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「ゼロスーー!」
振り向くと、力いっぱい手を振り続けるロイド。
仕方なく苦笑しながらも、こちらもロイドに手を振る。
すると、ロイドのでかい目がキラキラ光る。
ランドセルを背負った、まだまだ小さなロイドは真っ直ぐにこっちに向かって駆けて来る。
「よぉ、ロイド。初の小学校はどうだったよ?」
今日はロイドの入学式だった。
ロイドの養父は職人だから、忙しくて式には出られないと言っていた。
ロイドの事を考えると、可哀想ではあったが、ロイドはしっかりと養父が忙しい事を分かっていて、ふてくされはしても、決して文句は言わなかったらしい。
(ちなみに俺様、今日は学校サボり)
「ジーニアスとコレットと同じクラスになった!」
「へぇ~、良かったじゃんか。」
ジーニアスとコレットというのは、ロイドの幼稚園からの友達だ。
ポンポンとロイドの頭を軽く叩いてやると、ロイドがくすぐったそうに、けれど嬉しそうに笑う。
癖になりつつある、この行為は…毎回嬉しそうに微笑むロイドを見たいから繰り返している。
『・・・・・・・・・。』
初めてロイドに会ったのは、俺様が小学2年生くらいの時だったと思う。
実父ではない、養父に連れられて、この街にやって来たロイド。
俺様んちは領主やってるから、挨拶に来た時に会った。
親父とロイドの養父の話を聞いていれば、ロイドは少し前に引き取られたばかりだと言う。
どうりで養父に懐いていないと思った。
俯けている顔は、何処までも不安を表わしていた。
『お前、名前は?』
親父に目で命じられ、俺様はロイドを連れて庭に来て、一番に名を訊ねた。
正直、あんまり返事は期待してなかったが、意外にも返事は返ってきた。
しかも…。
『名前を訊ねる時は自分から名乗るもんだっ!』
今まで一度として向けられた事のない生意気な言葉で。
『…ぷっはぁっ!!!』
思わず噴き出した俺様を見上げるでかい瞳には、もう不安の色はなかった。
『そりゃ~、悪かった。俺様はゼロス。』
腹を抱えながら、空いている方の手でロイドの頭をポンポン叩くと、ロイドは暫く固まった後、嬉しそうに笑った。
それから、ロイドは毎日のように俺様の所に遊びに来た。
媚びを売りにやってくる奴らしか知らなかった俺様にとったら、ロイドの存在は特別だった。
どんなに生意気でも、そこには企みも裏も何もなかったのだから。
「いただきますっ!」
元気良く、そう言うと、ロイドは使用人が出した料理に喰いついた。
今日もロイドは俺んちで昼食を食べる。
朝、出かける前に養父の分の昼食は作って来たらしい。
ガキのくせに、ロイドは養父と二人暮らしのせいか、家事を難なくこなしている。
「相変わらず、良く食べるねぇ~。」
「上手い飯だからな!」
これだけ美味そうに平らげられたら、料理人も満足だろう。
入学式での出来事を話すロイドは、本当に楽しそうだ。
元々、人見知りをするタイプではないから、それ程心配はしていなかったが。
ロイドの世界は広がっていく。
その内、ロイドの世界から、俺は消えてしまうのではないか?
