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*『ささやかなお見舞いの品』の続きです。
「…誰だ、ユアン?」
ユアンから、話があるからと呼び出されたクラトスはサングラスをつけたまま、同じくサングラスをつけた目の前のユアンに冷たい目を向ける。
ユアンの横には、紅い髪の少年…ルークが居た。
「ロイドの友だ。」
明らかに不機嫌なクラトスを気にするでもなく、一人楽しげにユアンは笑って答えた。
ロイドと聞いて、クラトスの眉が一瞬ピクッと動く。
「何を企んでいる、ユアン…。」
クラトスの怒気を含んだ声にルークは驚きつつも、ユアンの前に出る。
「コイツ…この人からロイドの父親の事を聞いた。」
ルークが真っ直ぐにクラトスを見ながら話す。
「この間、ロイドが風邪をこじらせて肺炎になったんだ。」
「!」
サングラスで隠されたクラトスの目が、少し見開かれる。
「あっ、いや、もう治ったんだけど…。」
言い辛そうにルークが俯く。
「その時、うちの掛かり付けの医者に掛かってもらったんだ。それで…血液検査して……それで。」
言葉に詰まるルーク、その後ろでしたり顔で笑っているユアンを見、クラトスは全てを悟る。
「……それで、私とロイドの血の繋がりを確認した…という訳か。」
「………。」
ルークは無言で頷く。
「良かったではないか、クラトス。正真正銘、あのロイド・アーヴィングという少年はお前の死に別れたと思っていた息子だ。」
「………………。」
ユアンの言葉に、クラトスは何も答えなかった。
「アンタは…知って、いたんじゃないのか?」
(煩いので)ユアンを追い出し、クラトスは控え室でルークとコーヒーを飲んでいた。
サングラスを外したクラトスと、ルークは向かい合って座っている。
*コーヒーは、ユアンを追い出した際にマーテルが運んできました。
ルークの質問に、クラトスは静かに目を閉じたまま、コーヒーを飲んでいる。
「………『ロイド・アーヴィング』の名前は、ロイドが見つけられた時に、ロイドの手首に巻かれていたタオルの中に書かれていたんだって…。」
「………。」
「まだ赤ん坊だったロイドが見つかった時、ロイドは冷たくなった女性に抱きしめられたいたって…前にロイドから聞いた。あ、ロイドも院の人に教えてもらったっていってたんだけど!だから…多分その女性がロイドの…。」
…母親だったのだろう。
――― アンナ… ―――
クラトスはゆっくりと目を開ける。
彼の鋭い目は、何処かやわらかなふうに変化する。
「…女性の身元は分からないままだった。身分の証明になるような物も何も持ってはいなかったらしい…。でも…アーヴィングって、アンタの姓と違うよな…?」
困ったように問いかけて来るルークに、クラトスはゆっくり口を開いた。
「アーヴィングは…アンナの、ロイドの母親の姓だ。」
「っ!」
クラトスの言葉に、ルークは目を見開く。
「恐らく…アンナも私が死んだと思っていたのだろう。だから、私の姓ではなく…旧姓を書き残したのだろうな。」
静かに語ったクラトスに、ルークは思わず立ち上がった。
「それならっ!アンタはロイドの姓を知った時点で、ロイドが息子だって分かってたはずだよな!?ならなんでっ!!」
いきり立つルークではなく、窓の外に視線を向けながら…クラトスは静かに語り出した。
「お、ルーク。遅かったじゃん!」
「あ、あぁ。」
バイト先に行くと、既に制服に着替えたロイドが笑顔で迎えてくれた。
それに何とか返事をするも、ルークはクラトスの話が頭にこびりついていて、整理する事が出来ていなかった。
「…どうかしたのか?」
「えっ?」
「何か…前に見舞いに来てくれた時から、変だ。」
「っ!」
ロイドは変に敏いところがある。
ルークは、どう誤魔化せばいいのか、もしくは伝えた方がいいのか…頭の中が混乱してきた。
片手を頭に当てて唸うルークに、ロイドはゆっくりと近付き、その手をとった。
「無理に話してくれなくていいよ。でも、困ってるなら力になりたい。」
真っ直ぐな言葉、真っ直ぐな視線…真っ直ぐな心………ロイドの全てが、ルークは心底愛おしかった。
「っわぁ!?」
思わず、ギューっと抱きしめる。
背はわずかに高いけれど、体つきはルークに比べればずっと華奢なロイドの身体は、すっぽりとルークの腕の中におさまってしまう。
「ルーク…?」
驚きつつも、ロイドは抵抗はしなかった。
ルークは、その事に喜びつつ…心の中で謝りながら、口を開いた。
「今は…話せない。でも、ありがとうな…。」
「あぁ。」
明るいロイドの声を耳元で聞きながら、ルークはギュッと目を閉じた。
――― お前が辛い時は、俺が助けるから。
傍に居るからっ!! ―――
ルークは心の中でそう叫んでいた。
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クラトスがルークに語ったのは、いきり立ったルークを落ち着けるには十二分な話だったかと。
詳細はまた次に(^^;)
前回の風邪をこじらせ、それでも無理をするロイドを、ルークが半ば強引に医者に診せたといった感じです。
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*『実の父親』の続きです。
「はぁ…。」
「どうしたんだい、ロイド?」
隣で大きなため息をついたロイドに、クレスは視線を向けながら声をかけた。
「いや…なんつーか………。」
珍しく曖昧に苦笑するロイドに、クレスは周囲を確認し、立ち上がる。
