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『テイルズオブシンフォニア』のロイド受けで小説を書いていきたいと思います。 今、はまっているのは、ルクロイとゼロロイです。 コメントなど頂けると、励みになります!!
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飛翔
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こんにちは。
かなり遅れて『シンフォニア』を知り、ロイド君が大好きになった飛翔と申します。
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輝き続ける光

「ゼロスーー!」

振り向くと、力いっぱい手を振り続けるロイド。
仕方なく苦笑しながらも、こちらもロイドに手を振る。
すると、ロイドのでかい目がキラキラ光る。
ランドセルを背負った、まだまだ小さなロイドは真っ直ぐにこっちに向かって駆けて来る。

「よぉ、ロイド。初の小学校はどうだったよ?」
今日はロイドの入学式だった。
ロイドの養父は職人だから、忙しくて式には出られないと言っていた。
ロイドの事を考えると、可哀想ではあったが、ロイドはしっかりと養父が忙しい事を分かっていて、ふてくされはしても、決して文句は言わなかったらしい。
(ちなみに俺様、今日は学校サボり)
「ジーニアスとコレットと同じクラスになった!」
「へぇ~、良かったじゃんか。」
ジーニアスとコレットというのは、ロイドの幼稚園からの友達だ。
ポンポンとロイドの頭を軽く叩いてやると、ロイドがくすぐったそうに、けれど嬉しそうに笑う。
癖になりつつある、この行為は…毎回嬉しそうに微笑むロイドを見たいから繰り返している。

 

 


『・・・・・・・・・。』
初めてロイドに会ったのは、俺様が小学2年生くらいの時だったと思う。
実父ではない、養父に連れられて、この街にやって来たロイド。
俺様んちは領主やってるから、挨拶に来た時に会った。
親父とロイドの養父の話を聞いていれば、ロイドは少し前に引き取られたばかりだと言う。
どうりで養父に懐いていないと思った。
俯けている顔は、何処までも不安を表わしていた。

『お前、名前は?』
親父に目で命じられ、俺様はロイドを連れて庭に来て、一番に名を訊ねた。
正直、あんまり返事は期待してなかったが、意外にも返事は返ってきた。
しかも…。
『名前を訊ねる時は自分から名乗るもんだっ!』
今まで一度として向けられた事のない生意気な言葉で。
『…ぷっはぁっ!!!』
思わず噴き出した俺様を見上げるでかい瞳には、もう不安の色はなかった。
『そりゃ~、悪かった。俺様はゼロス。』
腹を抱えながら、空いている方の手でロイドの頭をポンポン叩くと、ロイドは暫く固まった後、嬉しそうに笑った。

それから、ロイドは毎日のように俺様の所に遊びに来た。
媚びを売りにやってくる奴らしか知らなかった俺様にとったら、ロイドの存在は特別だった。
どんなに生意気でも、そこには企みも裏も何もなかったのだから。

 

 

「いただきますっ!」
元気良く、そう言うと、ロイドは使用人が出した料理に喰いついた。
今日もロイドは俺んちで昼食を食べる。
朝、出かける前に養父の分の昼食は作って来たらしい。
ガキのくせに、ロイドは養父と二人暮らしのせいか、家事を難なくこなしている。

「相変わらず、良く食べるねぇ~。」
「上手い飯だからな!」
これだけ美味そうに平らげられたら、料理人も満足だろう。


入学式での出来事を話すロイドは、本当に楽しそうだ。
元々、人見知りをするタイプではないから、それ程心配はしていなかったが。

ロイドの世界は広がっていく。
その内、ロイドの世界から、俺は消えてしまうのではないか?
けれど、それも仕方がない事だと思う。
ロイドは俺とは違う。
あいつの魂は光の中にある。
そして俺のは闇の中…。

