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『テイルズオブシンフォニア』のロイド受けで小説を書いていきたいと思います。 今、はまっているのは、ルクロイとゼロロイです。 コメントなど頂けると、励みになります!!
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飛翔
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こんにちは。
かなり遅れて『シンフォニア』を知り、ロイド君が大好きになった飛翔と申します。
同士の方は、是非よろしくお願いします!
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100年後の未来

「100年後、帰ってくる…クラトスに、何か残してやりたいんだ。」
「…そりゃまた。相変わらず父親想いです事~。」
軽口で返すゼロスに、ロイドは困ったように眉を寄せながらも微笑んだ。
「もう直接…『父さん』って、呼べない代わりに…………。」
「成程ねぇ~。で、具体的には?」
「ぅっ!…………。」
明らかに何の案も持っていないロイドの様子に、ゼロスはニヤリと人の悪い笑みを浮かべ、ロイドの耳元で囁いた。
「俺さまにイイ案があるぜぇ~?」
ビクつくロイドの細い肩を優しく掴み、ゼロスは続けた。
「…ただし、それには俺さまたちにかなりの覚悟が必要だ。」
「かく、ご…?」
思いかけず真剣な声色に、ロイドは驚きよりも、言葉を理解しようと試みた。







「今、帰った。」
ポツリと呟いた長身の男は、静かにそこに片膝をつく。
彼の目の前には、昔と…100年前、この星をたつ前と全く変わらない、よく手入れのされた綺麗な墓石がある。
「アンナ…。」
右手を墓石に伸ばし、彼…クラトスは100年ぶりに妻の墓石に触れた。
木々に遮られながらも、かすかな光が射すそこは、かすかに温かい。


暫し妻の墓を眺めた後、ふと隣の墓石に視線をそらす。
100年前には無かったものだ。
クラトスは、一度強く目を閉じ…ゆっくりと墓石に刻まれている名を読み取る。
そこには、彼が最も望んでいなかった名は刻まれてはおらず…クラトスは静かに詰めていた息を吐きだした。
そして、今度は、隣の墓石の前に立ち、目を閉じた。
『ダイク殿…ありがとう。』
妻の墓をたててくれて…。
息子を立派に育ててくれて…。
そして…恐らくは息子に見とられてくれて…・。



100年経っても、ダイクがロイドと暮らしていた家は、残っていた。
大分、ガタはきているが、未だに生活感は残っていた。
妻とダイクの墓が残っている以上、彼らの…ロイドの縁の者が住んでいる可能性は高い。


けれど、もう100年も経っているのだ…。
反対側にあるノイシュの小屋があった場所辺りにでも…あるのかもしれない、と彼は思う。
けれど彼は見たくなかった。
最も望んでいない…息子の名が刻まれた墓石を……………。



やがて、クラトスは決意して、立ちあがる。
自分より長く生きて欲しいと望みながらも、決して無理である事は解っていた。
それでも…死ぬ事には何の意味もないのだと…真直ぐに言った息子の姿と言葉が心の奥に残っていて、願わずにはおれなかったのだ。
クラトスがゆっくりと歩を進めると、突如、ズザザザァー!と、上から何かが降ってきた。
「っ!」
思わず、剣の柄に手を添えたクラトスだったが、落ちてきたものを見て、その手は剣から離れる。


「…………………。」
落ちてきたモノは、ギュッとクラトスにしがみ付いている。
短いその髪は、薄い金色で…100年前、息子の隣に居た少女を思い出させる。
が、力の込み具合からいって、今クラトスにしがみ付いているのは少年だろう。
そう…丁度、100年前の息子と同じ年頃の…。
「………………。」


「あんた誰だよ~?俺たちの家に何か用か~?」
しがみついている少年を無理に引き離す気にもなれず、動けぬままだったクラトスに、今度は目の前の木の横から青年が出てくる。
こちらは…かなり見覚えがある顔つきだ…。
ついでに言えば、何処か軽く感じる口調も、100年前に息子に懐いていたヤツに似ている。
が、その青年は見事な黒髪だった。
そう…100年前のドジな暗殺者と同じ髪の色…。
ロイドを好いていた娘と………・。
思わず凝視していると、黒髪の短髪青年は、不機嫌そうな顔を、一層険しくしていた。
「…おい、離れろ。」
青年は、そう言って、クラトスにしがみ付いている少年の肩に手を置き、引っ張る。
だが、クラトスにしがみ付いたままの少年は、首を横に振り、更に力を込めてクラトスにひっつく。


