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『テイルズオブシンフォニア』のロイド受けで小説を書いていきたいと思います。 今、はまっているのは、ルクロイとゼロロイです。 コメントなど頂けると、励みになります!!
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飛翔
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こんにちは。
かなり遅れて『シンフォニア』を知り、ロイド君が大好きになった飛翔と申します。
同士の方は、是非よろしくお願いします!
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再会は偶然の闇の中で

「お疲れ様、クラトス、ユアン。」
ステージから控室へと戻ってきた二人にタオルを渡しながら、長く明るい緑色の髪の女性が穏やかに微笑む。
「あぁ、すまないなマーテル。」
マーテル、と呼ばれた女性は、自分に礼を言ってタオルを受け取った青い長髪の男に視線を向けた後、もう一人の男の方へと視線を向ける。
「………・。」
視線を向けられている男は、それに気付いているはずなのに、反応を返さない。
「タオル、置いておくから使ってね、クラトス。」
少し困ったように笑いながら、マーテルはクラトスの前のテーブルにタオルを置いた。
左の方の前髪が長めの男、クラトスは、少し顔を俯かせている為、表情はうかがえない。
だが、青い髪の男、ユアンにもマーテルにも、彼は今、無表情である事が解っていた。



―――クラトス・アウリオン、彼は10年以上も前、愛する妻子を失った時より、殆どの表情を失った―――







「ユアン様、クラトス様、車の準備が出来ました。」
しばらくした後、ユアン専属のマネージャーであるボータという体格の良い男が控室にやってきて、声をかけてきた。


先導するボータのすぐ後ろに、ユアンとマーテルが続き、その後ろからクラトスが無言のまま歩む。
二人のコンサートが終わってから、既に一時間は経っていたが、ファンは、いつどこに現れるか分からない。
ただでさえ、二人は人気の歌手だった。
裏口から会場を出、陽も隠れた薄暗い中を少し歩く四人。


辺りは静寂が支配していたが、突然、バタバタと慌ただしい足音が響き出す。
が、明かりが街灯くらいしかない中、騒がしい足音の主の姿ははっきりとは見えない。
その足音はどんどん四人に近付いてきて…。
「っ!」
「ぅわぁっ!」
見事にクラトスに激突した。
「クラトっ!」
慌ただしい足音が後ろのクラトスの所で止まった事に、ユアンが名前を呼ぼうとしたが、隣にいたマーテルに口を押さえられる。


繰り返すが、ユアンとクラトスは人気の歌手だ。
その名は、知れ渡っている。


そんなユアンとマーテルを他所に、クラトスは、激突してきた物体…いや、人物をしっかりと支えていた。
「ってて…。」
クラトスの胸くらいの高さの位置にある頭は、髪の毛が逆立っていて、クラトスの顎にそれらが当たってくすぐったい。
「…大丈夫か?」
その者の両肩に手を添える事で支えとしていた、クラトスは、その人物に声をかける。
すると、その細く頼りない肩を持つ人物の体がビクッと跳ねる。
「あ、ご、ごめん!!俺、ちゃんと前見てなくて…。急いでて…。」
慌て出したその人物…どうやら少年のようだ…は、必死に言葉を紡ぐが、文章になっていない。
「とにかく、ごめんなっ!」
クラトスの手から離れ、少年はどうやら頭を下げたようだった。
いい訳を始めたかと、思えば投げ出し、そうかと思えば、待っていたのは素直な謝罪で。
思わずクラトスは口元ゆがめた。
「いや、私も不注意であったしな。お互い、次は気をつけるとしよう。」
クラトスの言葉に、少年は顔を上げ、クラトスを見上げた。
街灯のかすかな明かりの中、サングラス越しに見える少年の顔は、安心したような顔だった。
「あぁ、そうするよ!じゃぁな!」
元気よく、そう言うと、少年はまた暗がりの中を駈け出して行った。
少年の後ろ姿が遠ざかるにつれ、その背中が闇に隠れていく。