「…そろそろ閉めようか。もう人も来そうにないし。」
「分かった。」
クレスの言葉に頷き、ロイドは看板を取りに出入口に向かった。
がちゃっ
「あ、いらっしゃい。」
ロイドがドアまであと一歩のところで、ドアは開かれた。
時間としてはまだ営業時間なので、ロイドは入ってきた人物に向かって頭を軽く下げる。
「っ!」
「クレスー、お客さ……あれ、あんた………。」
ロイドを見た瞬間、入ってきた人物は目を見開いた。
もっとも、サングラスをしているので、ロイドには分からなかったが…。
が、その人物の赤髪を、ロイドは見た覚えがあった。
「…では、珈琲をいただこう。」
「はい。」
ロイドはサングラスの男をカウンター席に案内し、男は席に着くと少し俯いて前に立つクレスに注文する。
返事をし、早速珈琲を入れる準備をするクレスに目を向けた後、ロイドは男に頭を下げ、それから他の席の片づけを始めた。
テキパキと空いているテーブルを拭いたり、床を掃除するロイドに、男はさりげなく視線を向けていた。
「お待たせいたしました。」
と、そこでクレスがカウンター越しから、湯気の立つカップを差し出す。
男は何も言わずに受け取り、静かに珈琲を一口口に含んだ。
「…ほぉ、なかなか良い味だ。」
「うちのマスターは珈琲と紅茶にはこだわりが深くて。」
男がクレスが出した珈琲をゆっくりと飲む。
閉店時間は迫っているが、珈琲だけなら、時間までには飲み終わるだろう。
クレスは少し奥に入り、食器洗いを始めた。
食器洗いを終え、もうすぐ閉店だという時、ふとクレスは顔をあげる。
男はカップを手に持ったまま、一心にロイドを見ていた。
「…?彼がどうかしましたか?」
思わずクレスが声をかけると、男はパッとロイドから視線を反らした。
「いや…。」
「そういえば、さっきロイドも貴方を見た事があるって感じでしたね。」
「……………。」
クレスは、先程ロイドから慌てて眼を反らした男の動揺を、しっかりと感じ取っていた。
「クレス、看板取ってきたぜ。」
と、そこにロイドが戻ってくる。
「ありがとう、ロイド。」
クレスの横に立つロイドを少し見上げ、男は立ち上がった。
「…閉店間際に邪魔をしたな。」
そう言って、財布から珈琲の代金を出し、カウンターに置く。
男がクレス達に背を向け切る前に、ロイドはハッと目を見開く。
「あー、思い出した!あんた『ツーハーツ』とかいうのの一人だろう!」
…その言葉に脱力したのは赤髪の男、クラトスだけではなかった。
「ロイド…思い出せてなかったのかい?」
クレスの質問に、ロイドは元気良く頷く。
「あぁ、どっかで見た事あるとは思ってたんだけどさ。」
「…………。」
クラトスはロイドに目を向けると、ゆっくりとサングラスを外した。
赤い紅い髪と同じ、紅い瞳。
普通なら鋭く感じるであろう、その逆三角形の瞳を…ロイドは落ち着かない気持ちで見つめた。
歌っていた時のように、とても哀しげに見えたのだ…。
「…今夜の事は、内密に頼みたい。」
その言葉に首を傾げるロイドの横で、クレスは解っているというように深く頷いた。
「きっとね、芸能人だから、落ち着いて外出できないんだよ。」
先程出て行った客人の言葉の説明をロイドにするクレス。
「そっか…。」
ロイドは小さく相槌を打つと、少し俯いた。
そんな様子を見て、クレスは少し屈む。
「ロイド。今日はずっと元気がないけど、本当にどうしたんだい?」
さっき訊こうとしていた事を、クレスは訊ねる。
ロイドは、しばらく黙った後、ゆっくりと話し出す。
「ルーク…なんか変なんだ。一人で抱え込んでるって感じで………。」
ロイドの話を聞きながら、クレスは、もう一人のアルバイト員であるルークを思い浮かべる。
「…確かに、最近元気がないように見えるね。」
最近のルークはボーっとしている事が多い。
かと思えば、突然頭を抱えて唸りだし、マスター代理のクレスが訊ねれば、必死ではぐらかそうとする。
クレスもどうしたものかと思っていたのだ。
それにつけて、今日はロイドまで、何処か元気がない感じで、クレスの心配は深まる。
そして…先程出て行った赤髪の男の、ロイドへの視線の意味が、クレスは気になっていた。
―――まさか、ロイドに会ってしまうなんて…―――
『FANDOM』という喫茶店から出たクラトスは、サングラスを深くかけ直しながら、店を振り返った。
以前、ロイドが風邪をこじらせて肺炎にかかったと聞いた時は、また家族を失う恐怖に苛まれたものだ。
今…ロイドが心から笑っていられるのなら、自分は関わらないと、クラトスは決めていた。
『ロイドっ!!』
『ふぎゃぁっ、ふぎゃぁぁぁぁー!!―――――っ!』
『っ!?っロイ…』
『………………。』
『ロイドーーーーー!!!!!』
生まれて間もない身でありながらも、傷つけられて赤に染まる我が子。
昔の事を思い出しながら、クラトスはゆっくりと顔を夜空へと向けた。
星が見えない暗い空…。
クラトスは目を閉じ、亡き妻と……過去の息子を思った。
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ルークが出せませんでした…。
クレスたちのアルバイト先は喫茶店にしました。
ネットカフェと迷ったのですが、ロイドたちには機械関係より、普通のお店がいいかな?と(^^;)
マイソロジー2をプレイした今日この頃…(爆)
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