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『テイルズオブシンフォニア』のロイド受けで小説を書いていきたいと思います。 今、はまっているのは、ルクロイとゼロロイです。 コメントなど頂けると、励みになります!!
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飛翔
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こんにちは。
かなり遅れて『シンフォニア』を知り、ロイド君が大好きになった飛翔と申します。
同士の方は、是非よろしくお願いします!
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導きの手

*設定は親子(現代+パロ)のものです。
内容はルクロイの出逢いです。



「ルークっ!あぁ、良かった…」
泣きながら抱き締めてくる母上の口は、確かに俺の名を呼ぶのに、その目は[オレ]を見てはいなかった…。


兄が重い病で倒れた時、元々体の弱い母上は、ショックで食事が喉を通らなくなった。

意識の戻らぬ兄、アッシュ。
痩せこけていく母上。
…父上は、金にものをいわせ、母上を救い出すすべを見つけ…実行した。


自分たちの息子は、初めから1人だった事にしたのだ。
アッシュの名は、母上の記憶から消され…『重い病にかかった愛しい息子』は、[ルーク]になった。

俺は、アッシュを忘れた母上が望む通りに、ファブレの名に相応しい品格を得る教育を受け、半ば軟禁状態で16歳まで育った。


そして、半年前…アッシュの意識が戻ったと海外の大病院から連絡が入った。
父上は大喜びし、俺と母上を連れて、アッシュのもとへ急いだ。
アッシュに「母上」と呼ばれた瞬間、母上の記憶は戻った。

母上は自分の弱さを恥ながらも、アッシュを抱き締めていた。
その目は…しっかり『アッシュ』を見つめていて…俺は怖くなった。

アッシュが戻ったならば、俺は用済みなんじゃないかと……。




俺は、ずっと自由になりたかった。
自由に外に出たかった。
不満ばかり口にしては、使用人たちを困らせてきた………。
…今思えば、我儘三昧だった。

アッシュは家には戻ってこなかった。
そのまま海外でリハビリをする事にしたらしい。
その事に、少しの寂しさと…安堵を覚えつつ、感覚のない日々を過ごした。




そして、俺は出会ったんだ………。




『何やってるんだ、お前らっ!?』
真っ直ぐな瞳は、強く降り続ける雨の中でも、少しも揺るがない。
俺の胸倉を掴んでいた奴の顔に向けて、ビニール袋が投げられた。
『がっ!』
胸倉から手が離れたと気付いた時…俺は既に、走り出していた。
暗闇をさ迷っていた心を、光へと導くように、温かい手が俺を引っ張っていたから……。


連れてこられた先にあったのは、喫茶店だった。
木材で出来た古臭い建物……けれど、中の少し暗い灯りは優しくて…温もりみたいなものを感じた。

『わりぃ、クレス。少しだけ匿ってくれ。』
息を乱し、俺の手を握ったまま、カウンターに立つ男に話しかけるソイツ…。
『構わないけど…。あまり危険な事に首を突っ込んじゃだめだよ、ロイド?』
穏やかに笑いながら、男は俺たちをカウンターまで招いた。

座ると、漸く俺の手を放し、ソイツは笑った。
『お前、珈琲好きか?クレスの入れる珈琲は美味いんだぜ!苦いのダメな俺でも飲めるんだ。』
『……………。』
『?どうした?』
あまりにも真っ直ぐに笑いかけてくるから、どう返していいか、解らない俺に、珈琲が出される。
『どうぞ。』
『えっ、……あ、……えっと。』
思わずポケットを探ると、カウンターの男が苦笑しながら言う。
『お金はいいよ。まだ準備中だから誰もいないし、1人分入れるのも2人分入れるのも、そう変わらないから。』
『早く飲んでみろよ。絶対美味いって思うからさ!』
隣のソイツにも進められて、カップに口を付けて傾ける。
『っ…。』
熱いコーヒーが、ついさっき殴られて切れた口内を刺激する。
思わず顔をしかめると、ソイツの手がスッと俺の頬に触れた。
『…結構殴られた、みたいだな。』
どこか痛そうな顔をするソイツが、不思議で仕方がなかった。
殴られた痛みを超越する手の温もりに…気がつけば俺は縋りついていた……。