「大丈夫か?」
ユアンが、クラトスの前までやってきて、クラトスに訊ねるが、クラトスは視線は少年に向けたまま、ただ一言、
「あぁ。」
とだけ答えた。
「どうかしたの?」
マーテルも心配して、クラトスの方へやってくる。
彼女の言葉に、クラトスは、久しく見せていなかった穏やかで…どこか笑みを浮かべた顔を見せた。
「いや…。ロイドが…もし生きていたら、あの位の少年であっただろうかと…な。」
「「…………。」」
クラトスの浮かべている笑みの正しい意味を、二人が理解する事は出来ない。
二人は黙り込むしか出来なかった。


「お乗りください。」
そんな三人に向かって、ボータが声をかけた。
どうやら、もう車の前にまでたどり着いていたらしい。
マーテルが助手席に乗り、ユアンが後部座席へ。
クラトスもユアンに続こうとした時、遠くで叫ぶ声が聞こえてきた。


「ロイドーーーー!!!もぅ!遅いよ!!!」
「わりぃ、ジーニアス!これでも急いだんだけどさ。」



―――『ロイド』? 今、ロイドと聞こえた気がしたのは…私の気のせいか…?
  『ロイド』、私の…たった一人の息子… ―――。



車のドアに、手をかけた状態で固まるクラトスに、追い討ちのように、更に声が聞こえる。
「時間にはもっとゆとりを持ってよね!ほんっとにロイドはぁ~!!!」



「クラトス?どうした、早く乗―――!?」
ユアンが喋り終える前に、クラトスは駈け出した。



クラトスは、先程の会話が聞こえた辺り…ぶつかってきた少年が向かった方へと向う。
やがて…先程の少年と、その隣にもう一人の少年が一緒に歩いているのが見える。
近付くのも躊躇われて、クラトスの脚が凍りついていると、少年たちの笑い声が聞こえてきた。
そして、彼らは名を呼び合いながら、ふざけ合う。




―――あぁ、先程の少年はロイドという名なのだな…―――




クラトスはそれだけを確認した後、すぐに車へと戻った…。


今、クラトスの頭の中は、ロイドという少年の事でいっぱいになっていた。
もしかしたら…と、かすかな期待を胸に秘めて…。


もう…ずっと前に諦めて、償いのように生きてきたクラトスは、今、十数年ぶりの光を見つけたような気がしていた。





**********************
いえ、恋愛要素を親子に入れるつもりはないのですが、親子も大好きなんです。
皆様、ご存知かも知れませんが、声優さん繋がりという事で、クラトスとユアンが歌手してます(笑)
グループ名はさながら…『ツーハァツ』とでも?(汗)
この親子はシリーズ化すると思われます!
ゼロロイ or ルクロイを読むために、お越し下さった方には、申し訳ありません!(汗)
**********************

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輝く存在

*『再会は偶然の闇の中で』の続きです。




「彼の名は、ロイド・アーヴィング。現在は17歳…と書類上ではなっているけれど、孤児だった為に、正確な生年月日は不明となっているわ。」
「孤児…だった、とは?」
「えぇ…。幼い頃に、引き取られているわ。」
「…アーヴィングという姓は、引き取った家のものか?」
「いえ、違うわね。」
「…そうか。」
マーテルから顔を窓の方へと移し、空を見上げるクラトス。
窓の外は、雪がちらついていた。





年末コンサートの後、ロイドという少年と会って以来、少しばかり様子が変わったクラトス。
ロイドという名が、彼の息子の名と同じであった事を知っているユアンは、何度もクラトスに言った。
「生き別れた息子かどうか確かめろ!」と。
けれど、クラトスは首を縦にふる事はなく…。


