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*『閉ざされていた過去』の続きです。
―――怖い…怖いの………。
あの人が血にまみれていって……なのに私は……
何も、何も……―――
その声は、俺の恐怖を増幅させるもの。
見た事も無い、室内に居る。
その風景と俺との間を繋いでいる人物の心は恐怖で乱れている。
死ぬかもしれない、という恐怖ではなく、それは…『あの人』を失うかもしれないという恐怖。
気味が悪い位、色白の細い男が笑みを浮かべている。
…お、れは……知ってる……
―――思い出さなくていいのよ、ロイド―――
でもっ、知ってなくちゃいけない事のような気がするんだ…
―――…ロイド。
あなたには…同じ気持ちを味あわせたくないの………あんな、あんな思いはっ―――
終始、悲しげな声は近くで囁き続けてくる。
俺の歩みを止めようとしているが、俺は止まる事が出来ない。
このままじゃいけない…自分の心が、そういっているから…。
―――あの人を失ったら、どうすればいいの…怖い………―――
目の前に広がる紅。
大切な大切な『あの人』が血を流している。
恐怖に、悲しみに…支配、される…。
…違う。
これは俺の心じゃない。
この光景を、この視線で見ているのは、俺じゃない……!!
―――ロイド…―――
………あぁ、そうか。
かあさん、だったんだな………ずっと、俺の中に居たんだな……。
何の前触れもなく、ロイドはパチリと目を開いた。
目の前にあるのは、今まで観ていたものとは違う紅。
橙に近い、明るい紅…ルークの髪。
「ルー、ク?」
「…………。」
ルークはロイドの頭の横に両手を置き、その上に頭を乗せて寝ていた。
ロイドは、そっとルークの髪に手を伸ばし、チョンッと触る。
ルークの髪に触れた自分の手をしばし見つめ、眉を寄せる。
―――声が、聞こえたからだ。
そして、今度は前髪を一房だけ、やわらかく握る。
ロイドはゆっくりと瞳を閉じ、『その人物』と話を始めた。
「お前は、ちゃんと生きてるんだな。…そうか、ルークを待ってるんだな。」
ロイドは横になったまま、話を続ける。
「素直じゃない奴だな。」
暫くして、ルークは目を覚ました。
ロイドが起きた事に驚き、安堵して、強くロイドを抱きしめた。
「ごめんな、ロイド。ごめん…っ!」
何度も何度も謝り、その度に抱きしめてくる力を強めるルークの背に、ロイドは腕を回した。
ポンポンと、ルークの背を軽く叩く。
「ルーク。ルークが俺に謝る必要なんてない。」
罪悪感に苛まれ、悪夢に脅える幼子のようなルークを安心させるように、ロイドは穏やかに微笑んだ。
自分よりも筋肉の付いた、逞しい背をポンポンと軽く叩く。
「俺こそ、心配かけてごめんな。もう大丈夫だから…。」
言葉では伝えきれない部分を補う様に…ロイドはルークが落ち着くまで、ずっとそうしていた。
「なぁ、ルーク。…ルークは特別な力って、あると思うか?」
ルークが落ち着いて、暫くしてから、ロイドがポツリと言う。
ロイドの真っ直ぐな視線を受け、ルークは小さいながらも返事をした。
「俺は…ある、と思う。」
ルークは、ロイドを見つめ返しながら続ける。
まるでロイドに暗示をかけられているかのように、思っている事がすらすらと口から出てしまう。
「ロイドと逢った時、感じた…。ずっと殴られ続けて、感覚なくなってきてたけど、雨の一粒一粒が冷たかった。でも、ロイドの手はあったかかった。握ってるだけなのに、何か守られてるみたいに安心できた。」
ルークの言葉に、ロイドはパチパチと数回、目を見開く。
思わぬ言葉だったからだ。
そして同時に、あの時のルークを思い出し、ロイドは眉を寄せる。
ルークは、手を伸ばし、ギューっとロイドを抱きしめた。
ロイドは、ルークの逞しい背に手を回す。
ルークは、ロイドに話さなければいけない事が沢山あった。
けれど、何故かこうして抱きしめ合っていれば、言葉なんて使う必要がないような気がしていた。
そうしてロイドをギューっと抱きしめていると、ルークはふと気が付く。
目の前に、腕の中にとらえているロイドが、自分の中に居るような感覚。
不思議な感覚に戸惑うも、嫌悪感は微塵もない。
まるで取り込むみたいに、もっと強く抱きしめた。
『ルーク。』
その時、ルークは確かに耳ではなく、身体の中から…心でロイドの声をきいた。
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お父さんが出せなかった…。
クラトスパパは次こそ出る予定です!(汗)
アンナママのストーカーはただのストーカーではなく、ママの『力』に関心があった訳です。
ロイドがルークに触れ、話をしていた相手は彼です(笑)
話していた内容については、また書いてみたいと思っています。
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