「ゼロス?」
ハッとして、顔を上げると、そこには心配そうな顔をしたロイド。
「あ、あぁ、わりぃ。ちょっと考え事してたわ。」
笑って誤魔化す俺に、ロイドは小首を傾げただけで、追及はしない。
「御馳走様っ!ゼロスっ、庭行こう!学校から朝顔の種もらったんだ!!」
「はぁっ?あ、おい…。」
「こんなに小さい種から、綺麗な花が咲くんだぜ?咲いたら、一番にゼロスに見せてやるからなっ!」
「っ…。…そいつぁ、楽しみだ。」

深い深い闇の中…。
もがくのも止めて、しゃがみ込んだ俺の前に、やがて眩しい位の光が現れる。
『ゼロスっ!』
うっとおしい位、光りやがって…俺様をひっぱりあげるんだ。
文句を言ってやろうと顔を合わすけど、能天気なほどの笑顔を向けられて…怒る前に泣きそうになっちまう。


ロイド…お前は俺の光だ。
不安を抱える時間も、文句を言う暇も与えてくれない位、やっかいな…な。


**********************
初のゼロロイです。
しかもパラレル…(^^;)

書きたい事がまとまらなかったのですが、シリーズ的に続けていきたいと思っている設定です。
**********************

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大きな手

*『輝き続ける光』の続きです。




今年も、朝顔がゼロスんちの庭で元気に咲いてる。
俺が水やりに来れない時は、「俺様は、面倒な事は一切しないからな~。」と始めは言っていたゼロスが、しっかり水をあげてくれている事を俺は知ってる。
だから、今年もこんなにコイツらは元気なんだ。
ゼロスにそう言うと、テレて誤魔化すから、本人の前ではあんまり言わないけど。


小学校に入学した時、俺は楽しみで仕方なかった。
だって、学校に行けばゼロスに会えるから。
今まで以上に一緒に遊べると思ったら、ワクワクして、入学式の前日なんてあんまり眠れなかったくらいだ。


でも…ゼロスはすぐに卒業しちまった。
まぁ、当然だよな。
ゼロスは俺より5つも年上なんだから。
ジーニアスやコレット、他にも友達がいたけど…なんか物足りない学校生活だった。
そんな俺も、今は高校生だ。
ゼロスが卒業した学校に比べたら、かなりレベルが低い学校だけど、俺を育ててくれた親父に恥をかかせない為にも、俺なりに努力して入れた学校だから悔いはない。
親父も喜んでくれたしな…。
本当は高校に行くつもりのなかった俺だが、リフィル先生(中学校三年の時の担任でジーニアスの姉さんなんだぜ?)に、いかに勉学が大事か教え説かれた。
ついでに親父の「俺の後を継ぐなら、高校くらい行っといたらどうだ?」って言葉もあって…。


親父は細工師だ。
大きな手で、器用に色んなものを創り出してくんだ。
俺は昔から、そんな親父を見ていた。
血のつながりはないけど、俺もそれなりに手先は器用みたいで、いつからか…時々だけど親父の隣でものを創るようになった。
親父みたいに上手くいかないし、飽きっぽい俺だけど、親父の仕事をする姿は好きなんだ。




『お前は…アーヴィングというのか?』
高校に入った時、いきなり話しかけてきた教師は…なんかすかした奴だった。
『そうだけど…。』
『…そうか。』
前髪がヤケに長いソイツは、それだけ訊くと、すぐに顔を横向けて職員室へと歩き去った。
男子剣道部に入った俺は、顧問がその教師だった事にびっくりした。
だって、ソイツ細いし(そりゃ、人の事は言えないけどさ…)、無口だったから。
けど、眼光の鋭さは人一倍で、強さも半端じゃなかった。
外見がいいから、女子からは凄い人気だったけど、部活だと真っ二つに分かれる評価。
『尊敬する先生』と『いけすかないセンコー』。
始めの頃の俺は後者だった。
でも、本格的な部活動をしていく内に、先生として認められるようになった。
的確なアドバイスを受ける度、どんどん上達してきた俺は大会でも優勝候補としてあげられ始めた。