結果、ユアンは勝手に、ロイドという少年を探させた。
(全てマネージャーであるボータ任せ)
手掛かりは少なかったが、有能なボータは、様々な方法を使い、少年を見つけ出し、個人情報を調べ出した。
そして、その情報をクラトスに押し付けようとし、拒否され…結局、マーテルから穏やかな状況を生み出してもらい、伝えてもらう事にした。
やはり気になっていたクラトスは、マーテルの言葉を素直に聞き入れていた。
大方の情報を伝え終えたマーテルの横で、ユアンは視線をクラトスへと向けるが、彼の視線はずっと窓の外へと向けられていた。



『孤児』と、呼ばれた過去を持つ者の正確な個人情報は、皆無に等しい。
マーテルが読み上げた情報だけでは、ロイドという少年が、クラトスの死に別れたと思われていた息子かどうか、ユアンにもマーテルにも分からない。


視線を外から動かさないクラトスに、二人は、クラトスにも判断がつかないのだろうと思う。




だが、クラトスの思考は二人の思うところとは全く違っていた。
クラトスは覚えている。
いや、忘れる事などありえないだろう。
彼が唯一、愛した女性の姓―――アーヴィング―――という言葉を。



孤児だったというのに、引き取り先の家の名字とは違う姓を持っている少年。
クラトスは、限りない程、遠かった希望の…可能性の光が近付いているのを感じる。
急く心を、必死に押しとどめる。
あくまでも、可能性は可能性…間違いないと言えるほどの証拠はまだないのだから………。










「ロイドー!」
遠くから自分を呼ぶ声が聞こえて、ロイドは振り返る。
「お、ルーク!」
そこには、こちらへと駆けてくるルーク…友達の姿があって、ロイドは足を止める。
「あ、あのさっ!一緒に、帰らないか…?」
駆けてきたせいか、少々顔が赤くなり、どもるルークの言葉に、ロイドは笑う。
「あぁ、今クレスに鍵渡してきたトコだから、帰ろうぜ。」
快く返事をするロイドにホッとして、ルークも笑った。


ロイドとルークは、アルバイト先から出て、帰路についた。
二人は学校も違えば、育った環境も何もかもが違った。
だが、アルバイト先で出会った二人は、同い年という事もあり、すぐに打ち解けた。
ルークは、人付き合いが苦手な方だったが、ロイドとはすぐに仲良くなれた。
自分とは全く違う考え方を持ち、常に真直ぐに前を向いて歩くロイドに、ルークは惹かれたのだ。
お坊ちゃま育ちで、少し常識が抜け落ちているルークが必死にアルバイトを頑張っている姿を目にし、ロイドもルークには好感を持っていた。
ちなみにクレスというのは、二人のアルバイトの先輩だ。


「あー、もうすぐ新学期だな~。」
「そう、だな。学校が始まったら、バイトもこんなに出来ないよな…。」
何気ないロイドの一言に、ルークはボソリと呟いて、一人落ち込む。
「ルークも冬休みの宿題終わってないのか!?同じだな!」
何処か嬉しそうに微笑みを浮かべるロイドに、ルークは苦笑しながら「そうじゃないけど…」とだけ返す。
「ジーニアスに訊くのも無理だしな~。」
時々出る、ロイドの幼馴染の名前に、ルークは笑う。
「例の中学時代の先生が、居るからか?」
「そうそう!はぁ~、リフィル先生、なんであんなに勉強ばっかさせるかなぁ~。」
いつもの愚痴を口にするロイドに、ルークは、とっさに思い浮かんだ事を、そのまま口にする。
「あ、ならさ!俺が教えるぜ?………あっ。」
口にしてしまった後に、慌てるルーク。
別にやましい気持ちがあった訳でもないのに、意味もなく頭の中が真っ白になる。
拒絶されたらどうしようかと、またネガティブな方へと向かっていくルークの思考を、ロイドの一言が打ち消した。
「いいのかっ!?サンキュー!!!」
「えっ…。」
「助かるぜっ!」
満面の笑みを浮かべるロイドに…しばし固まったルークは、照れくさくて頭をかいた。
ロイドの存在自体が光なのだと、ルークは今日も思う。