けれど、それも仕方がない事だと思う。
ロイドは俺とは違う。
あいつの魂は光の中にある。
そして俺のは闇の中…。
「ゼロス?」
ハッとして、顔を上げると、そこには心配そうな顔をしたロイド。
「あ、あぁ、わりぃ。ちょっと考え事してたわ。」
笑って誤魔化す俺に、ロイドは小首を傾げただけで、追及はしない。
「御馳走様っ!ゼロスっ、庭行こう!学校から朝顔の種もらったんだ!!」
「はぁっ?あ、おい…。」
「こんなに小さい種から、綺麗な花が咲くんだぜ?咲いたら、一番にゼロスに見せてやるからなっ!」
「っ…。…そいつぁ、楽しみだ。」
深い深い闇の中…。
もがくのも止めて、しゃがみ込んだ俺の前に、やがて眩しい位の光が現れる。
『ゼロスっ!』
うっとおしい位、光りやがって…俺様をひっぱりあげるんだ。
文句を言ってやろうと顔を合わすけど、能天気なほどの笑顔を向けられて…怒る前に泣きそうになっちまう。
ロイド…お前は俺の光だ。
不安を抱える時間も、文句を言う暇も与えてくれない位、やっかいな…な。
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初のゼロロイです。
しかもパラレル…(^^;)
書きたい事がまとまらなかったのですが、シリーズ的に続けていきたいと思っている設定です。
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*『輝き続ける光』の続きです。
今年も、朝顔がゼロスんちの庭で元気に咲いてる。
俺が水やりに来れない時は、「俺様は、面倒な事は一切しないからな~。」と始めは言っていたゼロスが、しっかり水をあげてくれている事を俺は知ってる。
だから、今年もこんなにコイツらは元気なんだ。
ゼロスにそう言うと、テレて誤魔化すから、本人の前ではあんまり言わないけど。
小学校に入学した時、俺は楽しみで仕方なかった。
だって、学校に行けばゼロスに会えるから。
今まで以上に一緒に遊べると思ったら、ワクワクして、入学式の前日なんてあんまり眠れなかったくらいだ。
でも…ゼロスはすぐに卒業しちまった。
まぁ、当然だよな。
ゼロスは俺より5つも年上なんだから。
ジーニアスやコレット、他にも友達がいたけど…なんか物足りない学校生活だった。
そんな俺も、今は高校生だ。
ゼロスが卒業した学校に比べたら、かなりレベルが低い学校だけど、俺を育ててくれた親父に恥をかかせない為にも、俺なりに努力して入れた学校だから悔いはない。
親父も喜んでくれたしな…。
本当は高校に行くつもりのなかった俺だが、リフィル先生(中学校三年の時の担任でジーニアスの姉さんなんだぜ?)に、いかに勉学が大事か教え説かれた。
ついでに親父の「俺の後を継ぐなら、高校くらい行っといたらどうだ?」って言葉もあって…。
親父は細工師だ。
大きな手で、器用に色んなものを創り出してくんだ。
俺は昔から、そんな親父を見ていた。
血のつながりはないけど、俺もそれなりに手先は器用みたいで、いつからか…時々だけど親父の隣でものを創るようになった。
親父みたいに上手くいかないし、飽きっぽい俺だけど、親父の仕事をする姿は好きなんだ。
『お前は…アーヴィングというのか?』
高校に入った時、いきなり話しかけてきた教師は…なんかすかした奴だった。
『そうだけど…。』
『…そうか。』
前髪がヤケに長いソイツは、それだけ訊くと、すぐに顔を横向けて職員室へと歩き去った。
男子剣道部に入った俺は、顧問がその教師だった事にびっくりした。
だって、ソイツ細いし(そりゃ、人の事は言えないけどさ…)、無口だったから。
けど、眼光の鋭さは人一倍で、強さも半端じゃなかった。
外見がいいから、女子からは凄い人気だったけど、部活だと真っ二つに分かれる評価。
『尊敬する先生』と『いけすかないセンコー』。
始めの頃の俺は後者だった。
でも、本格的な部活動をしていく内に、先生として認められるようになった。
的確なアドバイスを受ける度、どんどん上達してきた俺は大会でも優勝候補としてあげられ始めた。
初めて優勝した大会には、ゼロスも観に来てくれていた。
『良かったじゃねぇか。』って、笑いながら、俺の肩をポンポンしてくれた。
昔は頭だった、その行為を、数日前に拒否したのは俺だった…。
だって恥ずかしかったんだ。
『わりぃわりぃ~。』
そう言って、ゼロスはすぐに手を頭から離して肩にポンポンした。
口元は笑っているのに、俺にはゼロスが本当に笑っているようには見えなくて…傷つけてしまった事にすぐ気付いた。
でも、ゼロスはすぐに俺から離れて、行ってしまった。
それから…ゼロスは何処かぎこちなく接してくる。
そして・・・・・・・・現在に至る訳で。
俺は現在、大学に行っているゼロスの帰宅を待っている。
今日こそ、はっきりさせてやるんだと意気込んで!
