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*『おかしな三者面談』の続きです。
「コンサートのチケットをもらっちゃったなら、ちゃんと行かないとダメだよ、ロイド!」
ニッコリと笑って言うコレットに、ロイドは唸る。
「でもなぁ~…。親父に訊いても、そんな奴知らないって言うし…。」
先日、親父の親友と名乗るあやしい奴にもらった(強引に渡された)チケットについてコレットに相談してみると、コレットは上記のように述べたのだった。
「でも、コンサートのチケットって高いし、無償でくれたって事は、絶対悪い人じゃないよっ!」
変に説得力のある言葉に、ロイドは思わず「そうかもな…。」と、返してしまった。
ここに常識人であるジーニアスが居なかった事は幸いなのか災い元なのか…。
一方こちらでは…。
「チャンスじゃないか、ルークっ!」
相談してきたルークに、ガイは嬉しそうに声をあげた。
「何がチャンスなんだよ、ガイ?そいつはロイドをさらったんだぞ?そんな奴が寄越したチケットなんて…。」
目の前でロイドが車に押し込められ、何も出来なかった自分を思い出して、ルークは顔を歪めた。
「だからこそ、だろ!」
ウインクしてガイは続ける。
「もし、そのコンサートに行かなかった事がバレたら、ロイドって奴は今後もつけ狙われる可能性があるだろう?だから、お前は一緒にコンサートに行って、ロイドを守ってやればいいんだよ!そうすれば、デートができる上にお前はロイドを守れる!一石二鳥じゃないか!!」
「そっ、そっか!!サンキュー、ガイっ!!」
ガイの言葉を受けて、ルークは突然、喜びを全面に出した。
こうして、ロイドとルークはそろって、青い長髪男の誘いのままに、コンサートへとやって来たのだった。
「なぁ、ロイド…。」
「あぁ…。」
ロイドとルークはコンサート会場に入り、でかでかと貼られているポスターを見つめていた。
そこには、まぎれもなく以前ロイドをさらった青髪の男が笑顔で写っている。
おまけにそのポスターの下には『ツーハーツ』と書いてあるのだから…二人はここにきて、今更のように、彼がこのコンサートの主役のツーハーツの一人である事を知った。
コンサートが始まり、賑わいだす会場内、ロイドとルークはステージが良く見える席にいた。
*ユアンが渡したのは当然のごとく眺めの良い指定席のチケットである。
始めは、ユアンの方を嫌々ながらも観ていたロイドだったが、気が付くと、自然と視線が横に反れていた。
そう、青髪ユアンの横で歌う赤髪の男へと…。
ロック系の曲が終わったと思った次の瞬間、続けて流れ出したのは、穏やかな曲だった。
ボーカルのメインが赤髪の男になる。
ロイドは視線が反らせなくなっていた。
何かが…あの男の何かが胸に引っかかる。
―――なんで、あんなに哀しそうに歌ってるんだ…?
なんか…………―――
「ロイド?ロイド!どうしたんだよ!?」
肩を揺さぶられている事に気が付くと、目の前には心配げに自分を見つめるルークが居た。
「ル、ーク…。」
「気分でも悪くなったのか?」
思いっきり動揺しているルークに、逆にロイドは落ち着いてくる。
先程まで胸の中につっかえていたものが、薄れていく気がする。
「大丈夫だよ。そうじゃなくて…さ。」
ロイドはルークに笑いかけ…視線をステージの赤髪の男へと向ける。
「なんで、アイツはあんなに哀しそうに歌うのかなって思ってさ…。」
「かなし、そう…?」
赤髪の男から目をそらさないロイドの言葉と視線に、ルークは不安を感じる。
「ロイドは…あいつがす、好きなのかっ!?」
思わず突拍子もない事を口にしてから、早速ルークは自分の口を恨んだ。
が、返って来た返事は特にルークの言葉を気にしたふうもないものだった。
「へ?んな訳ないだろう。」
爽快に笑うロイドに、ホッとするルーク。
ロイドはルークの顔を見ると、笑いながら言った。
「なんか、気になっただけなんだ。それだけだよ。」
「そっか…。」
「うーん、曲が悲し気って訳でもないのになんでだろうなぁ~…。」
悩み込むロイドに、ルークが言う。
「俺には、悲しそうってよりは、冷たく感じるな。」
「そうか?」
「なんつーか…上手いけど、心ここにあらずって感じ?」
ルークの言葉を聞いて、ロイドはフム…と考える。
ルークの言っている事も、解る。
けれども、ロイドが感じてしまうのは、何故か悲しみで…。
結局、その一曲が終わるまで、ロイドは彼の歌声からは悲しみしか感じ取れなかった。
「お疲れ様です。」
「あぁ。」
無事に終わったコンサート。
舞台裏ではクラトスとユアンが休んでいた。
そこに、いつものように、コンサート後に回収された、コンサートの感想アンケート用紙をまとめて、係りの人間が来た。
いつもならば、マーテルかボータが受け取るのだが、今その二人はいない為、近くに居たクラトスがそのアンケート用紙を受け取ろうと手を伸ばす。
「?そちらの用紙は違うのか?」
何故かアンケートを持っていた係りは、左手を後ろに回している。
その手には明らかに紙があって。
「あっ、いえ…。これは、ちょっと今急いで持ってきてしまって…。」
しどろもどろになりながら答える係りの眼は落ち着きがない。
「なんだ?アンケートの紙なら、全て見せろ。」
ユアンは立ち上がり、係りの青年から紙を取り上げた。
それは二枚のアンケート用紙。
隣で読み始めるユアンにため息をつきつつ、クラトスは椅子へと座り込む。
「フッ、クラトス。お前にだ。」
「…なんだ?」
そのうちの一枚だけをクラトスへと投げるユアン。
クラトスはひらひらと舞ってきた紙を掴み、目を向け…そして、驚きに目を見開いた。
『赤髪の人、何か歌い方が悲しそうに聴こえた。
せっかくいい声なんだから、楽しく歌えよ。
ロイド・I』
驚きのあまり、声も出ないクラトスに視線を向けながらも、ユアンはもう一枚を握りしめて、しわしわにしていた。
『おい、この誘拐やろうっ!
歌手だか何だかしらねぇけどな、ロイドは俺が守るからなっ!
今度ロイドに何かしたら、絶対にゆるさねぇからな!!
ルーク・フォン・ファブレ』
「ロイドが…来ていたのか……?」
呆然と、紙を見つめるクラトスには、非難(文句?)に近いアンケート用紙を抜きぬれなかった事を謝る係りの青年の声など、全く届いてはいなかった…。
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ちょっと、コンサートを飛ばしてしまいました(汗)
今回書きたかったのは、例え人気があっても、歌が上手くても、そんなパパの歌声はロイドにとっては悲しみを歌っているようにしか聴こえないという事です。
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