初めて優勝した大会には、ゼロスも観に来てくれていた。
『良かったじゃねぇか。』って、笑いながら、俺の肩をポンポンしてくれた。


昔は頭だった、その行為を、数日前に拒否したのは俺だった…。
だって恥ずかしかったんだ。
『わりぃわりぃ~。』
そう言って、ゼロスはすぐに手を頭から離して肩にポンポンした。
口元は笑っているのに、俺にはゼロスが本当に笑っているようには見えなくて…傷つけてしまった事にすぐ気付いた。
でも、ゼロスはすぐに俺から離れて、行ってしまった。
それから…ゼロスは何処かぎこちなく接してくる。


そして・・・・・・・・現在に至る訳で。
俺は現在、大学に行っているゼロスの帰宅を待っている。
今日こそ、はっきりさせてやるんだと意気込んで!





「ロイド…?」
「!っゼロス!!」
突然、後ろから声が掛けられて、慌てて振り向くと、思ったとおりゼロスが居た。
が、ゼロスの隣には女の人が2人居た。
「あら、朝顔。貧乏くさい花ですわね。」
「本当に。くすくすっ。それにしても、ゼロス様?こちらの子供は?」
ゼロスに話しかけながら、くっついている女の人たち。
良く解らない感情が湧きあがる。
抑えられなくて…気が付いたら、俺は泣いてた…みたいだ。
ゼロスの目が見開かれる。
女の人のうるさい声が途切れたと思った瞬間、俺はゼロスに抱きしめられていた。
ゼロスの肩越しに、涙でぼやけている俺の視界に入ったのは、立ちすくむ女の人たち。
「っ・・・・・・・・・ぅっ・・・・・。」
涙が止まらない。
突然ゼロスが抱きしめてきて、驚いてるというのに。
「わりぃな。コイツ、俺様のトクベツな訳よ。」
顔だけ後ろに向けて、ゼロスは女の人たちに一言。
「っうわぁっ!」
次の瞬間、ゼロスに担ぎあげられた。
落ちないように、無意識にゼロスの服を掴んだ。
「大人しくしてろよ?」
言い聞かすように、優しい声でゼロスが囁いたから、俺は素直に担ぎあげられたままゼロスんちのゼロスの部屋へと運ばれた。


漸くおろされれば、背に柔らかい感触。
俺のお気に入りの、ゼロスのソファの上だった。
俺の前にしゃがみこんで、視線を合わせてくるゼロスを真っ直ぐに見つめていると、ゼロスの手が伸びてきて…優しく俺の涙を拭ってくれた。
何も言わないゼロスは、ただ笑っていた。
そして、俺の肩をポンポンと叩く。
俺は思わず、その手を掴んだ。
「止めろよっ!俺はっ…俺は・・・・・・・・・・・!!!」
掴んだ手をどうすればいいのか分からなくて…でも放したくなくて掴んでいると、不意にゼロスの逆の手が伸びてきた。
今度は…頭にその手がのせられる。
「…こっちの方が、いいか?」
「っ!」
いつの間にか俯かせていた顔をあげると、少し嬉しそうな笑みを浮かべたゼロスの顔。
また涙が溢れてきて、俺は何度も頭を縦に振った。
「そっかそっか。ロイドはまだまだお子様だなぁ~。」
そう言ったゼロスは、いつの間にか逃げ出した手と合わせ、両手で俺の頭を撫で始めた。
昔のポンポンではなく、それこそ容赦なくぐしゃぐしゃと。
髪がぐしゃぐしゃになってもいいと、今は思えた。


