[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
*『おかしな三者面談』の続きです。
「コンサートのチケットをもらっちゃったなら、ちゃんと行かないとダメだよ、ロイド!」
ニッコリと笑って言うコレットに、ロイドは唸る。
「でもなぁ~…。親父に訊いても、そんな奴知らないって言うし…。」
先日、親父の親友と名乗るあやしい奴にもらった(強引に渡された)チケットについてコレットに相談してみると、コレットは上記のように述べたのだった。
「でも、コンサートのチケットって高いし、無償でくれたって事は、絶対悪い人じゃないよっ!」
変に説得力のある言葉に、ロイドは思わず「そうかもな…。」と、返してしまった。
ここに常識人であるジーニアスが居なかった事は幸いなのか災い元なのか…。
一方こちらでは…。
「チャンスじゃないか、ルークっ!」
相談してきたルークに、ガイは嬉しそうに声をあげた。
「何がチャンスなんだよ、ガイ?そいつはロイドをさらったんだぞ?そんな奴が寄越したチケットなんて…。」
目の前でロイドが車に押し込められ、何も出来なかった自分を思い出して、ルークは顔を歪めた。
「だからこそ、だろ!」
ウインクしてガイは続ける。
「もし、そのコンサートに行かなかった事がバレたら、ロイドって奴は今後もつけ狙われる可能性があるだろう?だから、お前は一緒にコンサートに行って、ロイドを守ってやればいいんだよ!そうすれば、デートができる上にお前はロイドを守れる!一石二鳥じゃないか!!」
「そっ、そっか!!サンキュー、ガイっ!!」
ガイの言葉を受けて、ルークは突然、喜びを全面に出した。
こうして、ロイドとルークはそろって、青い長髪男の誘いのままに、コンサートへとやって来たのだった。
「なぁ、ロイド…。」
「あぁ…。」
ロイドとルークはコンサート会場に入り、でかでかと貼られているポスターを見つめていた。
そこには、まぎれもなく以前ロイドをさらった青髪の男が笑顔で写っている。
おまけにそのポスターの下には『ツーハーツ』と書いてあるのだから…二人はここにきて、今更のように、彼がこのコンサートの主役のツーハーツの一人である事を知った。
コンサートが始まり、賑わいだす会場内、ロイドとルークはステージが良く見える席にいた。
*ユアンが渡したのは当然のごとく眺めの良い指定席のチケットである。
始めは、ユアンの方を嫌々ながらも観ていたロイドだったが、気が付くと、自然と視線が横に反れていた。
そう、青髪ユアンの横で歌う赤髪の男へと…。
ロック系の曲が終わったと思った次の瞬間、続けて流れ出したのは、穏やかな曲だった。
ボーカルのメインが赤髪の男になる。
ロイドは視線が反らせなくなっていた。
何かが…あの男の何かが胸に引っかかる。
―――なんで、あんなに哀しそうに歌ってるんだ…?
なんか…………―――
「ロイド?ロイド!どうしたんだよ!?」
肩を揺さぶられている事に気が付くと、目の前には心配げに自分を見つめるルークが居た。
「ル、ーク…。」
「気分でも悪くなったのか?」
思いっきり動揺しているルークに、逆にロイドは落ち着いてくる。
先程まで胸の中につっかえていたものが、薄れていく気がする。
「大丈夫だよ。そうじゃなくて…さ。」
ロイドはルークに笑いかけ…視線をステージの赤髪の男へと向ける。
「なんで、アイツはあんなに哀しそうに歌うのかなって思ってさ…。」
「かなし、そう…?」
赤髪の男から目をそらさないロイドの言葉と視線に、ルークは不安を感じる。
「ロイドは…あいつがす、好きなのかっ!?」
思わず突拍子もない事を口にしてから、早速ルークは自分の口を恨んだ。
が、返って来た返事は特にルークの言葉を気にしたふうもないものだった。
「へ?んな訳ないだろう。」
爽快に笑うロイドに、ホッとするルーク。
ロイドはルークの顔を見ると、笑いながら言った。
「なんか、気になっただけなんだ。それだけだよ。」
「そっか…。」
「うーん、曲が悲し気って訳でもないのになんでだろうなぁ~…。」
悩み込むロイドに、ルークが言う。
「俺には、悲しそうってよりは、冷たく感じるな。」
「そうか?」
「なんつーか…上手いけど、心ここにあらずって感じ?」
ルークの言葉を聞いて、ロイドはフム…と考える。
ルークの言っている事も、解る。
けれども、ロイドが感じてしまうのは、何故か悲しみで…。