明日、バイトの前に、ロイドの宿題をルークが見る約束をしていた時だった。
突然、歩く二人の前に黒い高級車が止まる。
特に気にするでもなく、二人は車の横を通り過ぎようとしたが、次の瞬間、開いた車のドアから伸びて来た手に、ロイドは腕をつかまれる。
「っ!?」
「っ、ロイドっ!!!」
ルークがロイドに手を伸ばすも、ロイドは瞬く間に車へと引きずり込まれ、車は走り始める。
「ロイドーーー!!!!」
ルークは、車を追いかけるが、車はどんどん速度を上げ、ロイドを引きずり込んだドアは閉められる。
車との距離が開いても、とにかくルークは車を追いかけ続けた。




**********************
親子話とカテゴリーを区切りながらも、ルクロイちっくになりそうです(汗)
ルクロイで、親子話。…という感じになるかと思います。

続きますっ!
**********************

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おかしな三者面談

*『輝く存在』の続きです。



「そうか、お前がロイドか。」
「何が『そうか。』だよっ!?ふざけんなっ!!」
目の前で偉そうに、そう呟く長髪の男に、ロイドは怒り心頭だった。


それも仕方がないだろう。
突然ルークと歩いている時に、車にて拉致されたロイド。
暴れに暴れて、自分を車へと押し込んだ大柄の男を気絶させたまでは良かった。
(振り回した腕が、男の首へと深く入った。)
が、男を気絶させたと同時に、車は止まり、そうかと思えば、自動でドアが開き…今、目の前に居る青い髪の男が立っていたのだった。
たどり着いた先は、見慣れない場所で…。
気がつけば、ロイドの両脇には他の男が立ち、がっちりとロイドを拘束した。
(ちなみに左側に立った男は、先程、気絶させた男だった。)


「はーなーせーよーーっ!!!」
大柄の男二人に拘束されてしまえば、逃れるのは難しい。
それでも、抵抗は止めないロイド。
先程のようにぶったおしてやろうと考えていた。


そんなロイドの正面に立つ、青髪・長髪男は、上から下までじっくりとロイドを眺め続ける。
「俺になんの用だよっ!?」
とりあえず、目の前の男を睨みあげて怒鳴るロイド。
すると、青髪の男は、漸く満足(納得?)がいったのか、ロイドの顔に視線を向け、口を開いた。
「お前の父親の親友だ。」
「はぁっ!?」
男の言葉に、ロイドは隠すことなく、疑惑の目を向ける。
が、男は何も言わない。


「~っ!あんたが親父の親友だとしてっ!俺に一体なんの用だよっ!?」
とりあえず、話を進めようとロイドは納得しないまま、けれど許容して話を進める事を試みる。


一方、青髪・長髪の男…ユアンは、ロイドが実父と養父の取り違いをしてしまっている事に気付きながらも、あえて指摘はしない。
(ちなみに、自称『親友』である。)




「ロイドっ!!!」
ロイドがジタバタと暴れる音だけが響いていた場に、一つの声が聞こえてきた。
「っ、ルーク!」
ロイドの名を呼んだのは、ずっと車を追いかけてきていたルークだった。
結構な距離だったのにも関わらず、ルークは決して足を止めなかった…否、止められなかった。
突然、目の前から奪われた光を、失いたくなかったのだ…。


多少、息が切れていたルークだったが、拘束されているロイドを見、すぐに男たちに飛びかかる。
お坊ちゃんではあるが、危険もある為にある程度の護身術を身に付けているルークは、すぐにロイドの右腕を拘束していた男を蹴り倒す。
右手が自由になった瞬間、ロイドは体をひねり、右手で拳を作り、左腕を拘束する男の腹へと打つ。
体格の良い男は、倒れはしないものの、腹を押さえて背を丸くした。