ただ…またゼロスの大きな手で、頭に触れてもらえている事が嬉しくて堪らなかったんだ。


「朝顔、今年も綺麗に咲いたな。」
耳に届いてくるゼロスの穏やかな声が、くすぐったかった。


**********************
前回の続き的なパラレルなゼロロイでした。
今回はロイド君視線で書いてみました。
ゼロロイといいながらも、色々脱線した事も書いてしまいましたね(汗)
剣道部顧問は勿論(?)彼です。
親子も大好きです。

何だかロイド君が我がままな感じになってしまって…次、頑張ります!
**********************

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ロイド中毒

*『輝き続ける光』の設定です。




今年も…全ての色を飲み込むアレが降る。
寒く感じるのは、冬だからという理由だけなのか。
嫌いなのに見上げたまま動けなくなるのは、何かの呪いか…。

雪降る中、こうして俺が外にいるのには訳がある。
こうゆう日に限って、領主である親父が高熱を出し、その代わりに俺が隣町での会合に行ってきたのだ。
俺はもう大学生だし、いずれは親父の後を継ぐ事になる。
この街の事は気に入っているし、領主という仕事が嫌な訳じゃない。
ただ…そう、ただ―――

 

 

『私の自由を奪ったのは、あんたの存在なのよっ!!』
長い綺麗な髪を振り乱しながら、泣き叫ぶ母の姿。
母の目はひどく濁っていて、光がない。


政略結婚を強いられ、俺を生んだ母は、俺がまだ小さい頃に壊れた。
赤ん坊だった妹だけ連れて、大雪の中で息を引き取ったという。
妹は、冷たくなった母の胸の中にしっかりと抱かれていて、一命を取り留めた。


俺を責める口を持った母は死んだ。
けれど…責める口はなくなった訳じゃなかった。


『お兄様はいずれ領主となられて、この街を好きに支配なさるのでしょう?』
まだまだガキのくせに、大人ぶった事を言う妹。
『その際は、私をどうなさるおつもりですの?お父様のように私をこの街に繋ぎ止めておくつもりですか?』
母が妹を連れ出して以来、父は異常に妹に固執し、街から一歩も出れないようにした。
『好きになさればいいですわ。お兄様にとっても、私はどうせお人形にすぎないのでしょう?』
皮肉気に笑う姿は、一心に俺を責めているように見える。
同時に、まだガキの妹にこんな顔をさせている一因が俺にあると思うと、やるせなくなる。


だが…今の俺には妹を解放してやれる力も無いんだ。

 

 


「ゼロスーーーーーー!!!」
「うぉっ!?」
いきなり後ろから衝撃が来た。
人の気配に敏感な俺が気付かないとは…相当、この雪にやられていたらしい。
後ろからやってきた衝撃の元は、がっしりと両手を俺の腹に回して、くっついてる。
薄着だった俺の冷えた身体に、じんわりと温もりが伝わってくる。
頭上から降ってくる冷たい結晶も気にならない程、ホッとする。
「ロイド…。」
「こんな遅い時間に、こんな寒い所で何やってるんだよ、ゼロス?風邪ひくぞー!」
底抜けに明るいその声は、いつも通りに感じたけれど、ロイドが自分から俺に抱きついてくるなんて、よっぽどの事がない限りあり得ない。
少し戸惑って振り返ると、俺を見上げているロイドの顔は…心配そうな色を浮かべていた。
「ロイド?…どうか、したのか?」
「………だろ。」
俺の背に顔を埋めたロイドがボソッと何か呟いたが、聞こえない。
訊き返す代わりに、力任せにロイドの拘束から逃れ、向き合ってロイドの細い肩を掴んで顔を覗き込む。

「~~っ!お前がどうかしたんだろっ!!」
顔を近付けている状態での大声だったので、耳がキーンッとなる。
思わず、ロイドの肩から手を離して耳を押さえる。
「ロイドく~ん、もうちょっと俺様の耳を労わってよね~…。」
耳を押さえたまま、目を閉じる。

ロイドの顔を見るのが、怖い…。
追及されたら、俺はどうする?
なんて答えりゃいいんだ?