『俺はロイドだ。よろしくな、ルーク!』
満面の笑みと共に差し出された手を、強く握り返す。
『よろしくな、ロイド。』

俺は、ロイドが『FANDOM』という、その喫茶店でアルバイトをしているのだと聞き、自分も働きたいと、クレスという男に頼み込んだ。
クレスは快く承知してくれ、ロイドも変わらぬ真っ直ぐな笑顔を向けてくれた。


思わず縋りついてしまったロイドの手…………。
俺の手とあまり変わらない…いや、比べたら俺より少し小さい位なのに、ロイドの手はあたたかい。
彼の心と同じように…。
縋りついた俺を、少しも不審な目で見る事なく……ただ驚いて、そして俺の手にもう片方の手を重ねてくれたロイド………………。
ロイドは、何も話さない俺に、無理に話さなくてもいいと言って、笑った。


街を彷徨い歩いていたら、からまれた。
3人に囲まれたが、恐怖心はなかった。
小さい頃から、護身術は習っていたから。
だが…いざ手を振りかざすのを躊躇ってしまった。
習ってはいても、実際に人を傷つけた事はなかった。
俺は…誰かを傷つけて堪えられる程の強さすら、持ち合わせてはいなかったんだ。

…そうロイドに言ったら、ロイドは怒った顔をして言った。
『そんな強さ、意識する必要ないだろ!』
不要だとは言わなかったロイド。
『逆に、何かを傷つけても何も感じなくなっちまったら…ダメだろう?』
真剣な言葉から溢れてくる優しさ。
ロイドの言葉は、何処か説得力があった。
明確な理由がない言葉…。
もっともらしい理由がついていないからこそ、スッと心に染み入ってきた。


**********************
ルーク視点で、過去ネタ。
現代親子パロなのに、パパは出てきません(汗)

あくまでも番外編ということで…。
**********************

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閉ざされていた過去

*『哀しげな紅い瞳』の続きです。


「どうしました?」
細い目、相手を嘲笑う様に歪められている口。
その手が、こちらに伸ばされている事実に、思考が回らない。
身体が強張り、一歩も動けない。
瞬きも、出来ない………。

 

ロイドは目を見開き、身体を小刻みに震わせていた。


その様子を見ていたルークとクレスは、それぞれ動く。
ルークは、震えながらも視線すら動かせないロイドを横から力任せに引き寄せ、抱きしめる。
クレスは、そんなルークの前へ立ち、目の前の男からロイドを隠す。
病的とも言えるほど肌が白い男は、不気味にも笑みを深めた。
「フッ、今日は良い日になりましたよ。それでは…。」
まるで顔を隠すかのように、男は手にしていた帽子を深くかぶり、クレス達に背を向けた。
クレスは男の後姿が見えなくなるまで、ずっと前を向き、ルークは依然として震え続けるロイドを抱きしめていた。

 

 


「…ロイド…………。」
男が去り、ロイドがルークの腕の中で気を失ってしまい……ルークはクレスと共にロイドの家へと来ていた。
その場が、ロイドの家へと近かった為、クレスが、すぐにダイクへと電話をしたのだ。

二人がロイドの家へ辿り着くと、既に外で待っていたダイクが、ルークが背負っているロイドを覗き込み、家の中へと案内してくれた。


ぐったりとしたロイドをベッドへ寝かせ、取りあえず三人は落ち着く。

 

「色白の男、なぁ…。俺には覚えがねぇなぁ……。ロイドから聞いた事もねぇしな。」
「そうですか…。」
ダイクは、首をひねって必死に思い出そうとしたが、そんな男に覚えはなかった。
返事をするクレスも、店の客の顔を色々と思いだしてみるが、覚えがない。