「大丈夫か、ロイドっ!?」
ルークはロイドの両肩に手を置き、ロイドの身を案じた。
「あぁ、ルークのおかげだよ、サンキューな!」
ルークにお礼を述べながら、ロイドは気付く。
自分の返事を聞いて、安堵の笑みを浮かべたルークの顔が汗で光っている事に…。
自分の為に必死に追いかけてきてくれたのかと思うと、申し訳ないと思う反面、嬉しくて…照れくさく感じるロイドだった。


「…私を無視するな。」
「「っ!」」
そんな二人を見守っていたユアンが、口を開く。
瞬間的に、ルークを庇うように前へ出ようとしたロイドだったが、それはルークも同じだったようで、肩がぶつかる。
「ロイド!」
が、ルークに力で押し戻され、ロイドはルークに守られるように、彼の後ろで手を握り込まれる。
ずっと走ってきて、汗だくのルークの手は、冷たくて…何故か抗えなくなる。


「ふむ。貴様にも良い友がいるようだ。ならば…。」
ポイッと、ユアンがルークたちに何かを放り投げる。
反射的に、それをキャッチしてしまうルーク。
投げられたものは、チケットだった。



『ツーハーツ 新年コンサート!』と大きく書かれているチケットを眺めるルークとロイド。
「「??」」
そんな二人を満足そうに眺め、ユアンは偉そうに笑みを浮かべて言った。
「二人で来い。待っているぞ。」

気がつけば、ルークとロイドが倒した男たちはユアンの横に真直ぐに立っていて…ユアン達は車に乗って去っていった…。




「なぁ、ルーク。これって…なんだ?」
そもそも『コンサートのチケット』を知らないロイド。
「コンサートのチケット、だな。それにしても…『ツーハーツ』。確かクラスの女子が騒いでたような…。」
名前は聞いた事があるも、全く興味がないルーク。
そんな二人には、先程去ったユアンが実はかなり名の売れている歌手グループなのだと知るよしもなかった。




**********************
親子カテゴリーなのに、パパを出せなかったです(泣)
ユアンの優秀な部下である彼の名前を間違っていました、すみません!
ボーダではなく、ボータだったのですね(汗)
名前を出せなかったのですが、ロイドを拉致った大柄の男はボータさんです。
**********************

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悲しい歌声

*『おかしな三者面談』の続きです。

 

「コンサートのチケットをもらっちゃったなら、ちゃんと行かないとダメだよ、ロイド!」
ニッコリと笑って言うコレットに、ロイドは唸る。
「でもなぁ~…。親父に訊いても、そんな奴知らないって言うし…。」
先日、親父の親友と名乗るあやしい奴にもらった(強引に渡された)チケットについてコレットに相談してみると、コレットは上記のように述べたのだった。
「でも、コンサートのチケットって高いし、無償でくれたって事は、絶対悪い人じゃないよっ!」
変に説得力のある言葉に、ロイドは思わず「そうかもな…。」と、返してしまった。
ここに常識人であるジーニアスが居なかった事は幸いなのか災い元なのか…。

 

一方こちらでは…。
「チャンスじゃないか、ルークっ!」
相談してきたルークに、ガイは嬉しそうに声をあげた。
「何がチャンスなんだよ、ガイ?そいつはロイドをさらったんだぞ?そんな奴が寄越したチケットなんて…。」
目の前でロイドが車に押し込められ、何も出来なかった自分を思い出して、ルークは顔を歪めた。
「だからこそ、だろ!」
ウインクしてガイは続ける。
「もし、そのコンサートに行かなかった事がバレたら、ロイドって奴は今後もつけ狙われる可能性があるだろう?だから、お前は一緒にコンサートに行って、ロイドを守ってやればいいんだよ!そうすれば、デートができる上にお前はロイドを守れる!一石二鳥じゃないか!!」
「そっ、そっか!!サンキュー、ガイっ!!」
ガイの言葉を受けて、ルークは突然、喜びを全面に出した。

