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*『健やかなる目覚め』の続きです。
「…って事で、コーヒー入れてくれよ、クレス!」
「うん、それは構わないんだけど……。」
いきなり『ファンダム』にやってきたルークは、ロイドの手を引いて元気いっぱいな様子で、クレスは安心した……が。
「えーっと…何人分、入れればいいのかな?」
ロイドの後ろから、見知ったルークにそっくりな少年を始め、見覚えのある赤髪の男が顔を出し、見覚えのない顔も見えてきた。
後何人いるのかとクレスは思わず指をさして数えだしそうな自分を抑えた。
念には念を、という事で、倒れたロイドはファブレ家専属の医師に診てもらい、ルークの屋敷で眠らされていた。
ロイドに続きルークが起きた後、二人はその場に居たクラトスに『クレスのコーヒー飲んでくる。』とだけ告げて、待ちきれないように駆け出し………アッシュに捕まった。
二人が、怒り狂っているアッシュに首をかしげていると、ミトスがやってきて、アッシュの怒りを鎮めてくれた。
が、コーヒーよりもまず話し合いが必要だと真剣な顔でミトスがロイドを諭し、それもそうかとロイドが頷こうとした時、その手を握っていたルークが「だぁーーー!!!」と叫び出ぶ。
『話し合いなんて、コーヒー飲みながらでも出来るっつーのっ!!』
大声でそう主張したルークに引っ張られるままに、ロイドはファブレ邸を出る。
が、気が付けば後ろにはミトス、クラトス、アッシュ、エステルがついてきていた。
「お待ちどう~。」
「サンキュー、ロイドっ!」
テーブル席に座ろうとしたルークは、当然ロイドの隣に座るつもりだった。
が、ニコニコと微笑みながらも「ロイドの隣に座らせてね。」としっかり主張したミトスと、そんなミトスに鋭い視線を送っては、ロイドへ席へと目を動かすクラトスの行動に、…………ルークは自分がハズレクジを引く可能性を消す方法をとった。
よって、皆はカウンター席、ロイドはクレスと並んで皆の正面で、クレスが入れたコーヒーを渡してくれる。
カウンター越しなれど、呼べば正面に来てくれるロイドに、ルークは大満足だった。
ロイドはクレスが言うとおりに、カウンター席に座っている皆にコーヒーを渡していく。
まずは、そわそわしてあからさまに落ち着かない様子だったルークに。
次にニコニコと穏やかに微笑んでいるエステルに。
ジッとこちらを見ていたクラトスに。
楽しそうに、クラトスとこちらを見比べているミトスに。
そして、ルークと同じ顔の作りをした……不機嫌を隠そうともしないアッシュに。
「お前だろ?」
アッシュにコーヒーを渡しながら、ロイドは言った。
座っているアッシュがロイドを見上げる。
「…………。」
「俺には『声』しか聞こえなかったけど……お前には俺が見えてたみたいだった。あれは、お前だろ?」
「…………………。」
ニコニコと微笑みながら訊ねてくるロイドに、アッシュは内心焦っていた。
何も〈こんな〉場所で言わなくてもいいだろう!?と、どなり散らしてやりたいくらいだが、ここにはミトスもエステルも、そしてルークもいる。
アッシュとしては、もっとも宜しくない人物が揃っていた。
「なぁ…―――」
「うるせぇっ!俺は静かにコーヒーが飲みてぇんだよっ!!」
誰よりも大きな声をあげて、そう言ったアッシュに、ロイドは首を傾げる。
怒らせるような事を言っただろうか?と思っていると、『声』が脳内に響いてきた。
―――この場で変な事、言いだすんじゃねぇっ!―――
目の前には、フンっ!と視線をそらしたアッシュ。
脳内に響いてきた『声』は確かにアッシュのもので………。
ロイドは初めてアッシュと話した時と同じように、フッと笑って「素直じゃない奴だな。」と呟いた。
気持ちが悪いくらい色白の男、クヴァルを目の前に意識を失って、母の想いをみて…………それから目を覚ましてルークに触れた時、ロイドはアッシュに声を掛けられた。
『お前は…。…………どうして俺に干渉出来る?』
突然の事に、ロイドは思わずルークの髪に触れていた手を離す。
「…………。」
何も聞こえてこない事を確認してから、もう一度…今度は軽く包む感じでルークの髪に触れる。