「それで、ロイドは何も言わなかったのかい?」
「言わなかったというよりは……言えなかったという感じでした。何か…ひどく怯えている様で、一歩も動けないまま、男が見えなくなってから倒れて…。」
「うーん、ロイドがなぁ………。」
ダイクはそんなロイドを一度だって見た事がなく、上手く想像が出来ない。

クレスは少し考えてから、ふと、思い至った事を口にする。
「トラウマ、とは考えられませんか?」
「っ!?」
その言葉に、ルークは目を見開いた。
「おれは、ロイドが3歳くらいの頃にあいつを引き取ったが…孤児院は何も言ってなかったし、ロイド自身そんな様子を見せた事ぁないなぁ…。」
孤児院に連絡してみるか…と、席を立とうとするダイクを、ルークは引きとめた。
大事な話がある、と………。

 

 


椅子に座っているダイクとクレスに背を向けたまま、ルークは眉を寄せ…ゆっくりとロイドの髪に触れた。
そっと頭を撫で続ける。
ルークは、全く反応を返す事無く未だにぐったりとしているロイドの様子に、ずっと決断を躊躇っていた自分を責めた。
自分がもっと早く気付き、何か対処できていれば!…と。


重い口を、ルークは漸く開いた。
それは、クラトスという…ロイドの実の父親から聞いた事…。


「ロイドの母上って人は、たちの悪いストーカーにつけ狙われてたんだ。」
ルークは、己の弱い心を補う様に、心の安定を望むように、ロイドの髪を撫で続けた。


ロイドの母、アンナはストーカーに追われている時、クラトスと出逢った。
あまりにも怯えているアンナを、クラトスは気遣って、落ち着けてくれたらしい。
そして、ストーカー被害を警察に報告するのにも付き合い、二人の距離は次第に狭まっていった…。
やがて二人は結婚し、年月が流れ、ロイドが生まれた。
そして起こった事件。


アンナに付きまとっていたストーカーが再び彼女の前へ姿を現したのだ。
生まれて間もないロイドを盾にし、男はクラトスを刺した。
崩れ落ちるクラトスに悲鳴を上げるアンナ。
男は、クラトスを助け起こすアンナを不満げに眺め………そして、煩く泣き叫ぶロイドにまで刃物を向けた。
『や、めろっ!……………ロイドっ!』
クラトスが叫びながらも、ロイドへと手を伸ばした時、男はロイドの頭を刃物の柄でなぐりつけた。
更に泣くロイドに、男の殴りつける手は加速する。
『ふぎゃぁっ、ふぎゃぁぁぁぁー!!―――――っ!』
『っ!?っロイ…』
『………………。』
…そして、ロイドの頭がガクッと傾き、血が床へと落ちる。
『ロイドーーーーー!!!!!』
『やめてぇーーーー!!!!!』
クラトスは、気力だけで立ち上がり、驚きに男が怯んだ隙に、ロイドを取り返し、アンナに託す。
『逃げるんだっ!!!!!』
血に染まった腹部を押さえながら叫ぶクラトスを、泣きそうな顔で見つめたアンナ。
『私から逃げられると、本気で思っているのですか…?愚かですねぇ……。』
『アンナっ!!』
男の視線を受け、身をすくませたアンナは、夫に名を呼ばれた事で、ハッとし、最後に夫と視線を絡ませた後、駆け出した。

 

「ロイドの父上は、その後また数回刺されて…意識を失ったんだって…。それで、目を覚ました所は病院で…。」
「ロイドたちを探そうとはしなかったのかい?」
クレスが、話し続けるルークにふと問いかける。
ルークは首を横に振り、続ける。
「翌日、送り主不明の見舞いの品が届けられて…その中にあったメッセージカードには『今すぐあの世で会えなくて残念でしたね。でも、死ぬ楽しみは出来たでしょう?』って、書いてあったんだってさ…。それから、どんなに捜索してもらっても、ロイドたちの行方は分からなかったらしい。」
「捜索しても分からなかった?」
クレスは怪訝そうな顔をする。
「ロイドたちが発見された孤児院は、ロイドたちの住んでた土地からすげぇ遠いんだって…。だから捜索範囲を少し広めたくらいでは見つからなかった。そして…捜索は打ち切られた……。」
「…………。」
ダイクは、ゆっくりとロイドのベッドの横に立ち、ロイドの顔を眺めた。