何が何だか解らない…いや、粗方理解できているであろうクラトスの脳内は、只今混乱中だった。
恐らくコレットの子孫と思われる少年(しがみついたままなので、顔は見えない)と、しいなの子孫と思われる黒髪の青年は、どうやらこの家で一緒に暮らしている様子。
100年前、ここはダイクとロイド(とノイシュ)の家だった。
そこから分析してしまう彼が知らない未来とは…。


『この子は、もしやロイドとコレットの…。』


そう思えば思うほど、クラトスは切なくなった。
子孫を残すほどに、息子は成長し、そして恐らく…。




どよーんとした空気を纏い始めたクラトスに、黒髪の青年は、深いため息をつき、人を喰った笑みを浮かべた。
そう、まるで100年前の神子と同じように…………。
「もう喋ってもいいぜぇ~。ったく、計画台無しだしぃ~?」
「…計画?」
思わずクラトスが口を開くと、しがみついている少年が顔をあげた。
「っ!」
それは…100年前のあの日と同じ……クラトスを見送った時の苦しげな顔をした息子、ロイドだった。
「っ、ぅ~!」
視線を合わせていると、ボロボロとロイドの瞳からこぼれおちてくる涙。
自分が旅立った後も、こんな顔をして泣いていたのかと思うと、クラトスは胸が締め付けられる思いだった。



「はいはい~、感動の親子対面はその辺でぇ~。つか、いい加減にしろ、親バカ親父!!」
気がつけば、クラトスはしがみ付いてくる息子の背に逞しい両腕を回し、支えながらも強く強く抱きしめていた。
黒い物体が飛んできて、思わずロイドを抱えたまま避ける。
落ちた物を見ると、それは真黒なカツラだった。
そして、目の前で憎々しそうに、こちらを見ている人物は…。
「神子…。」
100年前と変わらぬ、赤い長髪を手で払いながら、青年は、近付いてきた。
そして、クラトスにしがみ付いている少年の金の髪を引っ張る。
呆気なく…金の髪…、いや、カツラは取れて、その下からは茶色の髪が現れた。
恐らくカツラをかぶる為に下ろしたのだろう…ロイドの髪はストンッと下に流れ落ちていた。
何処か若い頃の自分を見ているような不思議な感覚に、クラトスは血のつながりを改めて感じながら、笑った。


「お帰り…お帰り……・父さんっ!!」
泣きじゃくり、赤くはれ上がった目元を隠そうともせず、満面の笑みで歓迎してくれた息子に、クラトスは小さく囁いた。


「ただいま、ロイド。ありがとう…。」








「えーっと、じゃぁ俺がコレットと俺の子孫、ゼロスがしいなとゼロスの子孫のふりをするってことか?」
「そうそっ!だから~、ロイド君は髪下ろして、金色のカツラね~。」
何処までも楽しげなゼロスの案に、ロイドは混乱顔だ。


ゼロスの提案は、まず、2人そろってのエクスフィア装備の継続から始まった。
天使化してしまえば、刻の流れなど関係がなくなる。
ロイドは随分悩んだが、ゼロスと共に生きられるのなら、と頷いた。
エクスフィア回収の旅を終えても、2人は自分たちのエクスフィアだけは外さなかった。
ロイドは、ゼロスに生というものを楽しんで欲しかった。
生きる事は苦しい事だけではないのだと、知ってほしかったのだ。
エクスフィアを外す事はいつでも出来る。
充分に、生というものを体感出来たら、いつでも外そうと、ロイドは考えていた。


が、逆にゼロスは望んでいた。
ずっと2人で生き続ける事を…。
ロイドという光に出逢えた。
その光に触れる事を、抱き締める事を許された。
それならば…2度と手放したくなどない…。


細かい考えは違うものの、2人は結局、共に生きる事を望み、100年を過ごしたのだ。


「どうして、子孫のふりなんてする必要があるんだ?」
心底不思議そうに訊くロイドに、ゼロスはしたり顔で言う。
「その方が、天使様が驚くからだって。せっかくの再会なんだし、サプライズは必要だぜ?」
「さぷらいず?」
「どっきり企画って事。」
ふむふむと頷くロイドに笑いかけながら、ゼロスは着実にクラトスを一瞬でも悲しみにくれさせる為の案を練っていった。




本当はロイドに、「あんた、俺のご先祖様?」と言わせ、クラトスを混乱させる予定だったというのに…。
最終的には、明かすつもりだった真実なので、仕方ないと、ゼロスはため息をついた。
目の前で幸せそうに話す父子を眺めながら、ゼロスは「今日だけは、俺さまのロイド君を貸してやる。」と自分を抑える。


その夜、可愛らしくも愛おしくもないクラトスと、愛してやまないロイドと一緒に床で眠る事になる事を、ゼロスはまだ知らない…。
*もちろん提案者はロイド!