結局、その一曲が終わるまで、ロイドは彼の歌声からは悲しみしか感じ取れなかった。
「お疲れ様です。」
「あぁ。」
無事に終わったコンサート。
舞台裏ではクラトスとユアンが休んでいた。
そこに、いつものように、コンサート後に回収された、コンサートの感想アンケート用紙をまとめて、係りの人間が来た。
いつもならば、マーテルかボータが受け取るのだが、今その二人はいない為、近くに居たクラトスがそのアンケート用紙を受け取ろうと手を伸ばす。
「?そちらの用紙は違うのか?」
何故かアンケートを持っていた係りは、左手を後ろに回している。
その手には明らかに紙があって。
「あっ、いえ…。これは、ちょっと今急いで持ってきてしまって…。」
しどろもどろになりながら答える係りの眼は落ち着きがない。
「なんだ?アンケートの紙なら、全て見せろ。」
ユアンは立ち上がり、係りの青年から紙を取り上げた。
それは二枚のアンケート用紙。
隣で読み始めるユアンにため息をつきつつ、クラトスは椅子へと座り込む。
「フッ、クラトス。お前にだ。」
「…なんだ?」
そのうちの一枚だけをクラトスへと投げるユアン。
クラトスはひらひらと舞ってきた紙を掴み、目を向け…そして、驚きに目を見開いた。
『赤髪の人、何か歌い方が悲しそうに聴こえた。
せっかくいい声なんだから、楽しく歌えよ。
ロイド・I』
驚きのあまり、声も出ないクラトスに視線を向けながらも、ユアンはもう一枚を握りしめて、しわしわにしていた。
『おい、この誘拐やろうっ!
歌手だか何だかしらねぇけどな、ロイドは俺が守るからなっ!
今度ロイドに何かしたら、絶対にゆるさねぇからな!!
ルーク・フォン・ファブレ』
「ロイドが…来ていたのか……?」
呆然と、紙を見つめるクラトスには、非難(文句?)に近いアンケート用紙を抜きぬれなかった事を謝る係りの青年の声など、全く届いてはいなかった…。
**********************
ちょっと、コンサートを飛ばしてしまいました(汗)
今回書きたかったのは、例え人気があっても、歌が上手くても、そんなパパの歌声はロイドにとっては悲しみを歌っているようにしか聴こえないという事です。
**********************
「おっはよー、ルーク!…あれ、どうしたんだ?」
「ロ、ロイドっ!お、おはよー!」
突然ルークの背後から声をかけたのは、朝から元気なロイドだ。
振り向いて、相手がロイドだと分かった途端、緊張したルークが大きな声で返事をした。
そんなルークに活気に笑いかけるロイドは、ふと視線をルークの机の上に落とす。
「んで、何か困ってたみたいだけど。どうかしたのか?」
「あっ…いや……。」
言葉を濁すルークは、無意識に両手を机の上の複数の小さな長方形の紙袋の上へと落とした。
「…………。」
ルークがあまりにも沈黙を守っているので、ロイドは訊いてはいけない事だったかと、漸く理解する。
「あっ、ご、ごめんな!誰だって、触れられたくない事ってあるよな!ホントごめん!!」
慌てて離れたロイドの申し訳なさそうな顔を見て、ルークはロイド以上に慌てだした。
「ちっ、違うんだ!そうじゃなくて…あっ、だから待てって、ロイドっ!!」
180度回転して立ち去ろうとしたロイドの腕を力任せに引っ張ると、ロイドの細い身体が呆気なく傾いて…。
「…っぅわぁ!?」
「ロイっ、ぐはぁっ!」
結果…ロイドは引っ張られるままにルークの方へ倒れ込み、それを支えそこなった(椅子に座っていたのだから当たり前ではある)ルークごと、2人は床に重なって倒れ込んだ。
「あーぁ、何やってるんだよ、お前らは?」
「いててっ…あ、ガイ、おはよー。」
「おう、おはよ、ロイド。で、ルーク?…大丈夫か?」
ロイドの下敷きとなったルークは顔を真っ赤にして硬直している。
自分が重しになっていた事に気付いたロイドは直ぐにルークの上からどいて、ルークに手を差し出す。
「わ、わりーな、ロイド。」
「俺こそごめんな。」
ロイドの手を借りて立ち上がったルークの顔は相変わらず赤い。
そんなルークの様子に全く気付いていないロイド。
そして、そんな2人を見守っていたガイは、次の瞬間、先程までルークが机の上に置いていた複数の小さな紙袋の1つを拾い上げる。
「あれ、これって…。」
「あー!ガ、ガイッ!!」
紙袋をじーっと見つめるガイから、それを取り返すと、ルークは慌ててポケットにしまい込んだ。