「ロイド…?」
「!っゼロス!!」
突然、後ろから声が掛けられて、慌てて振り向くと、思ったとおりゼロスが居た。
が、ゼロスの隣には女の人が2人居た。
「あら、朝顔。貧乏くさい花ですわね。」
「本当に。くすくすっ。それにしても、ゼロス様?こちらの子供は?」
ゼロスに話しかけながら、くっついている女の人たち。
良く解らない感情が湧きあがる。
抑えられなくて…気が付いたら、俺は泣いてた…みたいだ。
ゼロスの目が見開かれる。
女の人のうるさい声が途切れたと思った瞬間、俺はゼロスに抱きしめられていた。
ゼロスの肩越しに、涙でぼやけている俺の視界に入ったのは、立ちすくむ女の人たち。
「っ・・・・・・・・・ぅっ・・・・・。」
涙が止まらない。
突然ゼロスが抱きしめてきて、驚いてるというのに。
「わりぃな。コイツ、俺様のトクベツな訳よ。」
顔だけ後ろに向けて、ゼロスは女の人たちに一言。
「っうわぁっ!」
次の瞬間、ゼロスに担ぎあげられた。
落ちないように、無意識にゼロスの服を掴んだ。
「大人しくしてろよ?」
言い聞かすように、優しい声でゼロスが囁いたから、俺は素直に担ぎあげられたままゼロスんちのゼロスの部屋へと運ばれた。
漸くおろされれば、背に柔らかい感触。
俺のお気に入りの、ゼロスのソファの上だった。
俺の前にしゃがみこんで、視線を合わせてくるゼロスを真っ直ぐに見つめていると、ゼロスの手が伸びてきて…優しく俺の涙を拭ってくれた。
何も言わないゼロスは、ただ笑っていた。
そして、俺の肩をポンポンと叩く。
俺は思わず、その手を掴んだ。
「止めろよっ!俺はっ…俺は・・・・・・・・・・・!!!」
掴んだ手をどうすればいいのか分からなくて…でも放したくなくて掴んでいると、不意にゼロスの逆の手が伸びてきた。
今度は…頭にその手がのせられる。
「…こっちの方が、いいか?」
「っ!」
いつの間にか俯かせていた顔をあげると、少し嬉しそうな笑みを浮かべたゼロスの顔。
また涙が溢れてきて、俺は何度も頭を縦に振った。
「そっかそっか。ロイドはまだまだお子様だなぁ~。」
そう言ったゼロスは、いつの間にか逃げ出した手と合わせ、両手で俺の頭を撫で始めた。
昔のポンポンではなく、それこそ容赦なくぐしゃぐしゃと。
髪がぐしゃぐしゃになってもいいと、今は思えた。
ただ…またゼロスの大きな手で、頭に触れてもらえている事が嬉しくて堪らなかったんだ。
「朝顔、今年も綺麗に咲いたな。」
耳に届いてくるゼロスの穏やかな声が、くすぐったかった。
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前回の続き的なパラレルなゼロロイでした。
今回はロイド君視線で書いてみました。
ゼロロイといいながらも、色々脱線した事も書いてしまいましたね(汗)
剣道部顧問は勿論(?)彼です。
親子も大好きです。
何だかロイド君が我がままな感じになってしまって…次、頑張ります!
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*『輝き続ける光』の設定です。
今年も…全ての色を飲み込むアレが降る。
寒く感じるのは、冬だからという理由だけなのか。
嫌いなのに見上げたまま動けなくなるのは、何かの呪いか…。
雪降る中、こうして俺が外にいるのには訳がある。
こうゆう日に限って、領主である親父が高熱を出し、その代わりに俺が隣町での会合に行ってきたのだ。
俺はもう大学生だし、いずれは親父の後を継ぐ事になる。
この街の事は気に入っているし、領主という仕事が嫌な訳じゃない。
ただ…そう、ただ―――
『私の自由を奪ったのは、あんたの存在なのよっ!!』
長い綺麗な髪を振り乱しながら、泣き叫ぶ母の姿。
母の目はひどく濁っていて、光がない。
政略結婚を強いられ、俺を生んだ母は、俺がまだ小さい頃に壊れた。
赤ん坊だった妹だけ連れて、大雪の中で息を引き取ったという。
妹は、冷たくなった母の胸の中にしっかりと抱かれていて、一命を取り留めた。
俺を責める口を持った母は死んだ。
けれど…責める口はなくなった訳じゃなかった。
『お兄様はいずれ領主となられて、この街を好きに支配なさるのでしょう?』
まだまだガキのくせに、大人ぶった事を言う妹。
『その際は、私をどうなさるおつもりですの?お父様のように私をこの街に繋ぎ止めておくつもりですか?』