「っ!?」
が、次の瞬間、俺を襲ったのは、言葉ではなく、温もりだった。
両頬に触れる手は、さっきまで覆っていた手袋をポケットにしまい込んでいた。
「お前、冷え過ぎっ!!ほらっ、行くぞっ!!」
頬から離れた温もりは、俺の腕を掴み、強引に引っ張っていく。
降り続ける雪の中、俺は漸く歩き出す事が出来た。
俺を振り向く事無く歩くロイドはブツブツと寒さに対して文句を言っていた。
次第に歩みが速くなっていくのは、きっとロイドが寒さに震えているからだろう。
現に俺の腕を掴んで離さない手は力強さを失いつつある。
さっきロイドは自らの手袋を外したのだから、手が冷えて当たり前だろう。
けれど…感じる筈のない温かさを感じるのは何故なのか…。

「ロイド、ロイドくーん?」
「なんだよ?」
振り向いたロイドの顔には、ただただ『寒い』と書いてあった。
「ちょーっと、この手、離してくんない?」
「お前がちゃんと歩くならいいけど。」
「うんうん、歩くから。」
そっと俺の腕を解放するロイドに笑いかけると、俺は、自分の手袋を外した。
「ゼロス?」
何をやってるんだ?って顔をしているロイドの冷えてしまった手を握る。
伝わってくる冷たさにまで、ロイドの温もりを感じる気がする俺は、きっともうロイド中毒者だ。
「さて、帰るとしますか。家まで送ってやるよ、ハニー?」
そう言って、今度は俺がロイドの手を引いて先を歩く。
「俺はもう17だ!ガキじゃないんだからな!」
「はいはい、分かってるって。別にロイド君がちっこいから心配して送るんじゃなくて、俺様が送りたいから送るだけ。」
「…うーん、ならいっか。」
嬉しそうに目を輝かせて悪戯っ子のような笑みを浮かべるロイド。
毒気を感じさせないその笑顔が、実はとんでもない中毒症状を起こす事を、きっと本人は気付いていないだろう。

 


いつの間にか、降り続く雪を気にしないどころか、その存在を忘れてしまっていた。
嫌な記憶も何もかも、ロイドの手のぬくもりに溶け落ちてしまったような気すらする。
きっとこれも、ロイド中毒の症状の一つだ。


**********************
寒くなってきましたので、雪ネタで。
シリーズ的な続きものばかり書いてしまっていますね(汗)
新たに設定を考え出すのは、難しくて…(爆)

何が言いたいのか、上手く書けなかったのですが、ようは、無意識にゼロスを救っているロイド君的なものを書きたかったんです。
**********************

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100年後の未来

「100年後、帰ってくる…クラトスに、何か残してやりたいんだ。」
「…そりゃまた。相変わらず父親想いです事~。」
軽口で返すゼロスに、ロイドは困ったように眉を寄せながらも微笑んだ。
「もう直接…『父さん』って、呼べない代わりに…………。」
「成程ねぇ~。で、具体的には?」
「ぅっ!…………。」
明らかに何の案も持っていないロイドの様子に、ゼロスはニヤリと人の悪い笑みを浮かべ、ロイドの耳元で囁いた。
「俺さまにイイ案があるぜぇ~?」
ビクつくロイドの細い肩を優しく掴み、ゼロスは続けた。
「…ただし、それには俺さまたちにかなりの覚悟が必要だ。」
「かく、ご…?」
思いかけず真剣な声色に、ロイドは驚きよりも、言葉を理解しようと試みた。







「今、帰った。」
ポツリと呟いた長身の男は、静かにそこに片膝をつく。
彼の目の前には、昔と…100年前、この星をたつ前と全く変わらない、よく手入れのされた綺麗な墓石がある。
「アンナ…。」
右手を墓石に伸ばし、彼…クラトスは100年ぶりに妻の墓石に触れた。
木々に遮られながらも、かすかな光が射すそこは、かすかに温かい。