 


こうして、ロイドとルークはそろって、青い長髪男の誘いのままに、コンサートへとやって来たのだった。


「なぁ、ロイド…。」
「あぁ…。」
ロイドとルークはコンサート会場に入り、でかでかと貼られているポスターを見つめていた。
そこには、まぎれもなく以前ロイドをさらった青髪の男が笑顔で写っている。
おまけにそのポスターの下には『ツーハーツ』と書いてあるのだから…二人はここにきて、今更のように、彼がこのコンサートの主役のツーハーツの一人である事を知った。



コンサートが始まり、賑わいだす会場内、ロイドとルークはステージが良く見える席にいた。
*ユアンが渡したのは当然のごとく眺めの良い指定席のチケットである。


始めは、ユアンの方を嫌々ながらも観ていたロイドだったが、気が付くと、自然と視線が横に反れていた。
そう、青髪ユアンの横で歌う赤髪の男へと…。


ロック系の曲が終わったと思った次の瞬間、続けて流れ出したのは、穏やかな曲だった。
ボーカルのメインが赤髪の男になる。
ロイドは視線が反らせなくなっていた。
何かが…あの男の何かが胸に引っかかる。



―――なんで、あんなに哀しそうに歌ってるんだ…?
     なんか…………―――

 

「ロイド?ロイド!どうしたんだよ!?」
肩を揺さぶられている事に気が付くと、目の前には心配げに自分を見つめるルークが居た。
「ル、ーク…。」
「気分でも悪くなったのか?」
思いっきり動揺しているルークに、逆にロイドは落ち着いてくる。
先程まで胸の中につっかえていたものが、薄れていく気がする。
「大丈夫だよ。そうじゃなくて…さ。」
ロイドはルークに笑いかけ…視線をステージの赤髪の男へと向ける。
「なんで、アイツはあんなに哀しそうに歌うのかなって思ってさ…。」
「かなし、そう…?」
赤髪の男から目をそらさないロイドの言葉と視線に、ルークは不安を感じる。


「ロイドは…あいつがす、好きなのかっ!?」
思わず突拍子もない事を口にしてから、早速ルークは自分の口を恨んだ。
が、返って来た返事は特にルークの言葉を気にしたふうもないものだった。
「へ?んな訳ないだろう。」
爽快に笑うロイドに、ホッとするルーク。
ロイドはルークの顔を見ると、笑いながら言った。
「なんか、気になっただけなんだ。それだけだよ。」
「そっか…。」


「うーん、曲が悲し気って訳でもないのになんでだろうなぁ~…。」
悩み込むロイドに、ルークが言う。
「俺には、悲しそうってよりは、冷たく感じるな。」
「そうか?」
「なんつーか…上手いけど、心ここにあらずって感じ?」
ルークの言葉を聞いて、ロイドはフム…と考える。


ルークの言っている事も、解る。
けれども、ロイドが感じてしまうのは、何故か悲しみで…。
結局、その一曲が終わるまで、ロイドは彼の歌声からは悲しみしか感じ取れなかった。











「お疲れ様です。」
「あぁ。」
無事に終わったコンサート。
舞台裏ではクラトスとユアンが休んでいた。
そこに、いつものように、コンサート後に回収された、コンサートの感想アンケート用紙をまとめて、係りの人間が来た。
いつもならば、マーテルかボータが受け取るのだが、今その二人はいない為、近くに居たクラトスがそのアンケート用紙を受け取ろうと手を伸ばす。
「?そちらの用紙は違うのか?」
何故かアンケートを持っていた係りは、左手を後ろに回している。
その手には明らかに紙があって。
「あっ、いえ…。これは、ちょっと今急いで持ってきてしまって…。」
しどろもどろになりながら答える係りの眼は落ち着きがない。
「なんだ?アンケートの紙なら、全て見せろ。」
ユアンは立ち上がり、係りの青年から紙を取り上げた。
それは二枚のアンケート用紙。
隣で読み始めるユアンにため息をつきつつ、クラトスは椅子へと座り込む。