「確証はないけど…仮にあの男が、そのストーカーだったとしたら…潜在意識の中であの男の存在を、ロイドは覚えていたのかもしれない。」
ルークの言葉に、クレスは頷く。
「…最近、ルークが元気がなかったのは、その事を知ってしまったからなんだね?」
ルークは、ロイドの髪から手を放し、俯いた。
「ロイドがね、とても心配していたよ。ルークが一人で何かをため込んでる感じがするって。」
クレスの言葉に、ルークはギュッと目を閉じた。
「ロイドを守りたかったんだ!でも、でもっ、どうしたらいいか解らなかった。俺、俺…ロイドの為に何も出来てないんだ………。」
項垂れるルークの肩をしっかりと叩いたのは、ダイクだった。
「そんな事はねぇ。お前さんは、その話を今、俺たちに聞かせてくれたじゃねぇか。こんなに息子の事を心配して貰って、俺は嬉しいぜ。」
穏やかに笑って言うダイクに、ルークは泣きそうになるのを堪えた。

 


「新メニューの追加と、机の配置替えは僕とマスターでやっておくよ。」
優しく笑いながら言うクレスに、ルークは戸惑う。
「えっ、でも…。」
「装飾品の買い出しは、またにしよう。それじゃぁ。」
そもそも、今日三人が出掛けたのは、ロイドたちのアルバイト先である『FANDOM』の新たな装飾品を選ぶ為だった。
急がなくても大丈夫だからってロイドに伝えておいてね、と告げ、ロイドの部屋から出て行ったクレスの後姿を見送り、ルークの視線は再び眠るロイドへと向けられる。


先程の男が、例のストーカーでない事を祈りたい。
けれど、ロイドの母親を追い回していたストーカーらしき男は未だに掴まってはいないという事。
「ロイドっ……。」
ルークは毛布から出ているロイドの手をギュッと握りしめた。

 

 

 

**********************
痛い話で、本当にすみません…(__;)
いい加減、過去を隠し続けているのもどうかと迷い、書いてみました。

最近、OVA版シンフォニアをよく見ています。
そこから生まれた(創り出した)ストーカーキャラ。

捜索や、身元不明などについて、色々と現代設定ではない感じになっていますが…どうか流してやってください。
**********************

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解き放たれた力

*『閉ざされていた過去』の続きです。



―――怖い…怖いの………。
あの人が血にまみれていって……なのに私は……
何も、何も……―――

 

その声は、俺の恐怖を増幅させるもの。


見た事も無い、室内に居る。
その風景と俺との間を繋いでいる人物の心は恐怖で乱れている。
死ぬかもしれない、という恐怖ではなく、それは…『あの人』を失うかもしれないという恐怖。

 

 

気味が悪い位、色白の細い男が笑みを浮かべている。


…お、れは……知ってる……


―――思い出さなくていいのよ、ロイド―――


でもっ、知ってなくちゃいけない事のような気がするんだ…


―――…ロイド。
  あなたには…同じ気持ちを味あわせたくないの………あんな、あんな思いはっ―――

 


終始、悲しげな声は近くで囁き続けてくる。
俺の歩みを止めようとしているが、俺は止まる事が出来ない。
このままじゃいけない…自分の心が、そういっているから…。

 


―――あの人を失ったら、どうすればいいの…怖い………―――


目の前に広がる紅。
大切な大切な『あの人』が血を流している。
恐怖に、悲しみに…支配、される…。

 

…違う。
これは俺の心じゃない。
この光景を、この視線で見ているのは、俺じゃない……!!