暫し妻の墓を眺めた後、ふと隣の墓石に視線をそらす。
100年前には無かったものだ。
クラトスは、一度強く目を閉じ…ゆっくりと墓石に刻まれている名を読み取る。
そこには、彼が最も望んでいなかった名は刻まれてはおらず…クラトスは静かに詰めていた息を吐きだした。
そして、今度は、隣の墓石の前に立ち、目を閉じた。
『ダイク殿…ありがとう。』
妻の墓をたててくれて…。
息子を立派に育ててくれて…。
そして…恐らくは息子に見とられてくれて…・。



100年経っても、ダイクがロイドと暮らしていた家は、残っていた。
大分、ガタはきているが、未だに生活感は残っていた。
妻とダイクの墓が残っている以上、彼らの…ロイドの縁の者が住んでいる可能性は高い。


けれど、もう100年も経っているのだ…。
反対側にあるノイシュの小屋があった場所辺りにでも…あるのかもしれない、と彼は思う。
けれど彼は見たくなかった。
最も望んでいない…息子の名が刻まれた墓石を……………。



やがて、クラトスは決意して、立ちあがる。
自分より長く生きて欲しいと望みながらも、決して無理である事は解っていた。
それでも…死ぬ事には何の意味もないのだと…真直ぐに言った息子の姿と言葉が心の奥に残っていて、願わずにはおれなかったのだ。
クラトスがゆっくりと歩を進めると、突如、ズザザザァー!と、上から何かが降ってきた。
「っ!」
思わず、剣の柄に手を添えたクラトスだったが、落ちてきたものを見て、その手は剣から離れる。


「…………………。」
落ちてきたモノは、ギュッとクラトスにしがみ付いている。
短いその髪は、薄い金色で…100年前、息子の隣に居た少女を思い出させる。
が、力の込み具合からいって、今クラトスにしがみ付いているのは少年だろう。
そう…丁度、100年前の息子と同じ年頃の…。
「………………。」


「あんた誰だよ~?俺たちの家に何か用か~?」
しがみついている少年を無理に引き離す気にもなれず、動けぬままだったクラトスに、今度は目の前の木の横から青年が出てくる。
こちらは…かなり見覚えがある顔つきだ…。
ついでに言えば、何処か軽く感じる口調も、100年前に息子に懐いていたヤツに似ている。
が、その青年は見事な黒髪だった。
そう…100年前のドジな暗殺者と同じ髪の色…。
ロイドを好いていた娘と………・。
思わず凝視していると、黒髪の短髪青年は、不機嫌そうな顔を、一層険しくしていた。
「…おい、離れろ。」
青年は、そう言って、クラトスにしがみ付いている少年の肩に手を置き、引っ張る。
だが、クラトスにしがみ付いたままの少年は、首を横に振り、更に力を込めてクラトスにひっつく。


何が何だか解らない…いや、粗方理解できているであろうクラトスの脳内は、只今混乱中だった。
恐らくコレットの子孫と思われる少年(しがみついたままなので、顔は見えない)と、しいなの子孫と思われる黒髪の青年は、どうやらこの家で一緒に暮らしている様子。
100年前、ここはダイクとロイド(とノイシュ)の家だった。
そこから分析してしまう彼が知らない未来とは…。


『この子は、もしやロイドとコレットの…。』


そう思えば思うほど、クラトスは切なくなった。
子孫を残すほどに、息子は成長し、そして恐らく…。




どよーんとした空気を纏い始めたクラトスに、黒髪の青年は、深いため息をつき、人を喰った笑みを浮かべた。
そう、まるで100年前の神子と同じように…………。
「もう喋ってもいいぜぇ~。ったく、計画台無しだしぃ~?」
「…計画?」
思わずクラトスが口を開くと、しがみついている少年が顔をあげた。
「っ!」
それは…100年前のあの日と同じ……クラトスを見送った時の苦しげな顔をした息子、ロイドだった。
「っ、ぅ~!」
視線を合わせていると、ボロボロとロイドの瞳からこぼれおちてくる涙。
自分が旅立った後も、こんな顔をして泣いていたのかと思うと、クラトスは胸が締め付けられる思いだった。



