを連れて庭に来て、一番に名を訊ねた。
正直、あんまり返事は期待してなかったが、意外にも返事は返ってきた。
しかも…。
『名前を訊ねる時は自分から名乗るもんだっ!』
今まで一度として向けられた事のない生意気な言葉で。
『…ぷっはぁっ!!!』
思わず噴き出した俺様を見上げるでかい瞳には、もう不安の色はなかった。
『そりゃ~、悪かった。俺様はゼロス。』
腹を抱えながら、空いている方の手でロイドの頭をポンポン叩くと、ロイドは暫く固まった後、嬉しそうに笑った。

それから、ロイドは毎日のように俺様の所に遊びに来た。
媚びを売りにやってくる奴らしか知らなかった俺様にとったら、ロイドの存在は特別だった。
どんなに生意気でも、そこには企みも裏も何もなかったのだから。

 

 

「いただきますっ!」
元気良く、そう言うと、ロイドは使用人が出した料理に喰いついた。
今日もロイドは俺んちで昼食を食べる。
朝、出かける前に養父の分の昼食は作って来たらしい。
ガキのくせに、ロイドは養父と二人暮らしのせいか、家事を難なくこなしている。

「相変わらず、良く食べるねぇ~。」
「上手い飯だからな!」
これだけ美味そうに平らげられたら、料理人も満足だろう。


入学式での出来事を話すロイドは、本当に楽しそうだ。
元々、人見知りをするタイプではないから、それ程心配はしていなかったが。

ロイドの世界は広がっていく。
その内、ロイドの世界から、俺は消えてしまうのではないか?
けれど、それも仕方がない事だと思う。
ロイドは俺とは違う。
あいつの魂は光の中にある。
そして俺のは闇の中…。

「ゼロス?」
ハッとして、顔を上げると、そこには心配そうな顔をしたロイド。
「あ、あぁ、わりぃ。ちょっと考え事してたわ。」
笑って誤魔化す俺に、ロイドは小首を傾げただけで、追及はしない。
「御馳走様っ!ゼロスっ、庭行こう!学校から朝顔の種もらったんだ!!」
「はぁっ?あ、おい…。」
「こんなに小さい種から、綺麗な花が咲くんだぜ?咲いたら、一番にゼロスに見せてやるからなっ!」
「っ…。…そいつぁ、楽しみだ。」

深い深い闇の中…。
もがくのも止めて、しゃがみ込んだ俺の前に、やがて眩しい位の光が現れる。
『ゼロスっ!』
うっとおしい位、光りやがって…俺様をひっぱりあげるんだ。
文句を言ってやろうと顔を合わすけど、能天気なほどの笑顔を向けられて…怒る前に泣きそうになっちまう。


ロイド…お前は俺の光だ。
不安を抱える時間も、文句を言う暇も与えてくれない位、やっかいな…な。


**********************
初のゼロロイです。
しかもパラレル…(^^;)

書きたい事がまとまらなかったのですが、シリーズ的に続けていきたいと思っている設定です。
**********************

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大きな手

*『輝き続ける光』の続きです。




今年も、朝顔がゼロスんちの庭で元気に咲いてる。
俺が水やりに来れない時は、「俺様は、面倒な事は一切しないからな~。」と始めは言っていたゼロスが、しっかり水をあげてくれている事を俺は知ってる。
だから、今年もこんなにコイツらは元気なんだ。
ゼロスにそう言うと、テレて誤魔化すから、本人の前ではあんまり言わないけど。


小学校に入学した時、俺は楽しみで仕方なかった。
だって、学校に行けばゼロスに会えるから。
今まで以上に一緒に遊べると思ったら、ワクワクして、入学式の前日なんてあんまり眠れなかったくらいだ。


でも…ゼロスはすぐに卒業しちまった。
まぁ、当然だよな。
ゼロスは俺より5つも年上なんだから。
ジーニアスやコレット、他にも友達がいたけど…なんか物足りない学校生活だった。
そんな俺も、今は高校生だ。
ゼロスが卒業した学校に比べたら、かなりレベルが低い学校だけど、俺を育ててくれた親父に恥をかかせない為にも、俺なりに努力して入れた学校だから悔いはない。
親父も喜んでくれたしな…。
本当は高校に行くつもりのなかった俺だが、リフィル先生(中学校三年の時の担任でジーニアスの姉さんなんだぜ?)に、いかに勉学が大事か教え説かれた。
ついでに親父の「俺の後を継ぐなら、高校くらい行っといたらどうだ?」って言葉もあって…。