**********************
ゼロロイ…を書きたかったのに、パパが出張っちゃいました(汗)
こんな話もアリかな、と。
**********************

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ささやかなお見舞いの品

*『悲しい歌声』の続きです。




目の前の古びた2階建ての家をしばし眺め、ルークは左手のメモに目を移す。
「ここで、あってる…よなぁ?」
メモに書かれている住所は確かに、この家をさしている。
けれども、ルークはこんなボロ家(失礼)でロイドが生活しているなんて信じられなかった。
「誰だ、お前さん?」
突然、背後からかかった声に、思わずビクッとしつつ、ルークは振り向く。
「俺の家に何か用か?」
その言葉に、ルークは目を見開いた。
「じゃぁ…あなたが、ロイドの親父さん…ですか?」



「なんでぇ、ロイドの見舞いに来てくれたのか。」
豪快に笑うダイクに、ルークは少し緊張しながらも、しっかりと自己紹介をした。
が、ルークが名乗った後、ダイクはすぐに反応した。
分厚い眉に隠された目が、少し見開かれたように見える。
「そうかそうか、お前さんがルークか。」
「俺を…知ってるんですか?」
ルークが控えめに問うと、ダイクは門を開けながら、明るい声で言う。
「あったりまえよ。ロイドの奴が、嬉しそうにいつも話すからなぁ。」
「っ!…そ、そうですか。」
ダイクの言葉に、思いっきり赤面しながら、ルークは促されるままに、ロイドたちの家の中へと足を踏み入れた。



今日、本当はバイト先で会えるはずだったロイド。
だが、ロイドは来なかった…。
先輩であるクレスに訊けば、どうやら高い熱が出ているらしい。
かなりかすれた声で電話をしてきたと聞いて、ルークは居ても経ってもいられなくなった。
だから、早めにバイトをあがらせてもらい、こうしてロイドの家へとやって来たのだ。
ダイクにロイドの部屋は2階だと教えてもらい、ルークは静かな足取りで階段をのぼっていった。


コンコンッ


「…ロイド。」
「…………………。」
「寝てるのか、ロイド…?」
「…………………。」
ドアの前で呼び掛けてみるも、返答はなし。
ルークはゆっくりとドアノブを回し、室内へと入っていった。




「…………………。」
室内は、ルークからしてみれば狭く感じられるものだった。
窓の傍にあるベッドの上でロイドが瞳を閉じていた。
足音を消して近付けば、すぅすぅと静かな寝息が聞こえてくる。
熱のせいか、顔は赤いが、表情はそれ程、苦しそうではなくて、ルークは一つ息を吐きだした。
傍にあった椅子を寄せ、ルークはロイドの頬にそっと手を触れさせる。
頬は、熱かった。
ルークの手を心地よく感じたのか、ロイドの顔が不意にルークの手にこすりつけられる。
「っ!」
「んー…。」
「…ロ、ロイド?」
思わず手を引きそうになるも、少し唸るロイドは起きる気配もなく、ルークの手に頬を寄せている。
…先ほどより、表情が和らいだ気がする。



ルークは、空いている方の手で、眠るロイドの髪を撫でながら、先日の出来事を思い出していた。






「まさか、貴様があのファブレ家の子供とはな。世の中、分からないものだ。」
突然、かけられた声に振り向けば、そこには、この間ロイドを攫い、しかもコンサートのチケットを(勝手に)寄越した青い髪の男…ユアンが立っていた。
「なっ!お前!!!」
警戒心を丸出しにし、ルークは構える。
「まぁ、待て。私はロイドについて訊きたいだけだ。」
「やっぱりかよっ!ふざけんなよ、ミュージシャンだか芸能人だか知らないけどなぁ、訴えるぞっ!?」
きつく睨みあげるルークに、ユアンはため息をつき、やれやれ…と小さく呟く。
「私は不審者などではない。ロイドの父親の友だ。」
「ロイドの親父さんは、知らないって言ってたらしいぜ!?」
「親父…養父か。それはそうだろうな…。」
「…なんだよ、何を…。」
何か…意味ありげに、笑うユアンに、ルークは嫌な予感がする。
知りたいような…知ってはいけないような…………………そんな事実をこの男が持っている事を、ルークの頭は既に理解していた…。


