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*『父の声』の続きです。
変に温かい…。
自分の右手をすっぽりと包みこんでいる大きな手は、少し低い体温で、握る指の優しい力加減に心が落ち着く。
逆に左の手を握る力は、ギュッと容赦なく強くて、そして手は自分の手より大きいのに、その手は子供の体温のようにとても温かい。
少しずつ意識が浮上する中、両手が身体の両側からそれぞれ拘束されているのを感じたが、それはロイドに安心感を与えてくれていた。
「………。」
ゆっくりと目を開くと、真っ白な高い天井が見えた。
少しだけボーっと天井を見つめていたが、まるで急かす様に右手を包んでいた手が、握る指に力をこめてきて…ロイドは不意に右手に力を入れ、そちらを向く。
紅い髪の男が、そこに居た………。
自分を迎えに来てくれた……優しい、父親の顔をして手を握ってくれた………………――――――
「父、さ…ん……。」
初めてそう呼んだ時と同じように、嬉しそうに目を細めたところまでは、同じだった。
クラトスは、口元を少し綻ばせた後、ロイドの右手にもう一方の手も添え、両手で握りこんだ。
そして、額がその手に触れるくらい、顔を伏せ、まるで祈る人のような姿勢になる。
どうしたのかと、ロイドが口を開きかけた瞬間、クラトスは言った。
「ロイド…。」
たった一言。
だが、その一言は、色々な想いが籠められているように、ロイドには聞こえた。
『喜び』や『悲しみ』と言った言葉では片付けられないような深い深い響き。
ロイドは、大きな手に包まれた指にギュッと力を入れて、握り返した。
ゆっくりと顔を上げたクラトスの表情を見る前にと、ロイドは口を開いた。
「迎えに来てくれて、ありがとうな。」
目が合ったクラトスは、驚いたように目を開いていて………それが少し面白く感じられて、ロイドは笑った。
クラトスの口が戦慄く。
「ロイド…っ、よく、生きていてくれた………!」
そう言ったクラトスの声は震えていて…。
今度は両手で握りこんでいるロイドの手に額を押し付けた。
ロイドは、そんな『父親』の姿に、少し戸惑いながら、右手の指に力を込める。
泣いているのかもしれない……堪え続けているのかもしれない………そんなクラトスの姿から、ロイドは感じる事ができた。
自分がどんなに想われ続けていたか………どれ程、想われているかを。
「っ…!」
気付けば、ロイドは目頭が熱くなってきていた。
目の前の『父親』から伝わってくる想い……それに重なって感じる温かな優しい『母親』想い。
知らなかった両親の想いを、今まさに感じて、胸が温かさでいっぱいになって身体の外に溢れ出てしまうように………ロイドは涙を流した。
不意に頭を上げたクラトスと目が合う。
気恥ずかしくなり、思わず目を閉じて左手で涙を拭おうとして思い出す。
左手も拘束されている事を…。
「あっ!」
少しだけ左手を持ち上げてしまったロイドは、それ以上左手を動かさないようにしながら、視線を左手の方へ移す。
そこには、見知ったバイト仲間のルークが居た。
ロイドの手を力いっぱい握りながらも寝コケている様だった。
「どうしてルークが…。」
「お前の傍に居たいと言ってきた。」
「え?………んっ。」
クラトスの言葉に、今度はそちらに顔を向けると、大きな手がロイドの涙を拭った。
その優しい大きな手と、穏やかな笑みに、ロイドは気恥ずかしさなど忘れ、自分も笑みを浮かべていた。
「サンキュ。」
「目を覚ました時にお前が泣いていたら、ソイツも益々心配するだろう。」
「あぁ、ルークって変に心配性だからな。」
しっかりと涙をぬぐってもらったロイドは、もう一度クラトスに礼を述べ、ルークに握りこまれている左手に力を込めながら目を閉じた。
「………。」
クラトスは、ロイドの身体が蒼い光を帯び始めるのを見ていた。
『ルーク。』
ロイドの声が聞こえてきて、ルークは振り返る。
そこには、やはりロイドが居て…お日様みたいに笑って、自分に手を差し出してきた。
『起きろよ。』
ロイドの口は笑みを象ったまま動いていないのに、声は確かに頭に響いてきた。
「……起きたら、ロイドも起きてるよな?」
目の前の手を握りながらルークが訊ねると、ロイドはキョトンとした。
「………だって、お前…何度揺さぶってもピクリともしなかったんだ。」
ルークは、ロイドの手を握る手に力を込める。
「何度呼びかけても、目を開けなかったっ………!」
『……ルーク。』
思い出して、ルークはギュッと目をつぶる。
クラトスによって薬の作用から抜け出したロイドは、ぐったりとしていて、顔も青白くて……細い身体が尚更細く感じられた。
その時の恐怖を、再び思い出して、ルークは眉間にしわを寄せる。
と、頭にポンっと手が置かれる。
『心配掛けて、ごめんな。』
優しい声に、思わず顔を上げると、困ったように笑うロイドが見えた。
『何かたっぷり寝たみたいでさ、今すっごく頭がさっぱりしてるんだ。だからさ、起きて、一緒にクレスの入れてくれるコーヒー飲みに行こうぜ?』
その言葉に思わず笑みを浮かべて、ルークは力強く頷いた。
「…ん~。」
「おはよ、ルーク。」
夢と同じに、ロイドの手を掴んだままの状態にルークは安堵し、身体を起こした。
目の前の、本当に元気そうなロイドを見て、あくびをした後、笑いながら言った。
「んじゃ、クレスのコーヒー飲みに行こうぜ。」
「おう!」
ロイドの元気な返事に、ルークはくすぐったくなって、また笑った。
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またまた久々更新で、ホントすみません(汗)
少し前に、こちらのブログに拍手機能を使えるようになったと知り、更新急ぎたいな~(汗)と思っていたところです。
もっとも、廃れすぎてて、拍手機能は必要ないかもしれませんが……そこは純粋に機能を楽しもうとおもっております(笑)
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