親父は細工師だ。
大きな手で、器用に色んなものを創り出してくんだ。
俺は昔から、そんな親父を見ていた。
血のつながりはないけど、俺もそれなりに手先は器用みたいで、いつからか…時々だけど親父の隣でものを創るようになった。
親父みたいに上手くいかないし、飽きっぽい俺だけど、親父の仕事をする姿は好きなんだ。




『お前は…アーヴィングというのか?』
高校に入った時、いきなり話しかけてきた教師は…なんかすかした奴だった。
『そうだけど…。』
『…そうか。』
前髪がヤケに長いソイツは、それだけ訊くと、すぐに顔を横向けて職員室へと歩き去った。
男子剣道部に入った俺は、顧問がその教師だった事にびっくりした。
だって、ソイツ細いし(そりゃ、人の事は言えないけどさ…)、無口だったから。
けど、眼光の鋭さは人一倍で、強さも半端じゃなかった。
外見がいいから、女子からは凄い人気だったけど、部活だと真っ二つに分かれる評価。
『尊敬する先生』と『いけすかないセンコー』。
始めの頃の俺は後者だった。
でも、本格的な部活動をしていく内に、先生として認められるようになった。
的確なアドバイスを受ける度、どんどん上達してきた俺は大会でも優勝候補としてあげられ始めた。


初めて優勝した大会には、ゼロスも観に来てくれていた。
『良かったじゃねぇか。』って、笑いながら、俺の肩をポンポンしてくれた。


昔は頭だった、その行為を、数日前に拒否したのは俺だった…。
だって恥ずかしかったんだ。
『わりぃわりぃ~。』
そう言って、ゼロスはすぐに手を頭から離して肩にポンポンした。
口元は笑っているのに、俺にはゼロスが本当に笑っているようには見えなくて…傷つけてしまった事にすぐ気付いた。
でも、ゼロスはすぐに俺から離れて、行ってしまった。
それから…ゼロスは何処かぎこちなく接してくる。


そして・・・・・・・・現在に至る訳で。
俺は現在、大学に行っているゼロスの帰宅を待っている。
今日こそ、はっきりさせてやるんだと意気込んで!





「ロイド…?」
「!っゼロス!!」
突然、後ろから声が掛けられて、慌てて振り向くと、思ったとおりゼロスが居た。
が、ゼロスの隣には女の人が2人居た。
「あら、朝顔。貧乏くさい花ですわね。」
「本当に。くすくすっ。それにしても、ゼロス様?こちらの子供は?」
ゼロスに話しかけながら、くっついている女の人たち。
良く解らない感情が湧きあがる。
抑えられなくて…気が付いたら、俺は泣いてた…みたいだ。
ゼロスの目が見開かれる。
女の人のうるさい声が途切れたと思った瞬間、俺はゼロスに抱きしめられていた。
ゼロスの肩越しに、涙でぼやけている俺の視界に入ったのは、立ちすくむ女の人たち。
「っ・・・・・・・・・ぅっ・・・・・。」
涙が止まらない。
突然ゼロスが抱きしめてきて、驚いてるというのに。
「わりぃな。コイツ、俺様のトクベツな訳よ。」
顔だけ後ろに向けて、ゼロスは女の人たちに一言。
「っうわぁっ!」
次の瞬間、ゼロスに担ぎあげられた。
落ちないように、無意識にゼロスの服を掴んだ。
「大人しくしてろよ?」
言い聞かすように、優しい声でゼロスが囁いたから、俺は素直に担ぎあげられたままゼロスんちのゼロスの部屋へと運ばれた。


漸くおろされれば、背に柔らかい感触。
俺のお気に入りの、ゼロスのソファの上だった。
俺の前にしゃがみこんで、視線を合わせてくるゼロスを真っ直ぐに見つめていると、ゼロスの手が伸びてきて…優しく俺の涙を拭ってくれた。
何も言わないゼロスは、ただ笑っていた。
そして、俺の肩をポンポンと叩く。
俺は思わず、その手を掴んだ。
「止めろよっ!俺はっ…俺は・・・・・・・・・・・!!!」
掴んだ手をどうすればいいのか分からなくて…でも放したくなくて掴んでいると、不意にゼロスの逆の手が伸びてきた。
今度は…頭にその手がのせられる。
「…こっちの方が、いいか?」
「っ!」
いつの間にか俯かせていた顔をあげると、少し嬉しそうな笑みを浮かべたゼロスの顔。
また涙が溢れてきて、俺は何度も頭を縦に振った。
「そっかそっか。ロイドはまだまだお子様だなぁ~。」
そう言ったゼロスは、いつの間にか逃げ出した手と合わせ、両手で俺の頭を撫で始めた。
昔のポンポンではなく、それこそ容赦なくぐしゃぐしゃと。
髪がぐしゃぐしゃになってもいいと、今は思えた。