「はいはい~、感動の親子対面はその辺でぇ~。つか、いい加減にしろ、親バカ親父!!」
気がつけば、クラトスはしがみ付いてくる息子の背に逞しい両腕を回し、支えながらも強く強く抱きしめていた。
黒い物体が飛んできて、思わずロイドを抱えたまま避ける。
落ちた物を見ると、それは真黒なカツラだった。
そして、目の前で憎々しそうに、こちらを見ている人物は…。
「神子…。」
100年前と変わらぬ、赤い長髪を手で払いながら、青年は、近付いてきた。
そして、クラトスにしがみ付いている少年の金の髪を引っ張る。
呆気なく…金の髪…、いや、カツラは取れて、その下からは茶色の髪が現れた。
恐らくカツラをかぶる為に下ろしたのだろう…ロイドの髪はストンッと下に流れ落ちていた。
何処か若い頃の自分を見ているような不思議な感覚に、クラトスは血のつながりを改めて感じながら、笑った。


「お帰り…お帰り……・父さんっ!!」
泣きじゃくり、赤くはれ上がった目元を隠そうともせず、満面の笑みで歓迎してくれた息子に、クラトスは小さく囁いた。


「ただいま、ロイド。ありがとう…。」








「えーっと、じゃぁ俺がコレットと俺の子孫、ゼロスがしいなとゼロスの子孫のふりをするってことか?」
「そうそっ!だから~、ロイド君は髪下ろして、金色のカツラね~。」
何処までも楽しげなゼロスの案に、ロイドは混乱顔だ。


ゼロスの提案は、まず、2人そろってのエクスフィア装備の継続から始まった。
天使化してしまえば、刻の流れなど関係がなくなる。
ロイドは随分悩んだが、ゼロスと共に生きられるのなら、と頷いた。
エクスフィア回収の旅を終えても、2人は自分たちのエクスフィアだけは外さなかった。
ロイドは、ゼロスに生というものを楽しんで欲しかった。
生きる事は苦しい事だけではないのだと、知ってほしかったのだ。
エクスフィアを外す事はいつでも出来る。
充分に、生というものを体感出来たら、いつでも外そうと、ロイドは考えていた。


が、逆にゼロスは望んでいた。
ずっと2人で生き続ける事を…。
ロイドという光に出逢えた。
その光に触れる事を、抱き締める事を許された。
それならば…2度と手放したくなどない…。


細かい考えは違うものの、2人は結局、共に生きる事を望み、100年を過ごしたのだ。


「どうして、子孫のふりなんてする必要があるんだ?」
心底不思議そうに訊くロイドに、ゼロスはしたり顔で言う。
「その方が、天使様が驚くからだって。せっかくの再会なんだし、サプライズは必要だぜ?」
「さぷらいず?」
「どっきり企画って事。」
ふむふむと頷くロイドに笑いかけながら、ゼロスは着実にクラトスを一瞬でも悲しみにくれさせる為の案を練っていった。




本当はロイドに、「あんた、俺のご先祖様?」と言わせ、クラトスを混乱させる予定だったというのに…。
最終的には、明かすつもりだった真実なので、仕方ないと、ゼロスはため息をついた。
目の前で幸せそうに話す父子を眺めながら、ゼロスは「今日だけは、俺さまのロイド君を貸してやる。」と自分を抑える。


その夜、可愛らしくも愛おしくもないクラトスと、愛してやまないロイドと一緒に床で眠る事になる事を、ゼロスはまだ知らない…。
*もちろん提案者はロイド!