 

 

―――ロイド…―――

 

 


………あぁ、そうか。
かあさん、だったんだな………ずっと、俺の中に居たんだな……。

 

 

 

 

 

何の前触れもなく、ロイドはパチリと目を開いた。
目の前にあるのは、今まで観ていたものとは違う紅。
橙に近い、明るい紅…ルークの髪。

「ルー、ク?」
「…………。」

ルークはロイドの頭の横に両手を置き、その上に頭を乗せて寝ていた。
ロイドは、そっとルークの髪に手を伸ばし、チョンッと触る。
ルークの髪に触れた自分の手をしばし見つめ、眉を寄せる。


―――声が、聞こえたからだ。


そして、今度は前髪を一房だけ、やわらかく握る。
ロイドはゆっくりと瞳を閉じ、『その人物』と話を始めた。

「お前は、ちゃんと生きてるんだな。…そうか、ルークを待ってるんだな。」

ロイドは横になったまま、話を続ける。

「素直じゃない奴だな。」

 


暫くして、ルークは目を覚ました。
ロイドが起きた事に驚き、安堵して、強くロイドを抱きしめた。

「ごめんな、ロイド。ごめん…っ!」

何度も何度も謝り、その度に抱きしめてくる力を強めるルークの背に、ロイドは腕を回した。
ポンポンと、ルークの背を軽く叩く。

「ルーク。ルークが俺に謝る必要なんてない。」

罪悪感に苛まれ、悪夢に脅える幼子のようなルークを安心させるように、ロイドは穏やかに微笑んだ。
自分よりも筋肉の付いた、逞しい背をポンポンと軽く叩く。

 

「俺こそ、心配かけてごめんな。もう大丈夫だから…。」


言葉では伝えきれない部分を補う様に…ロイドはルークが落ち着くまで、ずっとそうしていた。

 

 

 

「なぁ、ルーク。…ルークは特別な力って、あると思うか?」

ルークが落ち着いて、暫くしてから、ロイドがポツリと言う。
ロイドの真っ直ぐな視線を受け、ルークは小さいながらも返事をした。

「俺は…ある、と思う。」

ルークは、ロイドを見つめ返しながら続ける。
まるでロイドに暗示をかけられているかのように、思っている事がすらすらと口から出てしまう。

「ロイドと逢った時、感じた…。ずっと殴られ続けて、感覚なくなってきてたけど、雨の一粒一粒が冷たかった。でも、ロイドの手はあったかかった。握ってるだけなのに、何か守られてるみたいに安心できた。」

ルークの言葉に、ロイドはパチパチと数回、目を見開く。
思わぬ言葉だったからだ。
そして同時に、あの時のルークを思い出し、ロイドは眉を寄せる。
ルークは、手を伸ばし、ギューっとロイドを抱きしめた。
ロイドは、ルークの逞しい背に手を回す。

 

ルークは、ロイドに話さなければいけない事が沢山あった。
けれど、何故かこうして抱きしめ合っていれば、言葉なんて使う必要がないような気がしていた。
そうしてロイドをギューっと抱きしめていると、ルークはふと気が付く。


目の前に、腕の中にとらえているロイドが、自分の中に居るような感覚。
不思議な感覚に戸惑うも、嫌悪感は微塵もない。
まるで取り込むみたいに、もっと強く抱きしめた。


『ルーク。』


その時、ルークは確かに耳ではなく、身体の中から…心でロイドの声をきいた。




**********************
お父さんが出せなかった…。

クラトスパパは次こそ出る予定です!(汗)
アンナママのストーカーはただのストーカーではなく、ママの『力』に関心があった訳です。

ロイドがルークに触れ、話をしていた相手は彼です(笑)
話していた内容については、また書いてみたいと思っています。
**********************

拍手

溶け始めた刻の針

*『解き放たれた力』の続きです。



「…クラトスの子供って、ロイドの事だったんだね。」

突然のミトスの言葉に、クラトスは驚いたが、そう言ったミトスの方も、驚いているのが窺えた。


マーテルの弟であるミトスは、時折クラトス達『ツーハーツ』の作詞作曲を担当していた。
まだ幼い、少年であるにも関わらず、ミトスには優れた音楽の才能があった。
だが、少し特殊な力を持っている事が原因で、彼は学校には通っていない。