「良い事を教えてやろう。ロイドがもし、私が思っている者なら…――――――――――――――」






「んっ………ル、ク…?」
小さな声にハッとして顔をあげれば、ルークの手に自分の手を重ねるロイドと目が合った。
「どうか…した、のか?」
「え?」
寝ぼけ眼で、ロイドはルークに問う。
「なんか…難しい顔、してる…。」
「そう、かな?ははっ………。」
思わず誤魔化そうと笑ったが、ネガティブ思考に塗りつぶされた頭が、それ以上笑い続ける事を拒否した。


こつん


「ロ、イド?」
「…ルークの体温、気持ちいいな。」
熱い両手をルークの頬へと伸ばし、ロイドは自分とルークの額をくっつけた。
ロイドの熱が…ぬくもりが、ルークに伝わってくる。
かすれたロイドの声に今更気がついて、ルークはポケットに入っていた飴玉を取り出す。
「んむっ?」
ポイッとロイドの口の中へと放り込んで苦笑する。
「サンキュ…。」
「どういたしまして。」
お金のかかったものをあげても、ロイドはあまり喜ばない人間だ。
それを知っているから、ルークは見舞いに花も持ってはこれなかった。
けれど、ただの飴玉一つで、ロイドはとても嬉しそうに笑ってくれる。
それが、ルークには、たまらなく嬉しかった。


「ありがとな…。」
「え?」
「見舞いにきてくれたんだろ?」
「あ、う、うん。」
慌てて返事をすると、ロイドは照れくさそうに微笑んだ。
至近距離で見るロイドの瞳は、熱のせいで潤んでいた。
無意識に…ゆっくりとルークの手がロイドの両頬を包み込む。
「早く…元気になれよな。」
「あぁ、サンキュー。」
互いの体温が心地よくて、2人はしばらくそのままでいた。









『ロイドがもし、私が思っている者なら…あいつの本当の父親は生きている。』



ユアンの言葉が、ルークは頭の中から離れなかった。
ロイドに伝えるべきなのか、それとも伝えないべきなのか…。



**********************
久々に現代パロの続きを書きました。
パパが出せなかった…(TT;)
『ほのぼのルクロイ』と、表示すべきだったでしょうか?(汗)
**********************

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実の父親

*『ささやかなお見舞いの品』の続きです。




「…誰だ、ユアン?」
ユアンから、話があるからと呼び出されたクラトスはサングラスをつけたまま、同じくサングラスをつけた目の前のユアンに冷たい目を向ける。
ユアンの横には、紅い髪の少年…ルークが居た。
「ロイドの友だ。」
明らかに不機嫌なクラトスを気にするでもなく、一人楽しげにユアンは笑って答えた。
ロイドと聞いて、クラトスの眉が一瞬ピクッと動く。
「何を企んでいる、ユアン…。」
クラトスの怒気を含んだ声にルークは驚きつつも、ユアンの前に出る。
「コイツ…この人からロイドの父親の事を聞いた。」
ルークが真っ直ぐにクラトスを見ながら話す。
「この間、ロイドが風邪をこじらせて肺炎になったんだ。」
「!」
サングラスで隠されたクラトスの目が、少し見開かれる。
「あっ、いや、もう治ったんだけど…。」
言い辛そうにルークが俯く。
「その時、うちの掛かり付けの医者に掛かってもらったんだ。それで…血液検査して……それで。」
言葉に詰まるルーク、その後ろでしたり顔で笑っているユアンを見、クラトスは全てを悟る。
「……それで、私とロイドの血の繋がりを確認した…という訳か。」
「………。」
ルークは無言で頷く。
「良かったではないか、クラトス。正真正銘、あのロイド・アーヴィングという少年はお前の死に別れたと思っていた息子だ。」
「………………。」
ユアンの言葉に、クラトスは何も答えなかった。

 