「フッ、クラトス。お前にだ。」
「…なんだ?」
そのうちの一枚だけをクラトスへと投げるユアン。
クラトスはひらひらと舞ってきた紙を掴み、目を向け…そして、驚きに目を見開いた。



『赤髪の人、何か歌い方が悲しそうに聴こえた。
 せっかくいい声なんだから、楽しく歌えよ。

            ロイド・I』




驚きのあまり、声も出ないクラトスに視線を向けながらも、ユアンはもう一枚を握りしめて、しわしわにしていた。

『おい、この誘拐やろうっ!
歌手だか何だかしらねぇけどな、ロイドは俺が守るからなっ!
今度ロイドに何かしたら、絶対にゆるさねぇからな!!
            ルーク・フォン・ファブレ』





「ロイドが…来ていたのか……?」
呆然と、紙を見つめるクラトスには、非難(文句?)に近いアンケート用紙を抜きぬれなかった事を謝る係りの青年の声など、全く届いてはいなかった…。



**********************
ちょっと、コンサートを飛ばしてしまいました(汗)
今回書きたかったのは、例え人気があっても、歌が上手くても、そんなパパの歌声はロイドにとっては悲しみを歌っているようにしか聴こえないという事です。
**********************

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ささやかなお見舞いの品

*『悲しい歌声』の続きです。




目の前の古びた2階建ての家をしばし眺め、ルークは左手のメモに目を移す。
「ここで、あってる…よなぁ?」
メモに書かれている住所は確かに、この家をさしている。
けれども、ルークはこんなボロ家(失礼)でロイドが生活しているなんて信じられなかった。
「誰だ、お前さん?」
突然、背後からかかった声に、思わずビクッとしつつ、ルークは振り向く。
「俺の家に何か用か?」
その言葉に、ルークは目を見開いた。
「じゃぁ…あなたが、ロイドの親父さん…ですか?」



「なんでぇ、ロイドの見舞いに来てくれたのか。」
豪快に笑うダイクに、ルークは少し緊張しながらも、しっかりと自己紹介をした。
が、ルークが名乗った後、ダイクはすぐに反応した。
分厚い眉に隠された目が、少し見開かれたように見える。
「そうかそうか、お前さんがルークか。」
「俺を…知ってるんですか?」
ルークが控えめに問うと、ダイクは門を開けながら、明るい声で言う。
「あったりまえよ。ロイドの奴が、嬉しそうにいつも話すからなぁ。」
「っ!…そ、そうですか。」
ダイクの言葉に、思いっきり赤面しながら、ルークは促されるままに、ロイドたちの家の中へと足を踏み入れた。



今日、本当はバイト先で会えるはずだったロイド。
だが、ロイドは来なかった…。
先輩であるクレスに訊けば、どうやら高い熱が出ているらしい。
かなりかすれた声で電話をしてきたと聞いて、ルークは居ても経ってもいられなくなった。
だから、早めにバイトをあがらせてもらい、こうしてロイドの家へとやって来たのだ。
ダイクにロイドの部屋は2階だと教えてもらい、ルークは静かな足取りで階段をのぼっていった。


コンコンッ


「…ロイド。」
「…………………。」
「寝てるのか、ロイド…?」
「…………………。」
ドアの前で呼び掛けてみるも、返答はなし。
ルークはゆっくりとドアノブを回し、室内へと入っていった。