**********************
ゼロロイ…を書きたかったのに、パパが出張っちゃいました(汗)
こんな話もアリかな、と。
**********************

拍手

有心論

『神子』

それは、この世に生まれおちた瞬間から…いや、俺という命が母体の中に出来た瞬間から、俺にくっついていた称号。
望んでもいない地位は、俺の心を歪ませるには充分な存在感だった。

『神子様っ!』
『ゼロス様ー!』


ゼロス
俺の名前だ。
俺だけを示す言葉。
唯一の俺だけのもの…

誰も俺を…『ゼロス』を求めてなんかいねぇんだ。
だから、俺も自分をさらけ出すなんて事はしねぇぜ。
『俺』は、俺だけのものだ。




『お前ってさ…』
女性たちに笑顔を振りまいていた俺を、呆れた顔が見上げてくる。

『ゼロスっ!!』
必死の険相で、モンスターに囲まれている俺の元へ駆けよってくるアイツ。

『へへっ』
クールになりたいといいながらも、さらすガキくせぇ笑顔。
…でも、アイツの視線にも、言葉にも、笑顔にも…ウソは一つもないんだ。
良く言えば真直ぐ、悪く言えば単純な奴だ。


一緒にいると、フリじゃなくても構いたおしている自分が居る。
だってさ、心地いいんだ。
アイツの傍は、俺のまわりの『偽』を消し去る。
…あぁ、きっとこれが本当の『好意』ってやつなんだな。






何て言ったのか…思い出せない。
今、自分の口から発した言葉も理解出来ない状態だった。
でも、告白めいた事を言った事だけは自覚していた。
目の前に居るアイツ…ロイドは動かない。

でも…ロイドは少しも俺から目をそらさない。
真直ぐに見上げてくる丸い瞳は、何処までも澄み切っている…。
「ロイ…っ。」
取り繕う言葉を考えながら、口を開くと…目の前のロイドに変化がおこった。

白い頬に、次々と透明な雫が滑り、地へ落ちてゆく。
「…………………。」
ロイドは何も言わない。
表情も変わらない。

ロイドの口が動く。
けれど音を生さないそれは、空気を揺らす事すら出来ないような小さなもので…。

ただ…………ロイドの顔が、今まで見たどんなものよりも綺麗な泣き顔に見えた。

だからだろうな。
何だか、あったかくなってきて、気がついてたら口の端があがっていた。
ゆっくりと右手をロイドの左頬に伸ばして…湿った頬に触れる。

そしたら、ロイドが笑った。
照れくさそうに………。
…さっきより、あったかくなってきた。

無意識のうちに、俺は目の前のほそっこい身体を抱きしめた。
絶対に放さない。
逃さない。
欲しいんだ……………本当に、本心から望んでいるんだ。
「ロイドっ…。」

「…ゼロス。」
後頭部を撫でられる感触。
優しい…優しい手つきだ。
その手つきと同じように、優しい声が何度も俺の名前を呼ぶんだ。
俺だけの名前を………………。




強くきつく抱きしめたロイドの頬に、新たな水気がおちる。
ロイドは何も言わないで、ただ俺の頭を撫でて、軽く背中をたたき続けた。
あやされる感覚に、テレよりも先に出たのは本心だった…。


俺は泣きやんでも、ロイドを放さなかったし、ロイドも抱きしめ返してくれたから……いいんじゃねぇの?
結果オーライってな。


**********************
…あれ?
す、すみません!
何だかとんでもない駄作に…(^^;)
タイトルの曲の影響で、突発的に書いてしまいました。
『君があまりにも綺麗に泣くから僕は思わず横で笑ったよ。すると君もつられて笑うから僕は嬉しくて泣く』という歌詞が、とても好きで…この小説は、この部分の歌詞をゼロロイでイメージして表現したかったんです。
…良い歌詞からイメージしたのに、上手く書けなくてすみません(汗)
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