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『テイルズオブシンフォニア』のロイド受けで小説を書いていきたいと思います。 今、はまっているのは、ルクロイとゼロロイです。 コメントなど頂けると、励みになります!!
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飛翔
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こんにちは。
かなり遅れて『シンフォニア』を知り、ロイド君が大好きになった飛翔と申します。
同士の方は、是非よろしくお願いします!
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輝く存在

*『再会は偶然の闇の中で』の続きです。




「彼の名は、ロイド・アーヴィング。現在は17歳…と書類上ではなっているけれど、孤児だった為に、正確な生年月日は不明となっているわ。」
「孤児…だった、とは?」
「えぇ…。幼い頃に、引き取られているわ。」
「…アーヴィングという姓は、引き取った家のものか?」
「いえ、違うわね。」
「…そうか。」
マーテルから顔を窓の方へと移し、空を見上げるクラトス。
窓の外は、雪がちらついていた。





年末コンサートの後、ロイドという少年と会って以来、少しばかり様子が変わったクラトス。
ロイドという名が、彼の息子の名と同じであった事を知っているユアンは、何度もクラトスに言った。
「生き別れた息子かどうか確かめろ!」と。
けれど、クラトスは首を縦にふる事はなく…。


結果、ユアンは勝手に、ロイドという少年を探させた。
(全てマネージャーであるボータ任せ)
手掛かりは少なかったが、有能なボータは、様々な方法を使い、少年を見つけ出し、個人情報を調べ出した。
そして、その情報をクラトスに押し付けようとし、拒否され…結局、マーテルから穏やかな状況を生み出してもらい、伝えてもらう事にした。
やはり気になっていたクラトスは、マーテルの言葉を素直に聞き入れていた。
大方の情報を伝え終えたマーテルの横で、ユアンは視線をクラトスへと向けるが、彼の視線はずっと窓の外へと向けられていた。



『孤児』と、呼ばれた過去を持つ者の正確な個人情報は、皆無に等しい。
マーテルが読み上げた情報だけでは、ロイドという少年が、クラトスの死に別れたと思われていた息子かどうか、ユアンにもマーテルにも分からない。


視線を外から動かさないクラトスに、二人は、クラトスにも判断がつかないのだろうと思う。




だが、クラトスの思考は二人の思うところとは全く違っていた。
クラトスは覚えている。
いや、忘れる事などありえないだろう。
彼が唯一、愛した女性の姓―――アーヴィング―――という言葉を。



孤児だったというのに、引き取り先の家の名字とは違う姓を持っている少年。
クラトスは、限りない程、遠かった希望の…可能性の光が近付いているのを感じる。
急く心を、必死に押しとどめる。
あくまでも、可能性は可能性…間違いないと言えるほどの証拠はまだないのだから………。










「ロイドー!」
遠くから自分を呼ぶ声が聞こえて、ロイドは振り返る。
「お、ルーク!」
そこには、こちらへと駆けてくるルーク…友達の姿があって、ロイドは足を止める。
「あ、あのさっ!一緒に、帰らないか…?」
駆けてきたせいか、少々顔が赤くなり、どもるルークの言葉に、ロイドは笑う。
「あぁ、今クレスに鍵渡してきたトコだから、帰ろうぜ。」
快く返事をするロイドにホッとして、ルークも笑った。


ロイドとルークは、アルバイト先から出て、帰路についた。
二人は学校も違えば、育った環境も何もかもが違った。
だが、アルバイト先で出会った二人は、同い年という事もあり、すぐに打ち解けた。
ルークは、人付き合いが苦手な方だったが、ロイドとはすぐに仲良くなれた。
自分とは全く違う考え方を持ち、常に真直ぐに前を向いて歩くロイドに、ルークは惹かれたのだ。
お坊ちゃま育ちで、少し常識が抜け落ちているルークが必死にアルバイトを頑張っている姿を目にし、ロイドもルークには好感を持っていた。
ちなみにクレスというのは、二人のアルバイトの先輩だ。