床に散らばった他の紙袋も回収してポケットに押し込める。
「ほら、これも。」
全て回収したと思った矢先、ロイドから紙袋を渡され、急いで受け取るルーク。
「お前、何をそんなに慌ててるんだよ?別に隠すものじゃないだろう?」
学校に持って来るものでもないけど、と続けるガイに、ルークは嫌そうな顔を向ける。
「?ガイは袋の中身、知ってるのか?」
苦笑するガイに、ロイドが控え目に訊ねる。
「え?…あぁ、そうか。一般的に使われてる訳じゃないもんな。あの袋にはお年玉が入ってるんだよ。」
「おとしだま?…小さなボールが入ってるのか?」
「ははっ、違う違う。お年玉っていうのは、お小遣いの事だ。」
お年玉という言葉に疑問符を浮かべるロイドに、ガイが説明を始める。
「年が明けてめでたいって事で、大人たちがルークみたいなお坊ちゃんに、お小遣いをやる行事みたいなものがあるんだよ。」
「へぇ~、貴族の家って、太っ腹なんだな~。」
悪意のない、感心したような声で言うロイドに、ルークは複雑そうな顔をしている。
「嬉しくないのか、ルーク?」
すぐにルークの様子に気付き、ロイドが訊ねる。
「そーゆー訳じゃねぇんだけどさ…。なんつーか、俺ももう17だし、いつまでもガキ扱いされんのが、なんか…。」
言葉を濁すルークに、ガイは苦笑する。
「お前を可愛いと思ってこそのお年玉だろ?素直に喜べよ。」
「…………。」
ルークは顔を俯かせた。
もうルークも17歳。
この世界(勝手な設定です)では、立派な成人の歳である。
この歳で、可愛いだのなんだの言われるのは、正直嫌だったのである。
「なぁ、ルーク。大人たちがくれるお小遣いって、どうやって生まれてるか知ってるか?」
不意に、ロイドがルークに声を描ける。
「小遣いの生まれ…?」
妙な言葉にルークが、思わず顔を上げる。
そこには微笑みながらも、ちょっと真剣な顔のロイド。
ロイドは続ける。
「大人はさ、自分たちで稼いだお金でお小遣いを作ってるんだぜ?」
ロイドの言葉に、ルークもガイも目を見開いた。
「ガキ扱いされるのも学生のうちだって。働き始めたらさ、今度は俺達がお小遣いを作るようになるんだぞ。そんで、今までガキ扱いしてくれた大人たちへ復讐!な?」
「ふっ、復讐!?」
不穏な言葉にさぁーっと顔を青くするガイに、ロイドは慌てて首を横に振る。
「違うって!復讐ってのは、今度は大人たちを俺達が甘やかすって事!!」
「甘やかす…。」
ロイドの言葉の一部を小さく復唱するルークは、思考顔だ。
「ガキ扱いしてくれた礼と、可愛がってくれたお返しって事だよ。」
ニコリと爽快に微笑むロイドに、ルークは心のもやもやが消え去るのを感じた。
「そっか…。そうだよ、な…。」
納得したように、ルークが声を出す。
「そう考えると、先が楽しみだろ?」
いたずらっ子のように目を輝かせるロイドに、ルークも満面の笑みを浮かべて頷いた。
「あぁっ!」
気が付けば、元気になって、ロイドと一緒にはしゃぐルークに、ガイは微笑んだ。
ネガティブ思考になりがちな自分たち(ルークを筆頭に)に、ロイドはいつも思いもつかない発想を聞かせてくれる。
そしてそれはいつも心を温かくしてくれて、ネガティブだった思考を散布させる。
(ロイドは本当に…大物だよな。)
こっそりと2人から視線を反らし、ガイは、廊下へと出る。
廊下の少し先には赤の長髪の男が2人、揃って歩いている。
「だから言ったでしょうよ?お前の心配なんて杞憂だって。」
1人が引っ張られながら歩いている。
引っ張っている方の赤髪の男は、そのまま歩き続ける。
「うるせぇっ!俺はあいつの心配なんてしてねぇっ!!」
「はいはい…。って、俺様を引っ張るのやめてくんない~?ロイド君に会いに来たのにさ~。」
「…今はやめとけ…。」
そんな声が、ガイの耳に届いてくる。
思わず吹き出すガイ。
引っ張られているのはゼロスで、苛々しながらもゼロスを引っ張っているのはアッシュだった。
「兄貴分も苦労する、かな?」
ガイの独り言は、チャイムの音に消された。
**********************
お正月という事で、お年玉ネタです。
皆様、明けましておめでとうございます!
皆様にとって良い一年になりますよう、お祈りしております。
ルークとロイドは同じクラス。
ガイとゼロスとアッシュに関しては…深くは考えていません(爆)
**********************