だから友達もいなかった彼だが、最近友達が出来、家に連れてきたとマーテルが言っていた。
嬉しそうに話すマーテルに、クラトスもユアンも思わず笑みを浮かべたものだったが…。


そんな、引きこもりがちであったミトスが、マーテルに連れられて控室に入って来た途端、クラトスを…正確にはクラトスのそばに”いる”ものを見つめ、呟いた。


「ロイドを…知っているのか、ミトス?」
「あ、うん。友達…に、なったんだ。」

クラトスの問いに、珍しく照れたように答えるミトス。

「まぁ。もしかして、この間、遊びに来た子が?」
「ううん。違うよ、姉さま。あれはジーニアス。ロイドとジーニアスは幼馴染なんだ。って、今はそんな事じゃなくて…。」

スイッとミトスが右手を上げ、クラトスの後方を指差した。
その動作に、クラトスは怪訝な顔をする。

 


「女性が、今、クラトスの守護にまわった。彼女は言ってる、ロイドを守るには自分は役不足だったと。」


突然のミトスの言葉に、クラトスは目を見開く。

「…それは、どうゆう事だ、ミトス?」
「その人が教えてくれた。僕の知ってるロイドはクラトスと自分の息子だって。」
「っ!?アンナが…アンナがいるのか!?」

思わず声を荒立て、後ろを振り返るクラトス。
だが、彼の目には後ろに立っているユアンしか見えない。

「その人の心は……もうすぐ”ここ”から消える。」
「っ!」

クラトスは、ミトスの特殊な力について、以前から知っていた。
相談にのった事もあった。
だから、ミトスの言葉に戸惑う。

「アンナは消えてしまうというのか!?」
「…………そう、心は消え去る。でも、想いは…その人の想いは、きっとこれからずっとクラトスを守護する。」
「…………っ。」

 

逝ったよ………と、静かに呟くミトスの言葉に、クラトスは強く目を閉じ、妻の冥福を祈った。

 

 

 


「ねぇ、クラトス。僕、ロイドに会いに行こうと思うんだけど、クラトスも一緒に…。」
「…………。」

言葉を続けようとするミトスに、クラトスは力なく首を横に振る。

「私は…ロイドに何もしてやれなかった。」
「「…………。」」

沈んだクラトスの言葉に、ユアンとマーテルは黙り込む。
が、ミトスは違った。

 

「…ロイドってね、凄く成績が悪いんだって。」
「は?」

突然のミトスの言葉に、沈黙を守っていたユアンが思わずといった感じに声を出す。
クラトスはミトスに視線を向ける。

「勉強が大っ嫌いで、授業中に居眠りはするし、飽きっぽい。」
「…………。」

ミトスの真意が解らないクラトスは、耳を傾けるしかない。
そんなクラトスに、ミトスは悪戯っぽく微笑みながら続ける。

「なのに、興味がある事には熱心に取り組むし、諦めない。…ロイドはとっても真っ直ぐなんだ。自分を卑下する事も、誰かを恨む事も、しない。」
「…………。」

ロイドは、『父親』を恨んだり自分の境遇を嘆く人間ではないと、ミトスは暗に伝えている。

…だが、クラトスはまだ踏ん切りがつけられずにいる。

 

ミトスはわざとらしく大きくため息をつき、真剣な目でクラトスを見据えた。

「さっき、言ったよね。『ロイドを守るには自分は役不足だった』と、彼女は言っていたって。」
「っ!」

ハッとクラトスが目を見開く。

「ロイドは今、危険に立たされているって事だよ。」

ミトスの言葉が、静かなその場に大きく響いた。



**********************
ミトスがロイドと友達になってる設定でこれを書いていたのですが、ミトスとロイドが知り合った経緯を書こうとして、挫折していました……………。
どうしても中途半端にはしたくなくて、悩んでいたのですが、上手くまとめられなかったので、結局削ってしまいました。

パパンサイドを書けて、ちょっとだけ満足です(汗)
これからは、またサクサクと更新していきたいと思っていますので、よろしくお願い致します。
**********************