「あー、もうすぐ新学期だな~。」
「そう、だな。学校が始まったら、バイトもこんなに出来ないよな…。」
何気ないロイドの一言に、ルークはボソリと呟いて、一人落ち込む。
「ルークも冬休みの宿題終わってないのか!?同じだな!」
何処か嬉しそうに微笑みを浮かべるロイドに、ルークは苦笑しながら「そうじゃないけど…」とだけ返す。
「ジーニアスに訊くのも無理だしな~。」
時々出る、ロイドの幼馴染の名前に、ルークは笑う。
「例の中学時代の先生が、居るからか?」
「そうそう!はぁ~、リフィル先生、なんであんなに勉強ばっかさせるかなぁ~。」
いつもの愚痴を口にするロイドに、ルークは、とっさに思い浮かんだ事を、そのまま口にする。
「あ、ならさ!俺が教えるぜ?………あっ。」
口にしてしまった後に、慌てるルーク。
別にやましい気持ちがあった訳でもないのに、意味もなく頭の中が真っ白になる。
拒絶されたらどうしようかと、またネガティブな方へと向かっていくルークの思考を、ロイドの一言が打ち消した。
「いいのかっ!?サンキュー!!!」
「えっ…。」
「助かるぜっ!」
満面の笑みを浮かべるロイドに…しばし固まったルークは、照れくさくて頭をかいた。
ロイドの存在自体が光なのだと、ルークは今日も思う。


明日、バイトの前に、ロイドの宿題をルークが見る約束をしていた時だった。
突然、歩く二人の前に黒い高級車が止まる。
特に気にするでもなく、二人は車の横を通り過ぎようとしたが、次の瞬間、開いた車のドアから伸びて来た手に、ロイドは腕をつかまれる。
「っ!?」
「っ、ロイドっ!!!」
ルークがロイドに手を伸ばすも、ロイドは瞬く間に車へと引きずり込まれ、車は走り始める。
「ロイドーーー!!!!」
ルークは、車を追いかけるが、車はどんどん速度を上げ、ロイドを引きずり込んだドアは閉められる。
車との距離が開いても、とにかくルークは車を追いかけ続けた。




**********************
親子話とカテゴリーを区切りながらも、ルクロイちっくになりそうです(汗)
ルクロイで、親子話。…という感じになるかと思います。

続きますっ!
**********************

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おかしな三者面談

*『輝く存在』の続きです。



「そうか、お前がロイドか。」
「何が『そうか。』だよっ!?ふざけんなっ!!」
目の前で偉そうに、そう呟く長髪の男に、ロイドは怒り心頭だった。


それも仕方がないだろう。
突然ルークと歩いている時に、車にて拉致されたロイド。
暴れに暴れて、自分を車へと押し込んだ大柄の男を気絶させたまでは良かった。
(振り回した腕が、男の首へと深く入った。)
が、男を気絶させたと同時に、車は止まり、そうかと思えば、自動でドアが開き…今、目の前に居る青い髪の男が立っていたのだった。
たどり着いた先は、見慣れない場所で…。
気がつけば、ロイドの両脇には他の男が立ち、がっちりとロイドを拘束した。
(ちなみに左側に立った男は、先程、気絶させた男だった。)


「はーなーせーよーーっ!!!」
大柄の男二人に拘束されてしまえば、逃れるのは難しい。
それでも、抵抗は止めないロイド。
先程のようにぶったおしてやろうと考えていた。


そんなロイドの正面に立つ、青髪・長髪男は、上から下までじっくりとロイドを眺め続ける。
「俺になんの用だよっ!?」
とりあえず、目の前の男を睨みあげて怒鳴るロイド。
すると、青髪の男は、漸く満足(納得?)がいったのか、ロイドの顔に視線を向け、口を開いた。
「お前の父親の親友だ。」
「はぁっ!?」
男の言葉に、ロイドは隠すことなく、疑惑の目を向ける。
が、男は何も言わない。


「~っ!あんたが親父の親友だとしてっ!俺に一体なんの用だよっ!?」
とりあえず、話を進めようとロイドは納得しないまま、けれど許容して話を進める事を試みる。


一方、青髪・長髪の男…ユアンは、ロイドが実父と養父の取り違いをしてしまっている事に気付きながらも、あえて指摘はしない。
(ちなみに、自称『親友』である。)




「ロイドっ!!!」
ロイドがジタバタと暴れる音だけが響いていた場に、一つの声が聞こえてきた。
「っ、ルーク!」
ロイドの名を呼んだのは、ずっと車を追いかけてきていたルークだった。
結構な距離だったのにも関わらず、ルークは決して足を止めなかった…否、止められなかった。
突然、目の前から奪われた光を、失いたくなかったのだ…。