ただ…またゼロスの大きな手で、頭に触れてもらえている事が嬉しくて堪らなかったんだ。


「朝顔、今年も綺麗に咲いたな。」
耳に届いてくるゼロスの穏やかな声が、くすぐったかった。


**********************
前回の続き的なパラレルなゼロロイでした。
今回はロイド君視線で書いてみました。
ゼロロイといいながらも、色々脱線した事も書いてしまいましたね(汗)
剣道部顧問は勿論(?)彼です。
親子も大好きです。

何だかロイド君が我がままな感じになってしまって…次、頑張ります!
**********************

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ロイド中毒

*『輝き続ける光』の設定です。




今年も…全ての色を飲み込むアレが降る。
寒く感じるのは、冬だからという理由だけなのか。
嫌いなのに見上げたまま動けなくなるのは、何かの呪いか…。

雪降る中、こうして俺が外にいるのには訳がある。
こうゆう日に限って、領主である親父が高熱を出し、その代わりに俺が隣町での会合に行ってきたのだ。
俺はもう大学生だし、いずれは親父の後を継ぐ事になる。
この街の事は気に入っているし、領主という仕事が嫌な訳じゃない。
ただ…そう、ただ―――

 

 

『私の自由を奪ったのは、あんたの存在なのよっ!!』
長い綺麗な髪を振り乱しながら、泣き叫ぶ母の姿。
母の目はひどく濁っていて、光がない。


政略結婚を強いられ、俺を生んだ母は、俺がまだ小さい頃に壊れた。
赤ん坊だった妹だけ連れて、大雪の中で息を引き取ったという。
妹は、冷たくなった母の胸の中にしっかりと抱かれていて、一命を取り留めた。


俺を責める口を持った母は死んだ。
けれど…責める口はなくなった訳じゃなかった。


『お兄様はいずれ領主となられて、この街を好きに支配なさるのでしょう?』
まだまだガキのくせに、大人ぶった事を言う妹。
『その際は、私をどうなさるおつもりですの?お父様のように私をこの街に繋ぎ止めておくつもりですか?』
母が妹を連れ出して以来、父は異常に妹に固執し、街から一歩も出れないようにした。
『好きになさればいいですわ。お兄様にとっても、私はどうせお人形にすぎないのでしょう?』
皮肉気に笑う姿は、一心に俺を責めているように見える。
同時に、まだガキの妹にこんな顔をさせている一因が俺にあると思うと、やるせなくなる。


だが…今の俺には妹を解放してやれる力も無いんだ。

 

 


「ゼロスーーーーーー!!!」
「うぉっ!?」
いきなり後ろから衝撃が来た。
人の気配に敏感な俺が気付かないとは…相当、この雪にやられていたらしい。
後ろからやってきた衝撃の元は、がっしりと両手を俺の腹に回して、くっついてる。
薄着だった俺の冷えた身体に、じんわりと温もりが伝わってくる。
頭上から降ってくる冷たい結晶も気にならない程、ホッとする。
「ロイド…。」
「こんな遅い時間に、こんな寒い所で何やってるんだよ、ゼロス?風邪ひくぞー!」
底抜けに明るいその声は、いつも通りに感じたけれど、ロイドが自分から俺に抱きついてくるなんて、よっぽどの事がない限りあり得ない。
少し戸惑って振り返ると、俺を見上げているロイドの顔は…心配そうな色を浮かべていた。
「ロイド?…どうか、したのか?」
「………だろ。」
俺の背に顔を埋めたロイドがボソッと何か呟いたが、聞こえない。
訊き返す代わりに、力任せにロイドの拘束から逃れ、向き合ってロイドの細い肩を掴んで顔を覗き込む。

「~~っ!お前がどうかしたんだろっ!!」
顔を近付けている状態での大声だったので、耳がキーンッとなる。
思わず、ロイドの肩から手を離して耳を押さえる。
「ロイドく~ん、もうちょっと俺様の耳を労わってよね~…。」
耳を押さえたまま、目を閉じる。

ロイドの顔を見るのが、怖い…。
追及されたら、俺はどうする?
なんて答えりゃいいんだ?