「アンタは…知って、いたんじゃないのか?」
(煩いので)ユアンを追い出し、クラトスは控え室でルークとコーヒーを飲んでいた。
サングラスを外したクラトスと、ルークは向かい合って座っている。
 *コーヒーは、ユアンを追い出した際にマーテルが運んできました。
ルークの質問に、クラトスは静かに目を閉じたまま、コーヒーを飲んでいる。
「………『ロイド・アーヴィング』の名前は、ロイドが見つけられた時に、ロイドの手首に巻かれていたタオルの中に書かれていたんだって…。」
「………。」
「まだ赤ん坊だったロイドが見つかった時、ロイドは冷たくなった女性に抱きしめられたいたって…前にロイドから聞いた。あ、ロイドも院の人に教えてもらったっていってたんだけど!だから…多分その女性がロイドの…。」
…母親だったのだろう。


――― アンナ… ―――


クラトスはゆっくりと目を開ける。
彼の鋭い目は、何処かやわらかなふうに変化する。
「…女性の身元は分からないままだった。身分の証明になるような物も何も持ってはいなかったらしい…。でも…アーヴィングって、アンタの姓と違うよな…?」
困ったように問いかけて来るルークに、クラトスはゆっくり口を開いた。
「アーヴィングは…アンナの、ロイドの母親の姓だ。」
「っ!」
クラトスの言葉に、ルークは目を見開く。
「恐らく…アンナも私が死んだと思っていたのだろう。だから、私の姓ではなく…旧姓を書き残したのだろうな。」
静かに語ったクラトスに、ルークは思わず立ち上がった。
「それならっ!アンタはロイドの姓を知った時点で、ロイドが息子だって分かってたはずだよな!?ならなんでっ!!」
いきり立つルークではなく、窓の外に視線を向けながら…クラトスは静かに語り出した。

 

 

 

 

 

 


「お、ルーク。遅かったじゃん!」
「あ、あぁ。」
バイト先に行くと、既に制服に着替えたロイドが笑顔で迎えてくれた。
それに何とか返事をするも、ルークはクラトスの話が頭にこびりついていて、整理する事が出来ていなかった。
「…どうかしたのか?」
「えっ?」
「何か…前に見舞いに来てくれた時から、変だ。」
「っ!」
ロイドは変に敏いところがある。
ルークは、どう誤魔化せばいいのか、もしくは伝えた方がいいのか…頭の中が混乱してきた。
片手を頭に当てて唸うルークに、ロイドはゆっくりと近付き、その手をとった。
「無理に話してくれなくていいよ。でも、困ってるなら力になりたい。」
真っ直ぐな言葉、真っ直ぐな視線…真っ直ぐな心………ロイドの全てが、ルークは心底愛おしかった。
「っわぁ!?」
思わず、ギューっと抱きしめる。
背はわずかに高いけれど、体つきはルークに比べればずっと華奢なロイドの身体は、すっぽりとルークの腕の中におさまってしまう。
「ルーク…?」
驚きつつも、ロイドは抵抗はしなかった。
ルークは、その事に喜びつつ…心の中で謝りながら、口を開いた。
「今は…話せない。でも、ありがとうな…。」
「あぁ。」
明るいロイドの声を耳元で聞きながら、ルークはギュッと目を閉じた。


――― お前が辛い時は、俺が助けるから。
 傍に居るからっ!! ―――


ルークは心の中でそう叫んでいた。




**********************
クラトスがルークに語ったのは、いきり立ったルークを落ち着けるには十二分な話だったかと。
詳細はまた次に(^^;)
前回の風邪をこじらせ、それでも無理をするロイドを、ルークが半ば強引に医者に診せたといった感じです。
**********************

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有心論

『神子』

それは、この世に生まれおちた瞬間から…いや、俺という命が母体の中に出来た瞬間から、俺にくっついていた称号。
望んでもいない地位は、俺の心を歪ませるには充分な存在感だった。

『神子様っ!』
『ゼロス様ー!』


ゼロス
俺の名前だ。
俺だけを示す言葉。
唯一の俺だけのもの…

誰も俺を…『ゼロス』を求めてなんかいねぇんだ。
だから、俺も自分をさらけ出すなんて事はしねぇぜ。
『俺』は、俺だけのものだ。




『お前ってさ…』
女性たちに笑顔を振りまいていた俺を、呆れた顔が見上げてくる。

『ゼロスっ!!』
必死の険相で、モンスターに囲まれている俺の元へ駆けよってくるアイツ。

『へへっ』
クールになりたいといいながらも、さらすガキくせぇ笑顔。
…でも、アイツの視線にも、言葉にも、笑顔にも…ウソは一つもないんだ。
良く言えば真直ぐ、悪く言えば単純な奴だ。