多少、息が切れていたルークだったが、拘束されているロイドを見、すぐに男たちに飛びかかる。
お坊ちゃんではあるが、危険もある為にある程度の護身術を身に付けているルークは、すぐにロイドの右腕を拘束していた男を蹴り倒す。
右手が自由になった瞬間、ロイドは体をひねり、右手で拳を作り、左腕を拘束する男の腹へと打つ。
体格の良い男は、倒れはしないものの、腹を押さえて背を丸くした。


「大丈夫か、ロイドっ!?」
ルークはロイドの両肩に手を置き、ロイドの身を案じた。
「あぁ、ルークのおかげだよ、サンキューな!」
ルークにお礼を述べながら、ロイドは気付く。
自分の返事を聞いて、安堵の笑みを浮かべたルークの顔が汗で光っている事に…。
自分の為に必死に追いかけてきてくれたのかと思うと、申し訳ないと思う反面、嬉しくて…照れくさく感じるロイドだった。


「…私を無視するな。」
「「っ!」」
そんな二人を見守っていたユアンが、口を開く。
瞬間的に、ルークを庇うように前へ出ようとしたロイドだったが、それはルークも同じだったようで、肩がぶつかる。
「ロイド!」
が、ルークに力で押し戻され、ロイドはルークに守られるように、彼の後ろで手を握り込まれる。
ずっと走ってきて、汗だくのルークの手は、冷たくて…何故か抗えなくなる。


「ふむ。貴様にも良い友がいるようだ。ならば…。」
ポイッと、ユアンがルークたちに何かを放り投げる。
反射的に、それをキャッチしてしまうルーク。
投げられたものは、チケットだった。



『ツーハーツ 新年コンサート!』と大きく書かれているチケットを眺めるルークとロイド。
「「??」」
そんな二人を満足そうに眺め、ユアンは偉そうに笑みを浮かべて言った。
「二人で来い。待っているぞ。」

気がつけば、ルークとロイドが倒した男たちはユアンの横に真直ぐに立っていて…ユアン達は車に乗って去っていった…。




「なぁ、ルーク。これって…なんだ?」
そもそも『コンサートのチケット』を知らないロイド。
「コンサートのチケット、だな。それにしても…『ツーハーツ』。確かクラスの女子が騒いでたような…。」
名前は聞いた事があるも、全く興味がないルーク。
そんな二人には、先程去ったユアンが実はかなり名の売れている歌手グループなのだと知るよしもなかった。




**********************
親子カテゴリーなのに、パパを出せなかったです(泣)
ユアンの優秀な部下である彼の名前を間違っていました、すみません!
ボーダではなく、ボータだったのですね(汗)
名前を出せなかったのですが、ロイドを拉致った大柄の男はボータさんです。
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第四回キャラクターランキング!

すみません!
こちらでは、感想などは書くつもりはなかったのですが、あまりにも嬉しかったので、ちょっと書いてしまいます!


テイルズチャンネルでの第四回キャラクター人気ランキング!
皆様、もうご覧になったでしょうか?
我らがロイド君がっ!!!
パパとゼロス様を追い抜いて第四位ですよっ!!
私の目の錯覚じゃないですよね!?
投票して良かったですっ!!!
あぁ、ロイド君頑張ったね!!!!

これは、関智さん…ふり〇んになってロイド君(小西さん)に謝らねばっ!!
でも、本気で嬉しいです!!
ルークに続いてロイド!!
良かったです、本当にうれしいです!!!
出来ればロイドと出会った時の短髪バージョンのルークが良かったですが(苦笑)


と、これだけ書きたかったんです(^^;)
とにかく、シンフォキャラも未だにしっかり人気があって、とっても嬉しかったです☆
これからも、シンフォニアを心より応援していますーー!!

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悲しい歌声

*『おかしな三者面談』の続きです。

 

「コンサートのチケットをもらっちゃったなら、ちゃんと行かないとダメだよ、ロイド!」
ニッコリと笑って言うコレットに、ロイドは唸る。
「でもなぁ~…。親父に訊いても、そんな奴知らないって言うし…。」
先日、親父の親友と名乗るあやしい奴にもらった(強引に渡された)チケットについてコレットに相談してみると、コレットは上記のように述べたのだった。
「でも、コンサートのチケットって高いし、無償でくれたって事は、絶対悪い人じゃないよっ!」
変に説得力のある言葉に、ロイドは思わず「そうかもな…。」と、返してしまった。
ここに常識人であるジーニアスが居なかった事は幸いなのか災い元なのか…。

 