「っ!?」
が、次の瞬間、俺を襲ったのは、言葉ではなく、温もりだった。
両頬に触れる手は、さっきまで覆っていた手袋をポケットにしまい込んでいた。
「お前、冷え過ぎっ!!ほらっ、行くぞっ!!」
頬から離れた温もりは、俺の腕を掴み、強引に引っ張っていく。
降り続ける雪の中、俺は漸く歩き出す事が出来た。
俺を振り向く事無く歩くロイドはブツブツと寒さに対して文句を言っていた。
次第に歩みが速くなっていくのは、きっとロイドが寒さに震えているからだろう。
現に俺の腕を掴んで離さない手は力強さを失いつつある。
さっきロイドは自らの手袋を外したのだから、手が冷えて当たり前だろう。
けれど…感じる筈のない温かさを感じるのは何故なのか…。

「ロイド、ロイドくーん?」
「なんだよ?」
振り向いたロイドの顔には、ただただ『寒い』と書いてあった。
「ちょーっと、この手、離してくんない?」
「お前がちゃんと歩くならいいけど。」
「うんうん、歩くから。」
そっと俺の腕を解放するロイドに笑いかけると、俺は、自分の手袋を外した。
「ゼロス?」
何をやってるんだ?って顔をしているロイドの冷えてしまった手を握る。
伝わってくる冷たさにまで、ロイドの温もりを感じる気がする俺は、きっともうロイド中毒者だ。
「さて、帰るとしますか。家まで送ってやるよ、ハニー?」
そう言って、今度は俺がロイドの手を引いて先を歩く。
「俺はもう17だ!ガキじゃないんだからな!」
「はいはい、分かってるって。別にロイド君がちっこいから心配して送るんじゃなくて、俺様が送りたいから送るだけ。」
「…うーん、ならいっか。」
嬉しそうに目を輝かせて悪戯っ子のような笑みを浮かべるロイド。
毒気を感じさせないその笑顔が、実はとんでもない中毒症状を起こす事を、きっと本人は気付いていないだろう。

 


いつの間にか、降り続く雪を気にしないどころか、その存在を忘れてしまっていた。
嫌な記憶も何もかも、ロイドの手のぬくもりに溶け落ちてしまったような気すらする。
きっとこれも、ロイド中毒の症状の一つだ。


**********************
寒くなってきましたので、雪ネタで。
シリーズ的な続きものばかり書いてしまっていますね(汗)
新たに設定を考え出すのは、難しくて…(爆)

何が言いたいのか、上手く書けなかったのですが、ようは、無意識にゼロスを救っているロイド君的なものを書きたかったんです。
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再会は偶然の闇の中で

「お疲れ様、クラトス、ユアン。」
ステージから控室へと戻ってきた二人にタオルを渡しながら、長く明るい緑色の髪の女性が穏やかに微笑む。
「あぁ、すまないなマーテル。」
マーテル、と呼ばれた女性は、自分に礼を言ってタオルを受け取った青い長髪の男に視線を向けた後、もう一人の男の方へと視線を向ける。
「………・。」
視線を向けられている男は、それに気付いているはずなのに、反応を返さない。
「タオル、置いておくから使ってね、クラトス。」
少し困ったように笑いながら、マーテルはクラトスの前のテーブルにタオルを置いた。
左の方の前髪が長めの男、クラトスは、少し顔を俯かせている為、表情はうかがえない。
だが、青い髪の男、ユアンにもマーテルにも、彼は今、無表情である事が解っていた。



―――クラトス・アウリオン、彼は10年以上も前、愛する妻子を失った時より、殆どの表情を失った―――







「ユアン様、クラトス様、車の準備が出来ました。」
しばらくした後、ユアン専属のマネージャーであるボータという体格の良い男が控室にやってきて、声をかけてきた。


先導するボータのすぐ後ろに、ユアンとマーテルが続き、その後ろからクラトスが無言のまま歩む。
二人のコンサートが終わってから、既に一時間は経っていたが、ファンは、いつどこに現れるか分からない。
ただでさえ、二人は人気の歌手だった。
裏口から会場を出、陽も隠れた薄暗い中を少し歩く四人。


辺りは静寂が支配していたが、突然、バタバタと慌ただしい足音が響き出す。
が、明かりが街灯くらいしかない中、騒がしい足音の主の姿ははっきりとは見えない。
その足音はどんどん四人に近付いてきて…。
「っ!」
「ぅわぁっ!」
見事にクラトスに激突した。
「クラトっ!」
慌ただしい足音が後ろのクラトスの所で止まった事に、ユアンが名前を呼ぼうとしたが、隣にいたマーテルに口を押さえられる。