一緒にいると、フリじゃなくても構いたおしている自分が居る。
だってさ、心地いいんだ。
アイツの傍は、俺のまわりの『偽』を消し去る。
…あぁ、きっとこれが本当の『好意』ってやつなんだな。






何て言ったのか…思い出せない。
今、自分の口から発した言葉も理解出来ない状態だった。
でも、告白めいた事を言った事だけは自覚していた。
目の前に居るアイツ…ロイドは動かない。

でも…ロイドは少しも俺から目をそらさない。
真直ぐに見上げてくる丸い瞳は、何処までも澄み切っている…。
「ロイ…っ。」
取り繕う言葉を考えながら、口を開くと…目の前のロイドに変化がおこった。

白い頬に、次々と透明な雫が滑り、地へ落ちてゆく。
「…………………。」
ロイドは何も言わない。
表情も変わらない。

ロイドの口が動く。
けれど音を生さないそれは、空気を揺らす事すら出来ないような小さなもので…。

ただ…………ロイドの顔が、今まで見たどんなものよりも綺麗な泣き顔に見えた。

だからだろうな。
何だか、あったかくなってきて、気がついてたら口の端があがっていた。
ゆっくりと右手をロイドの左頬に伸ばして…湿った頬に触れる。

そしたら、ロイドが笑った。
照れくさそうに………。
…さっきより、あったかくなってきた。

無意識のうちに、俺は目の前のほそっこい身体を抱きしめた。
絶対に放さない。
逃さない。
欲しいんだ……………本当に、本心から望んでいるんだ。
「ロイドっ…。」

「…ゼロス。」
後頭部を撫でられる感触。
優しい…優しい手つきだ。
その手つきと同じように、優しい声が何度も俺の名前を呼ぶんだ。
俺だけの名前を………………。




強くきつく抱きしめたロイドの頬に、新たな水気がおちる。
ロイドは何も言わないで、ただ俺の頭を撫でて、軽く背中をたたき続けた。
あやされる感覚に、テレよりも先に出たのは本心だった…。


俺は泣きやんでも、ロイドを放さなかったし、ロイドも抱きしめ返してくれたから……いいんじゃねぇの?
結果オーライってな。


**********************
…あれ?
す、すみません!
何だかとんでもない駄作に…(^^;)
タイトルの曲の影響で、突発的に書いてしまいました。
『君があまりにも綺麗に泣くから僕は思わず横で笑ったよ。すると君もつられて笑うから僕は嬉しくて泣く』という歌詞が、とても好きで…この小説は、この部分の歌詞をゼロロイでイメージして表現したかったんです。
…良い歌詞からイメージしたのに、上手く書けなくてすみません(汗)
**********************

拍手

哀しげな紅い瞳

*『実の父親』の続きです。



「はぁ…。」
「どうしたんだい、ロイド?」
隣で大きなため息をついたロイドに、クレスは視線を向けながら声をかけた。
「いや…なんつーか………。」
珍しく曖昧に苦笑するロイドに、クレスは周囲を確認し、立ち上がる。
「…そろそろ閉めようか。もう人も来そうにないし。」
「分かった。」
クレスの言葉に頷き、ロイドは看板を取りに出入口に向かった。


がちゃっ


「あ、いらっしゃい。」
ロイドがドアまであと一歩のところで、ドアは開かれた。
時間としてはまだ営業時間なので、ロイドは入ってきた人物に向かって頭を軽く下げる。
「っ!」
「クレスー、お客さ……あれ、あんた………。」
ロイドを見た瞬間、入ってきた人物は目を見開いた。
もっとも、サングラスをしているので、ロイドには分からなかったが…。
が、その人物の赤髪を、ロイドは見た覚えがあった。

 

「…では、珈琲をいただこう。」
「はい。」
ロイドはサングラスの男をカウンター席に案内し、男は席に着くと少し俯いて前に立つクレスに注文する。
返事をし、早速珈琲を入れる準備をするクレスに目を向けた後、ロイドは男に頭を下げ、それから他の席の片づけを始めた。