一方こちらでは…。
「チャンスじゃないか、ルークっ!」
相談してきたルークに、ガイは嬉しそうに声をあげた。
「何がチャンスなんだよ、ガイ?そいつはロイドをさらったんだぞ?そんな奴が寄越したチケットなんて…。」
目の前でロイドが車に押し込められ、何も出来なかった自分を思い出して、ルークは顔を歪めた。
「だからこそ、だろ!」
ウインクしてガイは続ける。
「もし、そのコンサートに行かなかった事がバレたら、ロイドって奴は今後もつけ狙われる可能性があるだろう?だから、お前は一緒にコンサートに行って、ロイドを守ってやればいいんだよ!そうすれば、デートができる上にお前はロイドを守れる!一石二鳥じゃないか!!」
「そっ、そっか!!サンキュー、ガイっ!!」
ガイの言葉を受けて、ルークは突然、喜びを全面に出した。

 


こうして、ロイドとルークはそろって、青い長髪男の誘いのままに、コンサートへとやって来たのだった。


「なぁ、ロイド…。」
「あぁ…。」
ロイドとルークはコンサート会場に入り、でかでかと貼られているポスターを見つめていた。
そこには、まぎれもなく以前ロイドをさらった青髪の男が笑顔で写っている。
おまけにそのポスターの下には『ツーハーツ』と書いてあるのだから…二人はここにきて、今更のように、彼がこのコンサートの主役のツーハーツの一人である事を知った。



コンサートが始まり、賑わいだす会場内、ロイドとルークはステージが良く見える席にいた。
*ユアンが渡したのは当然のごとく眺めの良い指定席のチケットである。


始めは、ユアンの方を嫌々ながらも観ていたロイドだったが、気が付くと、自然と視線が横に反れていた。
そう、青髪ユアンの横で歌う赤髪の男へと…。


ロック系の曲が終わったと思った次の瞬間、続けて流れ出したのは、穏やかな曲だった。
ボーカルのメインが赤髪の男になる。
ロイドは視線が反らせなくなっていた。
何かが…あの男の何かが胸に引っかかる。



―――なんで、あんなに哀しそうに歌ってるんだ…?
     なんか…………―――

 

「ロイド?ロイド!どうしたんだよ!?」
肩を揺さぶられている事に気が付くと、目の前には心配げに自分を見つめるルークが居た。
「ル、ーク…。」
「気分でも悪くなったのか?」
思いっきり動揺しているルークに、逆にロイドは落ち着いてくる。
先程まで胸の中につっかえていたものが、薄れていく気がする。
「大丈夫だよ。そうじゃなくて…さ。」
ロイドはルークに笑いかけ…視線をステージの赤髪の男へと向ける。
「なんで、アイツはあんなに哀しそうに歌うのかなって思ってさ…。」
「かなし、そう…?」
赤髪の男から目をそらさないロイドの言葉と視線に、ルークは不安を感じる。


「ロイドは…あいつがす、好きなのかっ!?」
思わず突拍子もない事を口にしてから、早速ルークは自分の口を恨んだ。
が、返って来た返事は特にルークの言葉を気にしたふうもないものだった。
「へ?んな訳ないだろう。」
爽快に笑うロイドに、ホッとするルーク。
ロイドはルークの顔を見ると、笑いながら言った。
「なんか、気になっただけなんだ。それだけだよ。」
「そっか…。」


「うーん、曲が悲し気って訳でもないのになんでだろうなぁ~…。」
悩み込むロイドに、ルークが言う。
「俺には、悲しそうってよりは、冷たく感じるな。」
「そうか?」
「なんつーか…上手いけど、心ここにあらずって感じ?」
ルークの言葉を聞いて、ロイドはフム…と考える。


ルークの言っている事も、解る。
けれども、ロイドが感じてしまうのは、何故か悲しみで…。
結局、その一曲が終わるまで、ロイドは彼の歌声からは悲しみしか感じ取れなかった。











「お疲れ様です。」
「あぁ。」
無事に終わったコンサート。
舞台裏ではクラトスとユアンが休んでいた。
そこに、いつものように、コンサート後に回収された、コンサートの感想アンケート用紙をまとめて、係りの人間が来た。
いつもならば、マーテルかボータが受け取るのだが、今その二人はいない為、近くに居たクラトスがそのアンケート用紙を受け取ろうと手を伸ばす。
「?そちらの用紙は違うのか?」
何故かアンケートを持っていた係りは、左手を後ろに回している。
その手には明らかに紙があって。
「あっ、いえ…。これは、ちょっと今急いで持ってきてしまって…。」
しどろもどろになりながら答える係りの眼は落ち着きがない。
「なんだ?アンケートの紙なら、全て見せろ。」
ユアンは立ち上がり、係りの青年から紙を取り上げた。
それは二枚のアンケート用紙。
隣で読み始めるユアンにため息をつきつつ、クラトスは椅子へと座り込む。