繰り返すが、ユアンとクラトスは人気の歌手だ。
その名は、知れ渡っている。


そんなユアンとマーテルを他所に、クラトスは、激突してきた物体…いや、人物をしっかりと支えていた。
「ってて…。」
クラトスの胸くらいの高さの位置にある頭は、髪の毛が逆立っていて、クラトスの顎にそれらが当たってくすぐったい。
「…大丈夫か?」
その者の両肩に手を添える事で支えとしていた、クラトスは、その人物に声をかける。
すると、その細く頼りない肩を持つ人物の体がビクッと跳ねる。
「あ、ご、ごめん!!俺、ちゃんと前見てなくて…。急いでて…。」
慌て出したその人物…どうやら少年のようだ…は、必死に言葉を紡ぐが、文章になっていない。
「とにかく、ごめんなっ!」
クラトスの手から離れ、少年はどうやら頭を下げたようだった。
いい訳を始めたかと、思えば投げ出し、そうかと思えば、待っていたのは素直な謝罪で。
思わずクラトスは口元ゆがめた。
「いや、私も不注意であったしな。お互い、次は気をつけるとしよう。」
クラトスの言葉に、少年は顔を上げ、クラトスを見上げた。
街灯のかすかな明かりの中、サングラス越しに見える少年の顔は、安心したような顔だった。
「あぁ、そうするよ!じゃぁな!」
元気よく、そう言うと、少年はまた暗がりの中を駈け出して行った。
少年の後ろ姿が遠ざかるにつれ、その背中が闇に隠れていく。


「大丈夫か?」
ユアンが、クラトスの前までやってきて、クラトスに訊ねるが、クラトスは視線は少年に向けたまま、ただ一言、
「あぁ。」
とだけ答えた。
「どうかしたの?」
マーテルも心配して、クラトスの方へやってくる。
彼女の言葉に、クラトスは、久しく見せていなかった穏やかで…どこか笑みを浮かべた顔を見せた。
「いや…。ロイドが…もし生きていたら、あの位の少年であっただろうかと…な。」
「「…………。」」
クラトスの浮かべている笑みの正しい意味を、二人が理解する事は出来ない。
二人は黙り込むしか出来なかった。


「お乗りください。」
そんな三人に向かって、ボータが声をかけた。
どうやら、もう車の前にまでたどり着いていたらしい。
マーテルが助手席に乗り、ユアンが後部座席へ。
クラトスもユアンに続こうとした時、遠くで叫ぶ声が聞こえてきた。


「ロイドーーーー!!!もぅ!遅いよ!!!」
「わりぃ、ジーニアス!これでも急いだんだけどさ。」



―――『ロイド』? 今、ロイドと聞こえた気がしたのは…私の気のせいか…?
  『ロイド』、私の…たった一人の息子… ―――。



車のドアに、手をかけた状態で固まるクラトスに、追い討ちのように、更に声が聞こえる。
「時間にはもっとゆとりを持ってよね!ほんっとにロイドはぁ~!!!」



「クラトス?どうした、早く乗―――!?」
ユアンが喋り終える前に、クラトスは駈け出した。



クラトスは、先程の会話が聞こえた辺り…ぶつかってきた少年が向かった方へと向う。
やがて…先程の少年と、その隣にもう一人の少年が一緒に歩いているのが見える。
近付くのも躊躇われて、クラトスの脚が凍りついていると、少年たちの笑い声が聞こえてきた。
そして、彼らは名を呼び合いながら、ふざけ合う。




―――あぁ、先程の少年はロイドという名なのだな…―――




クラトスはそれだけを確認した後、すぐに車へと戻った…。


今、クラトスの頭の中は、ロイドという少年の事でいっぱいになっていた。
もしかしたら…と、かすかな期待を胸に秘めて…。


もう…ずっと前に諦めて、償いのように生きてきたクラトスは、今、十数年ぶりの光を見つけたような気がしていた。





**********************
いえ、恋愛要素を親子に入れるつもりはないのですが、親子も大好きなんです。
皆様、ご存知かも知れませんが、声優さん繋がりという事で、クラトスとユアンが歌手してます(笑)
グループ名はさながら…『ツーハァツ』とでも?(汗)
この親子はシリーズ化すると思われます!
ゼロロイ or ルクロイを読むために、お越し下さった方には、申し訳ありません!(汗)
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