「…………………。」
室内は、ルークからしてみれば狭く感じられるものだった。
窓の傍にあるベッドの上でロイドが瞳を閉じていた。
足音を消して近付けば、すぅすぅと静かな寝息が聞こえてくる。
熱のせいか、顔は赤いが、表情はそれ程、苦しそうではなくて、ルークは一つ息を吐きだした。
傍にあった椅子を寄せ、ルークはロイドの頬にそっと手を触れさせる。
頬は、熱かった。
ルークの手を心地よく感じたのか、ロイドの顔が不意にルークの手にこすりつけられる。
「っ!」
「んー…。」
「…ロ、ロイド?」
思わず手を引きそうになるも、少し唸るロイドは起きる気配もなく、ルークの手に頬を寄せている。
…先ほどより、表情が和らいだ気がする。



ルークは、空いている方の手で、眠るロイドの髪を撫でながら、先日の出来事を思い出していた。






「まさか、貴様があのファブレ家の子供とはな。世の中、分からないものだ。」
突然、かけられた声に振り向けば、そこには、この間ロイドを攫い、しかもコンサートのチケットを(勝手に)寄越した青い髪の男…ユアンが立っていた。
「なっ!お前!!!」
警戒心を丸出しにし、ルークは構える。
「まぁ、待て。私はロイドについて訊きたいだけだ。」
「やっぱりかよっ!ふざけんなよ、ミュージシャンだか芸能人だか知らないけどなぁ、訴えるぞっ!?」
きつく睨みあげるルークに、ユアンはため息をつき、やれやれ…と小さく呟く。
「私は不審者などではない。ロイドの父親の友だ。」
「ロイドの親父さんは、知らないって言ってたらしいぜ!?」
「親父…養父か。それはそうだろうな…。」
「…なんだよ、何を…。」
何か…意味ありげに、笑うユアンに、ルークは嫌な予感がする。
知りたいような…知ってはいけないような…………………そんな事実をこの男が持っている事を、ルークの頭は既に理解していた…。


「良い事を教えてやろう。ロイドがもし、私が思っている者なら…――――――――――――――」






「んっ………ル、ク…?」
小さな声にハッとして顔をあげれば、ルークの手に自分の手を重ねるロイドと目が合った。
「どうか…した、のか?」
「え?」
寝ぼけ眼で、ロイドはルークに問う。
「なんか…難しい顔、してる…。」
「そう、かな?ははっ………。」
思わず誤魔化そうと笑ったが、ネガティブ思考に塗りつぶされた頭が、それ以上笑い続ける事を拒否した。


こつん


「ロ、イド?」
「…ルークの体温、気持ちいいな。」
熱い両手をルークの頬へと伸ばし、ロイドは自分とルークの額をくっつけた。
ロイドの熱が…ぬくもりが、ルークに伝わってくる。
かすれたロイドの声に今更気がついて、ルークはポケットに入っていた飴玉を取り出す。
「んむっ?」
ポイッとロイドの口の中へと放り込んで苦笑する。
「サンキュ…。」
「どういたしまして。」
お金のかかったものをあげても、ロイドはあまり喜ばない人間だ。
それを知っているから、ルークは見舞いに花も持ってはこれなかった。
けれど、ただの飴玉一つで、ロイドはとても嬉しそうに笑ってくれる。
それが、ルークには、たまらなく嬉しかった。


「ありがとな…。」
「え?」
「見舞いにきてくれたんだろ?」
「あ、う、うん。」
慌てて返事をすると、ロイドは照れくさそうに微笑んだ。
至近距離で見るロイドの瞳は、熱のせいで潤んでいた。
無意識に…ゆっくりとルークの手がロイドの両頬を包み込む。
「早く…元気になれよな。」
「あぁ、サンキュー。」
互いの体温が心地よくて、2人はしばらくそのままでいた。









『ロイドがもし、私が思っている者なら…あいつの本当の父親は生きている。』



ユアンの言葉が、ルークは頭の中から離れなかった。
ロイドに伝えるべきなのか、それとも伝えないべきなのか…。



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久々に現代パロの続きを書きました。
パパが出せなかった…(TT;)
『ほのぼのルクロイ』と、表示すべきだったでしょうか?(汗)
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