「フッ、クラトス。お前にだ。」
「…なんだ?」
そのうちの一枚だけをクラトスへと投げるユアン。
クラトスはひらひらと舞ってきた紙を掴み、目を向け…そして、驚きに目を見開いた。



『赤髪の人、何か歌い方が悲しそうに聴こえた。
 せっかくいい声なんだから、楽しく歌えよ。

            ロイド・I』




驚きのあまり、声も出ないクラトスに視線を向けながらも、ユアンはもう一枚を握りしめて、しわしわにしていた。

『おい、この誘拐やろうっ!
歌手だか何だかしらねぇけどな、ロイドは俺が守るからなっ!
今度ロイドに何かしたら、絶対にゆるさねぇからな!!
            ルーク・フォン・ファブレ』





「ロイドが…来ていたのか……?」
呆然と、紙を見つめるクラトスには、非難(文句?)に近いアンケート用紙を抜きぬれなかった事を謝る係りの青年の声など、全く届いてはいなかった…。



**********************
ちょっと、コンサートを飛ばしてしまいました(汗)
今回書きたかったのは、例え人気があっても、歌が上手くても、そんなパパの歌声はロイドにとっては悲しみを歌っているようにしか聴こえないという事です。
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お年玉の作り方

「おっはよー、ルーク!…あれ、どうしたんだ?」
「ロ、ロイドっ!お、おはよー!」
突然ルークの背後から声をかけたのは、朝から元気なロイドだ。
振り向いて、相手がロイドだと分かった途端、緊張したルークが大きな声で返事をした。
そんなルークに活気に笑いかけるロイドは、ふと視線をルークの机の上に落とす。
「んで、何か困ってたみたいだけど。どうかしたのか?」
「あっ…いや……。」
言葉を濁すルークは、無意識に両手を机の上の複数の小さな長方形の紙袋の上へと落とした。

 

「…………。」
ルークがあまりにも沈黙を守っているので、ロイドは訊いてはいけない事だったかと、漸く理解する。
「あっ、ご、ごめんな!誰だって、触れられたくない事ってあるよな!ホントごめん!!」
慌てて離れたロイドの申し訳なさそうな顔を見て、ルークはロイド以上に慌てだした。
「ちっ、違うんだ!そうじゃなくて…あっ、だから待てって、ロイドっ!!」
180度回転して立ち去ろうとしたロイドの腕を力任せに引っ張ると、ロイドの細い身体が呆気なく傾いて…。
「…っぅわぁ!?」
「ロイっ、ぐはぁっ!」
結果…ロイドは引っ張られるままにルークの方へ倒れ込み、それを支えそこなった(椅子に座っていたのだから当たり前ではある)ルークごと、2人は床に重なって倒れ込んだ。

 

「あーぁ、何やってるんだよ、お前らは?」
「いててっ…あ、ガイ、おはよー。」
「おう、おはよ、ロイド。で、ルーク?…大丈夫か?」
ロイドの下敷きとなったルークは顔を真っ赤にして硬直している。
自分が重しになっていた事に気付いたロイドは直ぐにルークの上からどいて、ルークに手を差し出す。
「わ、わりーな、ロイド。」
「俺こそごめんな。」
ロイドの手を借りて立ち上がったルークの顔は相変わらず赤い。
そんなルークの様子に全く気付いていないロイド。
そして、そんな2人を見守っていたガイは、次の瞬間、先程までルークが机の上に置いていた複数の小さな紙袋の1つを拾い上げる。
「あれ、これって…。」
「あー!ガ、ガイッ!!」
紙袋をじーっと見つめるガイから、それを取り返すと、ルークは慌ててポケットにしまい込んだ。
床に散らばった他の紙袋も回収してポケットに押し込める。
「ほら、これも。」
全て回収したと思った矢先、ロイドから紙袋を渡され、急いで受け取るルーク。
「お前、何をそんなに慌ててるんだよ?別に隠すものじゃないだろう?」
学校に持って来るものでもないけど、と続けるガイに、ルークは嫌そうな顔を向ける。
「?ガイは袋の中身、知ってるのか?」
苦笑するガイに、ロイドが控え目に訊ねる。
「え?…あぁ、そうか。一般的に使われてる訳じゃないもんな。あの袋にはお年玉が入ってるんだよ。」
「おとしだま?…小さなボールが入ってるのか?」
「ははっ、違う違う。お年玉っていうのは、お小遣いの事だ。」
お年玉という言葉に疑問符を浮かべるロイドに、ガイが説明を始める。
「年が明けてめでたいって事で、大人たちがルークみたいなお坊ちゃんに、お小遣いをやる行事みたいなものがあるんだよ。」
「へぇ~、貴族の家って、太っ腹なんだな~。」
悪意のない、感心したような声で言うロイドに、ルークは複雑そうな顔をしている。

