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*『輝き続ける光』の設定です。
今年も…全ての色を飲み込むアレが降る。
寒く感じるのは、冬だからという理由だけなのか。
嫌いなのに見上げたまま動けなくなるのは、何かの呪いか…。
雪降る中、こうして俺が外にいるのには訳がある。
こうゆう日に限って、領主である親父が高熱を出し、その代わりに俺が隣町での会合に行ってきたのだ。
俺はもう大学生だし、いずれは親父の後を継ぐ事になる。
この街の事は気に入っているし、領主という仕事が嫌な訳じゃない。
ただ…そう、ただ―――
『私の自由を奪ったのは、あんたの存在なのよっ!!』
長い綺麗な髪を振り乱しながら、泣き叫ぶ母の姿。
母の目はひどく濁っていて、光がない。
政略結婚を強いられ、俺を生んだ母は、俺がまだ小さい頃に壊れた。
赤ん坊だった妹だけ連れて、大雪の中で息を引き取ったという。
妹は、冷たくなった母の胸の中にしっかりと抱かれていて、一命を取り留めた。
俺を責める口を持った母は死んだ。
けれど…責める口はなくなった訳じゃなかった。
『お兄様はいずれ領主となられて、この街を好きに支配なさるのでしょう?』
まだまだガキのくせに、大人ぶった事を言う妹。
『その際は、私をどうなさるおつもりですの?お父様のように私をこの街に繋ぎ止めておくつもりですか?』
母が妹を連れ出して以来、父は異常に妹に固執し、街から一歩も出れないようにした。
『好きになさればいいですわ。お兄様にとっても、私はどうせお人形にすぎないのでしょう?』
皮肉気に笑う姿は、一心に俺を責めているように見える。
同時に、まだガキの妹にこんな顔をさせている一因が俺にあると思うと、やるせなくなる。
だが…今の俺には妹を解放してやれる力も無いんだ。
「ゼロスーーーーーー!!!」
「うぉっ!?」
いきなり後ろから衝撃が来た。
人の気配に敏感な俺が気付かないとは…相当、この雪にやられていたらしい。
後ろからやってきた衝撃の元は、がっしりと両手を俺の腹に回して、くっついてる。
薄着だった俺の冷えた身体に、じんわりと温もりが伝わってくる。
頭上から降ってくる冷たい結晶も気にならない程、ホッとする。
「ロイド…。」
「こんな遅い時間に、こんな寒い所で何やってるんだよ、ゼロス?風邪ひくぞー!」
底抜けに明るいその声は、いつも通りに感じたけれど、ロイドが自分から俺に抱きついてくるなんて、よっぽどの事がない限りあり得ない。
少し戸惑って振り返ると、俺を見上げているロイドの顔は…心配そうな色を浮かべていた。
「ロイド?…どうか、したのか?」
「………だろ。」
俺の背に顔を埋めたロイドがボソッと何か呟いたが、聞こえない。
訊き返す代わりに、力任せにロイドの拘束から逃れ、向き合ってロイドの細い肩を掴んで顔を覗き込む。
「~~っ!お前がどうかしたんだろっ!!」
顔を近付けている状態での大声だったので、耳がキーンッとなる。
思わず、ロイドの肩から手を離して耳を押さえる。
「ロイドく~ん、もうちょっと俺様の耳を労わってよね~…。」
耳を押さえたまま、目を閉じる。
ロイドの顔を見るのが、怖い…。
追及されたら、俺はどうする?
なんて答えりゃいいんだ?
「っ!?」
が、次の瞬間、俺を襲ったのは、言葉ではなく、温もりだった。
両頬に触れる手は、さっきまで覆っていた手袋をポケットにしまい込んでいた。
「お前、冷え過ぎっ!!ほらっ、行くぞっ!!」
頬から離れた温もりは、俺の腕を掴み、強引に引っ張っていく。
降り続ける雪の中、俺は漸く歩き出す事が出来た。
俺を振り向く事無く歩くロイドはブツブツと寒さに対して文句を言っていた。
次第に歩みが速くなっていくのは、きっとロイドが寒さに震えているからだろう。
現に俺の腕を掴んで離さない手は力強さを失いつつある。
さっきロイドは自らの手袋を外したのだから、手が冷えて当たり前だろう。
けれど…感じる筈のない温かさを感じるのは何故なのか…。
「ロイド、ロイドくーん?」
「なんだよ?」
振り向いたロイドの顔には、ただただ『寒い』と書いてあった。
「ちょーっと、この手、離してくんない?」
「お前がちゃんと歩くならいいけど。」
「うんうん、歩くから。」
そっと俺の腕を解放するロイドに笑いかけると、俺は、自分の手袋を外した。
「ゼロス?」
何をやってるんだ?って顔をしているロイドの冷えてしまった手を握る。
伝わってくる冷たさにまで、ロイドの温もりを感じる気がする俺は、きっともうロイド中毒者だ。
「さて、帰るとしますか。家まで送ってやるよ、ハニー?」
そう言って、今度は俺がロイドの手を引いて先を歩く。
「俺はもう17だ!ガキじゃないんだからな!」
「はいはい、分かってるって。別にロイド君がちっこいから心配して送るんじゃなくて、俺様が送りたいから送るだけ。」
「…うーん、ならいっか。」
嬉しそうに目を輝かせて悪戯っ子のような笑みを浮かべるロイド。
毒気を感じさせないその笑顔が、実はとんでもない中毒症状を起こす事を、きっと本人は気付いていないだろう。
いつの間にか、降り続く雪を気にしないどころか、その存在を忘れてしまっていた。
嫌な記憶も何もかも、ロイドの手のぬくもりに溶け落ちてしまったような気すらする。
きっとこれも、ロイド中毒の症状の一つだ。
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寒くなってきましたので、雪ネタで。
シリーズ的な続きものばかり書いてしまっていますね(汗)
新たに設定を考え出すのは、難しくて…(爆)
何が言いたいのか、上手く書けなかったのですが、ようは、無意識にゼロスを救っているロイド君的なものを書きたかったんです。
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