母が妹を連れ出して以来、父は異常に妹に固執し、街から一歩も出れないようにした。
『好きになさればいいですわ。お兄様にとっても、私はどうせお人形にすぎないのでしょう?』
皮肉気に笑う姿は、一心に俺を責めているように見える。
同時に、まだガキの妹にこんな顔をさせている一因が俺にあると思うと、やるせなくなる。
だが…今の俺には妹を解放してやれる力も無いんだ。
「ゼロスーーーーーー!!!」
「うぉっ!?」
いきなり後ろから衝撃が来た。
人の気配に敏感な俺が気付かないとは…相当、この雪にやられていたらしい。
後ろからやってきた衝撃の元は、がっしりと両手を俺の腹に回して、くっついてる。
薄着だった俺の冷えた身体に、じんわりと温もりが伝わってくる。
頭上から降ってくる冷たい結晶も気にならない程、ホッとする。
「ロイド…。」
「こんな遅い時間に、こんな寒い所で何やってるんだよ、ゼロス?風邪ひくぞー!」
底抜けに明るいその声は、いつも通りに感じたけれど、ロイドが自分から俺に抱きついてくるなんて、よっぽどの事がない限りあり得ない。
少し戸惑って振り返ると、俺を見上げているロイドの顔は…心配そうな色を浮かべていた。
「ロイド?…どうか、したのか?」
「………だろ。」
俺の背に顔を埋めたロイドがボソッと何か呟いたが、聞こえない。
訊き返す代わりに、力任せにロイドの拘束から逃れ、向き合ってロイドの細い肩を掴んで顔を覗き込む。
「~~っ!お前がどうかしたんだろっ!!」
顔を近付けている状態での大声だったので、耳がキーンッとなる。
思わず、ロイドの肩から手を離して耳を押さえる。
「ロイドく~ん、もうちょっと俺様の耳を労わってよね~…。」
耳を押さえたまま、目を閉じる。
ロイドの顔を見るのが、怖い…。
追及されたら、俺はどうする?
なんて答えりゃいいんだ?
「っ!?」
が、次の瞬間、俺を襲ったのは、言葉ではなく、温もりだった。
両頬に触れる手は、さっきまで覆っていた手袋をポケットにしまい込んでいた。
「お前、冷え過ぎっ!!ほらっ、行くぞっ!!」
頬から離れた温もりは、俺の腕を掴み、強引に引っ張っていく。
降り続ける雪の中、俺は漸く歩き出す事が出来た。
俺を振り向く事無く歩くロイドはブツブツと寒さに対して文句を言っていた。
次第に歩みが速くなっていくのは、きっとロイドが寒さに震えているからだろう。
現に俺の腕を掴んで離さない手は力強さを失いつつある。
さっきロイドは自らの手袋を外したのだから、手が冷えて当たり前だろう。
けれど…感じる筈のない温かさを感じるのは何故なのか…。
「ロイド、ロイドくーん?」
「なんだよ?」
振り向いたロイドの顔には、ただただ『寒い』と書いてあった。
「ちょーっと、この手、離してくんない?」
「お前がちゃんと歩くならいいけど。」
「うんうん、歩くから。」
そっと俺の腕を解放するロイドに笑いかけると、俺は、自分の手袋を外した。
「ゼロス?」
何をやってるんだ?って顔をしているロイドの冷えてしまった手を握る。
伝わってくる冷たさにまで、ロイドの温もりを感じる気がする俺は、きっともうロイド中毒者だ。
「さて、帰るとしますか。家まで送ってやるよ、ハニー?」
そう言って、今度は俺がロイドの手を引いて先を歩く。
「俺はもう17だ!ガキじゃないんだからな!」
「はいはい、分かってるって。別にロイド君がちっこいから心配して送るんじゃなくて、俺様が送りたいから送るだけ。」
「…うーん、ならいっか。」
嬉しそうに目を輝かせて悪戯っ子のような笑みを浮かべるロイド。
毒気を感じさせないその笑顔が、実はとんでもない中毒症状を起こす事を、きっと本人は気付いていないだろう。
いつの間にか、降り続く雪を気にしないどころか、その存在を忘れてしまっていた。
嫌な記憶も何もかも、ロイドの手のぬくもりに溶け落ちてしまったような気すらする。
きっとこれも、ロイド中毒の症状の一つだ。
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寒くなってきましたので、雪ネタで。
シリーズ的な続きものばかり書いてしまっていますね(汗)
新たに設定を考え出すのは、難しくて…(爆)
何が言いたいのか、上手く書けなかったのですが、ようは、無意識にゼロスを救っているロイド君的なものを書きたかったんです。
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