「嬉しくないのか、ルーク?」
すぐにルークの様子に気付き、ロイドが訊ねる。
「そーゆー訳じゃねぇんだけどさ…。なんつーか、俺ももう17だし、いつまでもガキ扱いされんのが、なんか…。」
言葉を濁すルークに、ガイは苦笑する。
「お前を可愛いと思ってこそのお年玉だろ?素直に喜べよ。」
「…………。」
ルークは顔を俯かせた。


もうルークも17歳。
この世界(勝手な設定です)では、立派な成人の歳である。
この歳で、可愛いだのなんだの言われるのは、正直嫌だったのである。


「なぁ、ルーク。大人たちがくれるお小遣いって、どうやって生まれてるか知ってるか?」
不意に、ロイドがルークに声を描ける。
「小遣いの生まれ…?」
妙な言葉にルークが、思わず顔を上げる。
そこには微笑みながらも、ちょっと真剣な顔のロイド。
ロイドは続ける。
「大人はさ、自分たちで稼いだお金でお小遣いを作ってるんだぜ?」
ロイドの言葉に、ルークもガイも目を見開いた。
「ガキ扱いされるのも学生のうちだって。働き始めたらさ、今度は俺達がお小遣いを作るようになるんだぞ。そんで、今までガキ扱いしてくれた大人たちへ復讐!な?」
「ふっ、復讐!?」
不穏な言葉にさぁーっと顔を青くするガイに、ロイドは慌てて首を横に振る。
「違うって!復讐ってのは、今度は大人たちを俺達が甘やかすって事!!」
「甘やかす…。」
ロイドの言葉の一部を小さく復唱するルークは、思考顔だ。
「ガキ扱いしてくれた礼と、可愛がってくれたお返しって事だよ。」
ニコリと爽快に微笑むロイドに、ルークは心のもやもやが消え去るのを感じた。

「そっか…。そうだよ、な…。」
納得したように、ルークが声を出す。
「そう考えると、先が楽しみだろ?」
いたずらっ子のように目を輝かせるロイドに、ルークも満面の笑みを浮かべて頷いた。
「あぁっ!」

 

気が付けば、元気になって、ロイドと一緒にはしゃぐルークに、ガイは微笑んだ。
ネガティブ思考になりがちな自分たち(ルークを筆頭に)に、ロイドはいつも思いもつかない発想を聞かせてくれる。
そしてそれはいつも心を温かくしてくれて、ネガティブだった思考を散布させる。


(ロイドは本当に…大物だよな。)

 


こっそりと2人から視線を反らし、ガイは、廊下へと出る。
廊下の少し先には赤の長髪の男が2人、揃って歩いている。


「だから言ったでしょうよ?お前の心配なんて杞憂だって。」
1人が引っ張られながら歩いている。
引っ張っている方の赤髪の男は、そのまま歩き続ける。
「うるせぇっ!俺はあいつの心配なんてしてねぇっ!!」
「はいはい…。って、俺様を引っ張るのやめてくんない~?ロイド君に会いに来たのにさ~。」
「…今はやめとけ…。」


そんな声が、ガイの耳に届いてくる。
思わず吹き出すガイ。
引っ張られているのはゼロスで、苛々しながらもゼロスを引っ張っているのはアッシュだった。
「兄貴分も苦労する、かな?」
ガイの独り言は、チャイムの音に消された。



**********************
お正月という事で、お年玉ネタです。
皆様、明けましておめでとうございます!
皆様にとって良い一年になりますよう、お祈りしております。


ルークとロイドは同じクラス。
ガイとゼロスとアッシュに関しては…深くは考えていません(爆)
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