拍手

力を持つ者、対峙する

*『解き放たれた力』の続きです。



その男は、突然現れた。
病的な白い肌、相手をくった笑み。
以前と、全く同じだった。

違った事と言えば、ロイドが怯える事無く、真っ直ぐにその男を睨めつけている事だろう。
以前の事が嘘のように、ロイドは、鋭い視線を男に向けている。
男は、そんなロイドを愉快そうに見つめている。


「ロイド・アーヴィング。アンナの姓を名乗っていてくれたので、探すのが簡単でしたよ。」

くくくっ…と笑いながら一歩一歩近づいてくる男。

「…俺に何の用だよ?」
「君はアンナ・アーヴィングの子供だ。あの女の血が流れているのなら、充分に実験材料になるんですよ。」
「実験、材料……?」
「アーヴィングの血をひく者は、面白い力を持っています。私はその力の研究を完成させたいのですよ。」
「何を………。」
「アーヴィングの血をひく者は、もう君しないない。…私の研究の完成には、君が必要なのですよ…。」


男の言葉で、ロイドは悟った。
母をつけ狙っていたのは、ただのストーカーではなかった事を。

人を使って実験だの研究だのと、笑みを浮かべながら語る男は異常者としか見えなかった。


「ふざけるなよ……お前が…お前が、母さんをっ!父さんをっ!!!!!!」

怒りをあらわに叫んだロイドに、男はフンっと鼻であしらう。

「私は君の両親を殺してなどいませんよ。アンナは力を使い過ぎて自ら死に、君の父親は自害したか…もしくはその辺で生きているでしょう。」

いずれにせよ、自分は直接手を下してなどいない、と男は笑う。

 

ロイドは、両の拳をギリギリと握りしめ、怒りに身体を震わせていた。

「あぁ、あの女のせいで未完成のままでしたが…。ようやく進められそうですねぇ。」

『あの女』が指し示すのが、自分の母親である事は明白で…ロイドはとうとう怒りを抑えられなくなり、右の拳を振り上げた。


が、その瞬間、ロイドの頭の中に、ある声が響いてきた。

 


――― だめだよ、ロイド。ソイツにそれ以上近付いちゃいけない! ―――

 


「っ!?」

ロイドは踏みとどまり、左手で頭を押さえる。
目を見開いているはずなのに、今ロイドの目の前に見えるのは、薄気味悪い男ではなく、見知った少年だった。

 

「ミ、トス………。」

ロイドは身体が重くなっていくのを感じる。
瞼が落ちて来る…。

ガクッと足から力が抜け、膝をつく。
そのまま地面に倒れ込みそうになった所を、誰かの逞しい腕が抱き止めてくれたのを感じながら、ロイドは瞳を完全に閉じた。

 

 

 


「貴様はっ!!」

目の前で倒れたロイドを支えている人物を見、男…クヴァルは、声を荒げた。

「もうお前の好きにはさせぬ。」

ロイドを支えながら、クラトスは鋭い目を更に細め、クヴァルを睨みつけた。
クラトスがロイドを抱き上げると、クラトスの背後に居たミトスが駆け寄ってこようとする。

「来るな。嫌な匂いが充満している。」
「っ……。ロイドはその匂いで…。」

クラトスは片手で口元を押さえつつ、小さく頷く事で答える。
そして、一歩一歩慎重にその場から離れていく。


クヴァルは不愉快さを隠しもせず、顔を歪めていたが、ふと嫌な笑みを再び浮かべた。

「よく生きていたものですねぇ。それ程、アンナを愛していなかったとみえる。」
「貴様っ!!」

クラトスが怒りをあらわにした瞬間、騒がしい足音が複数聞こえてきた。


「そこまでだっ!!!!」
「ロイドっ!!!」

同時に響いた二つの声は、良く似ていたが、似ているのは声だけではなかった。
髪型こそ違うが、そこに立っていた二人は、瓜二つだった。
前髪を立てている方の少年は、不機嫌な顔を隠そうともせず、ミトスの隣に立つ。
そしてもう一人…ルークは、ロイドへ駆け寄ろうとする。