テキパキと空いているテーブルを拭いたり、床を掃除するロイドに、男はさりげなく視線を向けていた。
「お待たせいたしました。」
と、そこでクレスがカウンター越しから、湯気の立つカップを差し出す。
男は何も言わずに受け取り、静かに珈琲を一口口に含んだ。
「…ほぉ、なかなか良い味だ。」
「うちのマスターは珈琲と紅茶にはこだわりが深くて。」
男がクレスが出した珈琲をゆっくりと飲む。
閉店時間は迫っているが、珈琲だけなら、時間までには飲み終わるだろう。
クレスは少し奥に入り、食器洗いを始めた。


食器洗いを終え、もうすぐ閉店だという時、ふとクレスは顔をあげる。
男はカップを手に持ったまま、一心にロイドを見ていた。
「…?彼がどうかしましたか?」
思わずクレスが声をかけると、男はパッとロイドから視線を反らした。
「いや…。」
「そういえば、さっきロイドも貴方を見た事があるって感じでしたね。」
「……………。」
クレスは、先程ロイドから慌てて眼を反らした男の動揺を、しっかりと感じ取っていた。

「クレス、看板取ってきたぜ。」
と、そこにロイドが戻ってくる。
「ありがとう、ロイド。」
クレスの横に立つロイドを少し見上げ、男は立ち上がった。
「…閉店間際に邪魔をしたな。」
そう言って、財布から珈琲の代金を出し、カウンターに置く。
男がクレス達に背を向け切る前に、ロイドはハッと目を見開く。
「あー、思い出した!あんた『ツーハーツ』とかいうのの一人だろう!」


…その言葉に脱力したのは赤髪の男、クラトスだけではなかった。
「ロイド…思い出せてなかったのかい?」
クレスの質問に、ロイドは元気良く頷く。
「あぁ、どっかで見た事あるとは思ってたんだけどさ。」
「…………。」
クラトスはロイドに目を向けると、ゆっくりとサングラスを外した。
赤い紅い髪と同じ、紅い瞳。
普通なら鋭く感じるであろう、その逆三角形の瞳を…ロイドは落ち着かない気持ちで見つめた。
歌っていた時のように、とても哀しげに見えたのだ…。

「…今夜の事は、内密に頼みたい。」
その言葉に首を傾げるロイドの横で、クレスは解っているというように深く頷いた。

 

「きっとね、芸能人だから、落ち着いて外出できないんだよ。」
先程出て行った客人の言葉の説明をロイドにするクレス。
「そっか…。」
ロイドは小さく相槌を打つと、少し俯いた。
そんな様子を見て、クレスは少し屈む。
「ロイド。今日はずっと元気がないけど、本当にどうしたんだい?」
さっき訊こうとしていた事を、クレスは訊ねる。
ロイドは、しばらく黙った後、ゆっくりと話し出す。


「ルーク…なんか変なんだ。一人で抱え込んでるって感じで………。」
ロイドの話を聞きながら、クレスは、もう一人のアルバイト員であるルークを思い浮かべる。
「…確かに、最近元気がないように見えるね。」
最近のルークはボーっとしている事が多い。
かと思えば、突然頭を抱えて唸りだし、マスター代理のクレスが訊ねれば、必死ではぐらかそうとする。
クレスもどうしたものかと思っていたのだ。
それにつけて、今日はロイドまで、何処か元気がない感じで、クレスの心配は深まる。

そして…先程出て行った赤髪の男の、ロイドへの視線の意味が、クレスは気になっていた。

 

 

 

―――まさか、ロイドに会ってしまうなんて…―――


『FANDOM』という喫茶店から出たクラトスは、サングラスを深くかけ直しながら、店を振り返った。
以前、ロイドが風邪をこじらせて肺炎にかかったと聞いた時は、また家族を失う恐怖に苛まれたものだ。

今…ロイドが心から笑っていられるのなら、自分は関わらないと、クラトスは決めていた。

 

 

 

『ロイドっ!!』
『ふぎゃぁっ、ふぎゃぁぁぁぁー!!―――――っ!』
『っ!?っロイ…』
『………………。』
『ロイドーーーーー!!!!!』
生まれて間もない身でありながらも、傷つけられて赤に染まる我が子。

 


昔の事を思い出しながら、クラトスはゆっくりと顔を夜空へと向けた。
星が見えない暗い空…。
クラトスは目を閉じ、亡き妻と……過去の息子を思った。



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ルークが出せませんでした…。

クレスたちのアルバイト先は喫茶店にしました。
ネットカフェと迷ったのですが、ロイドたちには機械関係より、普通のお店がいいかな?と(^^;)


マイソロジー2をプレイした今日この頃…(爆)
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