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*『解き放たれた力』の続きです。
「…クラトスの子供って、ロイドの事だったんだね。」
突然のミトスの言葉に、クラトスは驚いたが、そう言ったミトスの方も、驚いているのが窺えた。
マーテルの弟であるミトスは、時折クラトス達『ツーハーツ』の作詞作曲を担当していた。
まだ幼い、少年であるにも関わらず、ミトスには優れた音楽の才能があった。
だが、少し特殊な力を持っている事が原因で、彼は学校には通っていない。
だから友達もいなかった彼だが、最近友達が出来、家に連れてきたとマーテルが言っていた。
嬉しそうに話すマーテルに、クラトスもユアンも思わず笑みを浮かべたものだったが…。
そんな、引きこもりがちであったミトスが、マーテルに連れられて控室に入って来た途端、クラトスを…正確にはクラトスのそばに”いる”ものを見つめ、呟いた。
「ロイドを…知っているのか、ミトス?」
「あ、うん。友達…に、なったんだ。」
クラトスの問いに、珍しく照れたように答えるミトス。
「まぁ。もしかして、この間、遊びに来た子が?」
「ううん。違うよ、姉さま。あれはジーニアス。ロイドとジーニアスは幼馴染なんだ。って、今はそんな事じゃなくて…。」
スイッとミトスが右手を上げ、クラトスの後方を指差した。
その動作に、クラトスは怪訝な顔をする。
「女性が、今、クラトスの守護にまわった。彼女は言ってる、ロイドを守るには自分は役不足だったと。」
突然のミトスの言葉に、クラトスは目を見開く。
「…それは、どうゆう事だ、ミトス?」
「その人が教えてくれた。僕の知ってるロイドはクラトスと自分の息子だって。」
「っ!?アンナが…アンナがいるのか!?」
思わず声を荒立て、後ろを振り返るクラトス。
だが、彼の目には後ろに立っているユアンしか見えない。
「その人の心は……もうすぐ”ここ”から消える。」
「っ!」
クラトスは、ミトスの特殊な力について、以前から知っていた。
相談にのった事もあった。
だから、ミトスの言葉に戸惑う。
「アンナは消えてしまうというのか!?」
「…………そう、心は消え去る。でも、想いは…その人の想いは、きっとこれからずっとクラトスを守護する。」
「…………っ。」
逝ったよ………と、静かに呟くミトスの言葉に、クラトスは強く目を閉じ、妻の冥福を祈った。
「ねぇ、クラトス。僕、ロイドに会いに行こうと思うんだけど、クラトスも一緒に…。」
「…………。」
言葉を続けようとするミトスに、クラトスは力なく首を横に振る。
「私は…ロイドに何もしてやれなかった。」
「「…………。」」
沈んだクラトスの言葉に、ユアンとマーテルは黙り込む。
が、ミトスは違った。
「…ロイドってね、凄く成績が悪いんだって。」
「は?」
突然のミトスの言葉に、沈黙を守っていたユアンが思わずといった感じに声を出す。
クラトスはミトスに視線を向ける。
「勉強が大っ嫌いで、授業中に居眠りはするし、飽きっぽい。」
「…………。」
ミトスの真意が解らないクラトスは、耳を傾けるしかない。
そんなクラトスに、ミトスは悪戯っぽく微笑みながら続ける。
「なのに、興味がある事には熱心に取り組むし、諦めない。…ロイドはとっても真っ直ぐなんだ。自分を卑下する事も、誰かを恨む事も、しない。」
「…………。」
ロイドは、『父親』を恨んだり自分の境遇を嘆く人間ではないと、ミトスは暗に伝えている。
…だが、クラトスはまだ踏ん切りがつけられずにいる。
ミトスはわざとらしく大きくため息をつき、真剣な目でクラトスを見据えた。
「さっき、言ったよね。『ロイドを守るには自分は役不足だった』と、彼女は言っていたって。」
「っ!」
ハッとクラトスが目を見開く。
「ロイドは今、危険に立たされているって事だよ。」
ミトスの言葉が、静かなその場に大きく響いた。
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ミトスがロイドと友達になってる設定でこれを書いていたのですが、ミトスとロイドが知り合った経緯を書こうとして、挫折していました……………。
どうしても中途半端にはしたくなくて、悩んでいたのですが、上手くまとめられなかったので、結局削ってしまいました。
パパンサイドを書けて、ちょっとだけ満足です(汗)
これからは、またサクサクと更新していきたいと思っていますので、よろしくお願い致します。
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