「止まれ、馬鹿がっ!」

ルークと瓜二つの少年が怒鳴ると、ルークはビクッと足を止める。

「そいつが意識をなくしてるのが見えねぇのかっ!」
「えっ…。」

少年の言葉に、ルークは少しだけ冷静さを取り戻す。


「…アッシュ、見えてるよね?解る?」
「……あぁ、『俺たちの力』を抑え込んで操る薬だな。」

アッシュと呼ばれたルークと瓜二つの少年は、訊ねてきたミトスに答えながら、目の前の男を睨みつけていた。
アッシュの言葉に、少し考えて…ミトスは薄らと笑みを浮かべた。

「…じゃぁ、僕の出番だね。」

ミトスはそう呟くと、ゆっくりと両手を天へあげる。
瞬間、ミトスの足もとから空気が舞い上がり、ミトスの金の髪を揺らす。


「っ!…これは。」

クラトスは、先程まで辺りに感じた嫌な匂いが無くなった事に驚く。
それどころか、空気自体が澄み切ったようにも感じられた。

「アッシュ!」

ミトスは両手を下げ、アッシュの名を呼ぶ。

「ちっ、解ってる!」

舌打ちし、ミトスに返事をしてから、アッシュは目を閉じて右手を前に出す。
すると、アッシュの右手の中に光が集まり、それは剣のような形におさまる。

「このザコがぁーーー!!!!」

カッと、アッシュが目を見開いた瞬間、クヴァルの身体が地から拒絶されたかのように跳ね上がる。
アッシュの右手に集まっていた光は散り散りにクヴァルの身体を打ち抜く。

「ぐぁぁぁーーーー!こ、こんな…」

醜い呻き声を上げながら、クヴァルは地へと崩れ落ちた。

 

 

 

「ロイド!ロイドっ!!」

震える手をロイドの頬に添えながら、クラトスはロイドを呼び続けた。
が、ロイドはピクリとも反応を返さない。

「ロイドっ………。」

顔を伏せ、クラトスはロイドの細い身体を抱きしめた。
そんなクラトスを、ミトスは心配そうに見つめる。
ルークは、とにかくそんな親子を不安そうに見つめるしかない。
アッシュは、苛々と周囲を見渡す。

と、その時、騒がしい足音が響いてきた。

「遅くなりましたっ!」

荒い息を繰り返しながら駆けて来たのは、小柄な少女だった。
胸に手を当てながら、少女は呼吸を整えるように目を閉じ、またすぐに力強く瞳を開いた。

「この方なんです、アッシュ?」
「あぁ。…頼む。」
「はい!」

少し変わった、けれど丁寧な口調で喋る少女は、アッシュとの会話を終え、ロイドたちへと歩み寄る。

「お前…エステル?」

隣にしゃがみこんだ少女を見て、ルークは驚く。
幼い頃に、何度か会った事のある少女だったからだ。
そんなルークに少女は微笑み、目を閉じる。
少女…エステルが祈るように両手を胸の前で合わせると、彼女の周りに温かい光が現れ始める。
それらの光はまるで雪のように、ゆっくりと優しくロイドに降り注ぐ。


暫し降り続いていた光は止み、ロイドの身体から光が消えていく。

「これで、もう大丈…っ!?」
「「「「っ!?」」」」

エステルが目を開き、笑みを浮かべた瞬間。
ロイドの身体がクラトスの腕から浮かびあがる。
そして、空中に浮かんだロイドの背から、大きな光り輝く蒼い翼が広がるのを、クラトス達は見上げていた。



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これは果たして親子中心となるか、段々解らなくなってきましたが、出したいキャラが増えてきていまして、つい…。
力を持つ者としてミトスを考え始めていた頃から、アッシュとミトスを知り合いにする設定は浮かんでいました。
エステルは、能力者+アッシュに悪態付かない(心が広い?)人物として当てはまったので…。
ユーリも出したいですね~(笑)

今回、何処まで行っても区切りが悪く感じて、長くなり過ぎてしまいました(汗)
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