『話す気がねぇなら、始めから干渉してくるんじゃねぇよっ!!』
その声は耳から聞こえる訳ではなく、直接頭の中に響いてくる。
ぎゃぁぎゃぁと続く文句に、姿が見える訳でもないのに、ロイドは強い生命力の光を感じる。
「お前は、ちゃんと生きてるんだな。」
『当たり前だっ!…………まだ死ぬ訳にはいかねぇんだよっ…。』
強い力の光が、ロイドの目の前で眠っているルークの傍で揺らめいているように感じた。
『……………………。』
「…そうか、ルークを待ってるんだな。」
凛としている光は、ルークに近付く事を躊躇っている。
けれど、一定の距離を保ったまま、離れない………近付く許しを得られるまで待っているように……ロイドには、そう思えた。
『んなっ!?ふ、ふざけんじゃねぇっ!!!!!そんな訳がねぇだろうがっ!!!!!!!!!!!』
途端、慌てたように言葉を並べる『声』に、ロイドは笑いながら言った。
「素直じゃない奴だな。」
『黙りやがれっ、このガキがっ!!!』
乱暴なその言葉に、ロイドは怒りよりもまず、疑問を持つ。
『声』には、俺の姿が見えてるのだろうか?……と。
そして、アッシュはロイドに教えてくれた。
『特別な力』の事や、眠っている時は勝手にルークに意識が引きずられている事を。
「気が付きゃ、コイツ(ルーク)の中にいた。だから俺はよく知ってるのさ。コイツがどれ程、俺を嫌っているか、な。」
嘲るような響きは、ルークに対してではなく、自分自身に対して言っているように聞こえた。
思わずムッとして、ロイドは言った。
「俺も知ってるぜ?ルークがどれだけ感情表現に苦労してるか、さ。」
「…………どういう意味だ?」
ロイドは、包み込んでいるルークの朱色の毛先を指でクルクルといじりながら呟く様に言った。
「喜びや悲しみとか、単純なのは解ってると思う。…けど、淋しさや戸惑い……絶望とか、そう言ったドロドロしたもんは多分、ルークの中で整理しきれていないんだと思う。」
ルークは時に外見よりも幼い行動やしぐさをし、時にロイドが驚くほど大人な表情をし、難しい言葉をつかう。
そんな時、ロイドはルークの表情を見ることにしている。
彼が見せる大人な表情は、すべて苦しげなものが見え隠れしていて、ロイドにもどういった感情なのか解らない時がある。
ルーク自身が解らないまま、自らの気持ちを持て余しているようにも思えた。
「……………………」
その時、ロイドはルークの兄については何も知らなかった。
けれど、ルークに気付かれずに傍に居れる事・ルークに害を及ぼす気がない事は明らかで、きっと何か繋がりがある奴なのだろうと思った。
「そう、アッシュは全然素直じゃないよ。メールとかだと落ち着いてる感じなのに、実際テレパスしてみるとギャンギャン騒ぐしね。」
「そうですね。アッシュはとっても元気いっぱいです。」
ロイドの呟きを拾い上げ、ミトスは少しからかう様に言い始める。
それに何度も頷きながら、自分の意見を言うエステルは無邪気な笑顔だ。
そこでまたアッシュが怒鳴り始め、クレスの素早い判断により、ロイドは[貸し切り]の札を看板に重ねに行った。
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今回は、以前書いたものの謎な部分を明らかにしただけで終わってしまいました…。
『解き放たれた力』、ですね。
ロイドが独りでしゃべり続けるところがあったのですが、そこです。
アッシュと話していたんですよ、ということで(汗)
閲覧してくださっている皆様、拍手を始め、コメント、本当にありがとうございます。
とても励みになっています!
今回は全然、親子話に触れられなくて申し訳ないです(__;)
また次回に!!
色々なサイト様をまわっていて、気が付くと他のキャラともロイドを仲良しにさせたくなりますw
収集がつかなくならないよう、そこは区切りをつけていきたいと思います!ということで、また別のお話もイメージ中です。
読んでくださり、ありがとうございます。
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